投稿者「iroai.jp」のアーカイブ

老松(おいまつ)模様(文様),「糸入れ」された伊勢型紙

デザインにおける老松文(おいまつもん)

老松文おいまつもんは、松模様(文様)の一つです。

能舞台の鏡板かがみいたに描かれている老松の図は、典型的な老松文おいまつもんです。

老松(おいまつ)横浜能楽堂 舞台正面

老松(おいまつ)横浜能楽堂 舞台正面,yoshi_ban, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons,Link

教訓抄きょうくんしょう」という鎌倉時代に記された日本国最古の舞楽書によると、松はとくに芸能の神様の依代よりしろ(神霊が依りく対象物のこと)であり、能舞台の鏡板かがみいたに描かれている松の絵のルーツは、奈良の春日大社の「影向の松(よごうのまつ)」に由来しているとされます。 続きを読む

日本や世界における刺繍(ししゅう)の歴史や特徴。奈良、平安、鎌倉、室町、江戸、それぞれの時代における刺繍について

針と糸があれば、布を自由に装飾できる刺繍ししゅうは、世界中で古くから行われてきました。

中国では、殷代いんだい(紀元前17世紀〜紀元前1046年)の青銅器に付着していた絹に菱形ひしがたの模様(文様もんよう)が刺繍ししゅうされた例が見つかっています。

日本においては、中国から発達した刺繍ししゅうの影響を受けながらも、織りや染めの技法と混ざりあいながら、日本的な美しさが数多く表現されてきました。
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染色・草木染めをやる上で注意点や大切な心構え『染色の口伝』

本書は、古代の人々の心の遺産とも言うべき日本民族本来の、色彩と染を研究し、現在の多くの人々に、古代から伝承されて来た色彩の実態についての理解を得ようとするために執筆したものである。

前田雨城氏の著書、『日本古代の色彩と染』のまえがきには、上記の言葉があります。

この本は、なかなか安く出回っていないのですが、前田氏の集めてきた知識と実際の経験からの得た色について学べ、日本の古代における染色やその歴史について興味のある方にとっては読む価値が十二分にある本と言えます。 続きを読む

染色・草木染めにおけるウコン(鬱金)

ウコン(鬱金うこん)は古くから鬱金染うこんぞめとして、黄色の染料に使用されました。

ウコン(鬱金うこん)はみょうがに似た地下茎ちかけいで、クルクマとも言います。

日本においては、もともと中国からウコンが移植され、栽培が行われてきました。

漢方薬として、止血剤、尿血、胆道炎等に使われていましたが、食品の黄色づけにも古くから使用されています。 続きを読む

長板中形(ながいたちゅうがた)とは?長板中形の特徴や技法、歴史について

長板中形ながいたちゅうがたは、小紋こもんや形友禅などと同じく、日本に古くからある型染めの一種です。

長さが3間半(約6m36cm)、幅が約46cm、厚さが約2cmの一枚板である「長板ながいた」に生地を広げ、中形ちゅうがたと呼ばれる、大紋だいもん小紋こもんの中間ぐらい柄の大きさに彫られた型紙を使用して型付けを行うため、長板中形ながいたちゅうがたという名前がありました。

階級制度の厳しい封建社会ほうけんしゃかいのため、庶民は武士の目を意識して、大紋だいもん小紋こもんの中間の型を使用して、木綿の着物を染めたのが始まりと考えられます。

長板中形ながいたちゅうがたの技術は、江戸時代中頃から浴衣地の型付け・藍染に多用されたため、中形といえば浴衣ゆかたの代名詞のようになっていました。

埼玉で「長板中形ながいたちゅうがた」が盛んになった理由として、中川・綾瀬川などの水量の豊富な河川に恵まれていたことに加えて、何より大消費地であった江戸、東京の隣接地であったことが挙げられます。

江戸の需要に応える形で、多くの人々が型付け職人として仕事に従事していました。
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