綿花はアオイ科のワタ属・ゴシピウム属に入り、20種類ほどの品種が残っています。
繊維をつくらない種類もありますが、繊維をつくるワタ属は、大きく以下の4つに分類できます。 続きを読む
綿花はアオイ科のワタ属・ゴシピウム属に入り、20種類ほどの品種が残っています。
繊維をつくらない種類もありますが、繊維をつくるワタ属は、大きく以下の4つに分類できます。 続きを読む
木綿の原産地は、インドと言われています。
インドのパンジャブ地方は、古くから織物の技術の世界的な源であり、ヒマラヤを源流としインド洋に注ぐインダス川流域の文化とともに世界中へ広がっていきました。
紀元前一世紀頃の古代ローマでは、人々はすでに綿の布を身にまとっていたようです。 続きを読む
明治8年、イギリスの科学者であるアトキンソンが来日した際、日本人の暮らしの中に、青色が溢れていることを知りました。1875年、いまから約150年前です。
全国の至る所で見られる藍染の布をさして、ジャパンブルーと最初に呼んだのが彼だとされます。
日本中の庶民にとって大切にされてきた、藍染の衣類。藍染が日本に広がった理由として、木綿とのつながりは切っても切り離すことができない歴史がありました。 続きを読む
木綿は、16世紀には国内での栽培が広まり出し、17世紀初頭ごろには飛躍的に発展していきました。
庶民の日常的な衣服となり、江戸時代の経済と政治において、一貫して重要な役割を果たしていました。しかし、明治維新を経て、殖産興業政策のもとで、決定的な打撃を受けることになります。
殖産興業政策とは、明治政府が西洋諸国に対抗し、機械制工業、鉄道網整備、資本主義育成により国家の近代化を推進したさまざまな政策のことを指します。
明治政府は、産業の近代化を「輸出振興」「輸入防遏(ぼうあつ)」という国家のスローガンを掲げ、輸出輸入の両面から綿業は、中核的戦略産業として位置づけられました。
外国の質の高い綿糸・綿布に負けないようにと、綿業の近代化は国家的な課題とされていたのです。 続きを読む
江戸時代に流通した主な商品は、米を抜きにして考えると、木綿・菜種・干鰯・酒・材木・藍などが上位を占めました。
江戸時代以前、木綿が大陸からやってきて広がっていくまでは、日本において苧麻を原料にした布が一般的に生産されていましたが、戦国時代から江戸初期にかけて、木綿が爆発的な普及したとされます。
理由としては、大きく2つ挙げられます。 続きを読む
インドにおけるキャリコ(calico)と呼ばれた平織りの綿織物が、17世紀終わり頃からヨーロッパに伝わり、人々を魅了しました。
インドのカリカット(現在は、コージコード)から主に輸入されていたことから、キャリコやキャラコと呼ばれるようになり、素材的には日本でいう金巾に近く、平織りで織られ、軽くてしなやかさがあるのが特徴的でした。カーテンやシーツ、そして肌着等にも適していたそうです。
もともと、ヨーロッパには綿花の栽培と綿工業がなかったので、インドからやってきた綿織物が、人気を博すのは必然でした。人々に愛されたキャリコですが、その歴史をたどってみると、イギリスの産業革命と、その背景にあった悲しい歴史がみえてきます。
今では伝説として語り継がれていますが、現在のバングラデシュの首都ダッカでは、高度な技術によってつくられたダッカ・モスリンという伝説の織物がありました。
今、現存するものはロンドンのヴィクトリア・アルバート博物館で保存されているようです。
バングラディッシュは、インドから独立した国なので、イギリスが植民地統治をしている以前は、インドの綿業の中心地であり、その生産量や染色技術においてももっとも世界で進んでいたと言われます。
当時はもちろん機械がなく手工業だったので、糸は手紡ぎされていましたが、その糸が非常に細く、それをもってして薄い織物を織っていました。
インドで手つむぎをイメージすると、ガンジーが糸車を回している有名な写真を思い起こしますが、当時細い糸を紡ぐときも、早朝に霧の立ち込める川のほとりで糸車を回し、指先に油をつけながら紡いだといわれています。
早朝の霧、そして川の近くで湿気っぽい場所が、糸をつむぐのに適していたのです。 続きを読む
綿花は、種類によって採れる繊維の長さが違います。
大きくわけると、エジプト綿やスーダン綿の系統は超長繊維綿で、アメリカ綿に代表されるアンプラント綿は中長繊維綿、アジア在来種のデシ綿は短繊維綿に分類できます。
綿の繊維の長さは、糸にするときにその糸の細さに大きく関係してきます。 続きを読む
綿花はアオイ科のワタ属に属し、品種は20種類ほどが野生種として残っています。繊維をつくらない種類もありますが、繊維をつくるワタ属は、大きく以下の4つに分類することができます。
①arboreum(アルボレウム)②herbaceum(ヘルバケウム)③barbadense(バルバデンセ)④hirsutum(ヒルスツム)
①arboreum(アルボレウム)②herbaceum(ヘルバケウム)は、インド、パキスタンのあたりや中東方面が原産地とみられています。
①arboreum(アルボレウム)は、インドから世界中に世界中に広がり、古く日本で栽培されていた綿花はアルボレウムであったと推定されます。
③barbadense(バルバデンセ)④hirsutum(ヒルスツム)は、中米や南米北部などのアメリカ大陸が発祥と言われます。
①arboreum(アルボレウム)②herbaceum(ヘルバケウム)の染色体が13個、③barbadense(バルバデンセ)④hirsutum(ヒルスツム)は26個であるため、染色体の数が違う品種同士の交配はできません。 続きを読む
綿は、さまざまな用途で使われています。
その特徴としては、肌や手に触れる用途に強く、その肌触りの良さは言わずもがな、繊維の中でも優れたものがあります。肌に触れる下着やインナー、タオルなど実用的に使える場面は数知れず。
他の素材と比較すると、強度に関しては化学繊維のポリエステルやナイロンより劣り、シワになりやすかったり縮みやすいという特徴もあります。
綿は繊維のなかでは、万能とも言われてきましたが、他の繊維と混ぜて糸をつむぐ(混紡)によって、綿特有の欠点を補ったり、その他の繊維と混ざることで、新たな強みを出せます。
混紡というのは、種類の違う繊維の特性を高めて、それぞれの欠点をおぎなうようにして行われるのがポイントです。
例えば、ポリエステル65%、綿35%の割合で合成された繊維があります。ポリエステルの、吸収性は少ないけれどもシワになりにくい特性と綿の特性が調和し、吸収性が高くシワになりにくい素材となるのです。
この割合の素材は、着心地が良く、乾きやすく、シワになりにくいため、「黄金ブレンド」と呼ばれたそうです。
ちなみに、織物では糸が細く(細番手)、密度の大きい生地ほどシワになりやすい傾向があります。
ポリエステルは、数々の優れた性質をもっており、特に、熱可塑性(糸や布にある形を与えて、熱と圧力を加えると形が固定される性質があり、これによってさまざまな加工がしやすい)と低吸湿性(湿気を吸い込みにくいため、水に濡れても乾きやすい)が挙げられます。
ウォッシュアンドウェア(wash and wear)やノーアイロン、いまだとイージーケアなどと言う言葉がありますが、家庭で洗濯ができて濡れても乾きやすく、しわになりにくい性質が、熱可塑性と低吸湿性によって引き出されているのです。
他の繊維となじみやすいので、多くの天然繊維や化学繊維と混紡したり、異なる糸を用いて交織したりして、互いの長所を生かしながら、短所を打ち消し合えます。
上記のポリエステル65%、綿35%の割合で合成された繊維もその良い一例です。
ポリエステルの短所としては、繊維が硬いためにピリングと呼ばれる毛玉ができやすく、汚れのひどいものと一緒に洗ったり長時間洗濯液に浸けておくと、その汚れを吸い取って次第に薄黒くなっていく「逆汚染」と言われる欠点もあります。
そのため、白いポリエステル生地は、汚れたものと一緒に洗わない方が良いでしょう。
綿の特徴としては、「肌触りが良く柔らかい」「吸水性がある」などのイメージはすぐに浮かぶでしょう。
綿繊維の長所と短所を理解することで、ものづくりする人も使用する人も綿製品を長く楽しめます。
・吸水性、吸湿性が良い・・・綿の重さの2倍以上の水を含むことができ、放湿の際に気化熱を奪い涼しく感じる
・肌触りが良い・・・角がとがっておらず、切り口がぱらぱらにほつれて毛羽立つ事でチクチクしない
・保湿性が良い・・・セルロースの熱伝導率が低く、天然の撚りがあるため繊維に空間ができる
・風合いが良い・・・セルロースの特性として、天然の撚りが戻るときにシワや風合いに表情が出る。使用しているうちに、白っぽく洗いざらし感が出る
・通気性がある・・・天然の撚りによって空間ができるため、通気性が良い
関連記事:糸の撚り(より)の強さは品質にどう影響するか?甘撚りと強撚の特徴
・人の肌と綿の摩擦で静電気が起きにくい
・強度、耐久性がある・・・洗濯や漂白などの加工がしやすく、濡れると強度が増す
・染色がしやすい・・・アルカリ性に強く、薬品類と反応しやすい
・環境負荷が少ない・・・繊維は最終的に土に還り、栽培過程でも光合成で二酸化炭素を吸収し酸素を排出するなど、環境に良い
・耐熱性が高い・・・セルロースの特性で耐熱性があり、高温のアイロンが使える
・軽いのに強い・・・天然の撚りで隙間があるが、縦方向のセルロースの重合度が高く、横方向に水素結合があるので強い
・紡績しやすい・・・天然の撚りによって絡みやすく、ロウ分によって滑りが良い
・手入れが簡単・・・洗って乾かしておけば着られる
・農業分野でのメリット・・・比較的小規模から始められ、比較的簡単に栽培できる
・縮む、しわになる・・・製造過程でかかっていたテンションが緩み、天然の撚りが戻ると縮む。紫外線、空気酸化、窒素酸化物の影響によって黄色く変色する
・乾きが遅い・・・湿潤した非ミセル領域とルーメンから水分が放出されるまでの時間は長い
・毛玉ができる・・・繊維が短く、撚りが甘いなどが理由となり、柔軟剤や表面の摩擦によって起きる
・発火性がある・・・表面の毛羽立ちによって、火がつきやすい
・カビや虫食いが出やすい
・農業分野でのデメリット・・・農薬の被害、児童労働、環境汚染など
綿よりも特徴的に優れている繊維はたくさんありますが、総合的にみると綿は非常に優れた繊維と言えます。
綿という素材について詳しく知りたい方は、『棉(わた) (地域資源を活かす生活工芸双書)』を読んでみることをオススメします。