獣毛(じゅうもう)繊維の種類と特徴。モヘア、カシミヤ、キャメル、アルパカ、ラマ、兎毛(ともう)の毛繊維について


ウール(羊毛ようもう)は、家畜として飼育されている羊の毛です。

ウール(羊毛ようもう)以外に、紡績繊維として使用される動物繊維のことを獣毛じゅうもうと言います。

獣毛(じゅうもう)繊維の種類と特徴

国際的な商取引では羊毛に限って「ウール」と呼んでおり、他の獣毛じゅうもう繊維を「ヘア」(毛)と呼んで区別しています。

品質表示において「毛」と表記する場合は、すべての獣毛じゅうもうに適応することができます。

高級品であること示すために、カシミヤやモヘア、アンゴラなどとそれぞれ表記できる場合もあります。

実際に使用されている獣毛じゅうもうは、非常に多くの数があり、毛を採取する動物が違えば、繊維の特徴がそれぞれ変わってきます。

モヘア

モヘア繊維は、アンゴラヤギ(Angora goat)の毛繊維で、シルクのように細く光沢感があり、羊毛(ウール)に似ている性質を持っています。

繊維が滑らかで、縮んだりフェルト化しにくいという特徴があります。

トルコ、南アフリカおよびアメリカ西部が主産地で、一般的には1年に2回剪毛せんもう(毛を刈り取る)されます。

繊維の長さは、羊毛(ウール)よりも長く10cm〜18cmになります。

カシミヤ

カシミヤ繊維は、独特の光沢感と柔らかい手触りとともに、優れた保温性が特徴的で、中央アジア、チベット、インド、ペルシャと中国が主産地であるカシミヤヤギの繊維です。

その名前は、インド北西部の高山地帯「カシミール地方」に生息するカシミヤヤギに由来します。

カシミール地方のヤギの毛で織り上げられた肩掛けが、18世紀に大流行したことで、すぐれた素材であることが人々に理解されるようになったのです。

カシミヤヤギは、厳しい気候条件を生き抜くために、外側まで伸びる太い「刺毛しもう」と内側の繊細でやわらかい「産毛うぶげ」が生えています。

毎年春の終わりに、暑い季節を迎える準備として脱毛期に入ります。

この季節に、くしのような道具をつかって産毛うぶげをすき、それがカシミヤの原料となります。

性質は羊毛に似ていますが、アルカリに対してはさらに弱いです。

キャメル

キャメル繊維は、中央アジア、中国、チベット、モンゴルの砂漠で飼育されている双こぶラクダの毛繊維です。

一頭あたり年間で2.7kgほどの毛を、春の脱毛期に採取します。

表面の毛は太いため、下級品として扱われることが多いですが、内側の毛は細くて短いので、高級品として扱われています。

アルパカ

アルパカ繊維は南米原産で、ペルー、ボリビア、エクアドルやアルゼンチンのアンデス山系で飼育されている毛深いラクダ科のアルパカから、年に2回剪毛せんもうされます。

繊維の長さは、5cm〜30cmになり、なかには40cmと長いものもあります。

色は、白色のほか、灰色、黒色、褐色などさまざまで、手触りは非常になめらかです。

光沢感があり、細くて強度があるアルパカ繊維は、太い外側の毛と分離した内側の産毛が高級品として使用されます。

繊維の熱伝導率が低く、繊維が縮れているため、繊維の間に空気を多く含み、保温性は高められます。

アルパカから作った織物は、摩擦に強く、耐久性に富み、夏服用や裏地にも使用されます。

ラマ

ラマ繊維は、アルパカと同じように、アンデス山系で古代から飼育されているラクダ科のラマから年に1回剪毛せんもうされます。

繊維の長さと太さが比較的均一で、柔らかいですが、アルパカよりは強度に劣ります。

アルパカとラマの混血である種類からは、細くて光沢感があり、高級品になる毛が採取されます。

アンゴラうさぎ

アンゴラうさぎに代表される兎毛ともうの繊維は、長さが10cm以上あり、白色で光沢感があり、ニット用に使用されることが多いです。

アンゴラの毛は、一匹から250g〜500gの毛が刈りとれ、手触りがなめらかで柔らかいのが特徴的です。

繊維の内部に、小さい空気孔くうきこうがあることによって、高い保温性と吸水性が期待できます。

欠点としては、強度がなく、繊維の縮れが少ないため紡績しにくい点があります。

紡績しにくいため、羊毛と混紡して糸にすることが多く、製品になった後も糸の表面に出てきて自然に脱落することがよくあります。

その他の獣毛繊維

ミンク、ビーバー、チルー、キツネ、チンチラ、ヌートリア、アライグマ、アザラシ、フェレットなど、さまざまです。

獣毛繊維は、一つの種類だけで製品として形にするのが難しかったりするので、羊毛や化学繊維と混紡して用いられることで、獣毛特有の風合いを表現することが多くあります。


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