羊毛は、家畜として飼育されている羊の毛です。
国際的な商取引では羊毛に限って「ウール」と呼んでおり、他の獣毛繊維を「ヘア」(毛)と呼んで区別しています。
品質表示では、「毛」というのは、すべての獣毛に使用できますが、高級品であること示すために、カシミヤはモヘア、アンゴラなどとそれぞれ表記できる場合があります。
羊毛の特徴
羊毛の特徴は、さまざまです。
・軽くて手触りがふんわりとやわらかい
・あたたかく保温性が高い
・弾力性(外力が加わって変形した物体が、もとの形に戻ろうとする力)に優れており、シワになりにくく、型くずれしにくい
・ウールの表面は疎水性(水をはじく)でありながら、抱水力(水分を抱え込む力)がある。
・湿潤熱(水分を吸収する際に放出する熱)の発生熱量が他の素材より高い
・引っ張りや摩擦に弱い
・熱に対して100℃で硬化、130℃で分解、300℃で炭化する
・耐光性はあまりよくなく、長時間に日光に当たると繊維が弱くなる
・金属イオンを吸着しやすい
・塩基性、酸性、酸性媒染、金属錯塩、天然など各種染料によく染まる
羊毛の化学成分
羊毛は、グルタミン酸、アルギニン、シスチン、セリンなど18種類のアミノ酸成分からなるケラチンと呼ばれる繊維状のタンパク質です。
タンパク質は、アミノ酸が1本の鎖のように結合してできた物質で、ケラチンも、らせん状に曲がった形をしており、分子間や分子内には、多くのシスチン結合(架橋結合=かきょうけつごう、分子が橋を架けたような形で結びついて、ひとつに結合する)があり、物理的にも化学的性質にも大きな役割を果たしています。
シスチン結合によってらせん状に縮れる羊毛の特徴があらわれ、この縮れによって空気を含むことができ、ウールのあたたかさをもたらします。
羊毛はなぜ縮むのか
羊毛は顕微鏡でみてみると、スケールといいますが表面が松の木の皮のようなうろこ状の形をしており、繊維全体が細かい波形の巻縮(クリンプ)をもっています。
スケールは、羊毛がフェルト化する原因にもなっています。
スケールは、一方の向きにだけ生えているため、羊毛を熱湯やアルカリ性の強い液体のなかで、もんだり叩いたり刺激を与えると、繊維同士の絡み合いがおこり、きめが細やかな組織となり、硬くなります。
羊毛が縮むことを、縮充する(しゅくじゅう)といいますが、この縮充性を利用して毛繊維をシート状に重ねたものがフェルトとなります。
繊維同士をからみあわせたり、溶かしてくっつけたりすることにより不織布が作れますが、フェルト化は不織布製造の起源ともいえるのです。
毛繊維は酸には強いが、アルカリ性には弱いことから、アルカリ性の石鹸は使用できないので、中性洗剤を活用するなどして、選択時には縮充に注意する必要があります。