デザイン」カテゴリーアーカイブ

なぜ振袖は、袖が長いのか?振袖の装飾技法と模様について

振袖ふりそでとは広い意味で、身頃みごろ(体の前面と背面を覆う部分)とそでの縫い付け部分を短くして、「り」(袖つけより下の袖の部分)を作った袖のこと、もしくは「振り」をもち小袖形の衣類全般を指します。

振袖ふりそでの”ようなもの”は、室町時代(1336年〜1573年)から安土桃山時代(1573年〜1603年)にかけて、当時の文献や肖像画からみてとれます。

着用しているのは、もっぱら子供や若い女性ですが、当時はまだ「振袖ふりそで」とは呼ばれず、袖も現在のように長くはありませんでした。

機能面では袖の下の一部分を解くことで、空気が通りやすくして暑さを逃がすという実用的な面もありました。 続きを読む

【織物の三原組織】平織り、綾織り、朱子織り。三原組織における変化組織の特徴について

織物には基本とされる構造があり、ひら織り、あや織り、朱子織しゅすおりは、三原組織さんげんそしきと呼ばれています。

織りの三原組織さんげんそしきの基本をベースにして、そこから変化を加えることでさまざま特徴的な模様を出すことができます。 続きを読む

武士、侍(サムライ)はどのような衣服を着ていたのか?武士の装いの歴史について

武士、侍はどのような衣服を着ていたのか?

その歴史は、律令制りつりょうせいの崩壊を象徴する承平天慶しょうへいてんぎょうの乱(931年〜947年)が起こった平安時代中期から、慶応3年(1867年)大政奉還によって武士の公服・礼服としても着用されてきたかみしもが撤廃されるまでの約10世紀にわたります。

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Group-Samurai-Scholars,Ueno Hikoma (1838-1904), Public domain, via Wikimedia Commons,Link

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丹波布とは?柳宗悦に見出され、木綿を主体に絹が緯糸に使われた交織布

丹波布たんばぬのと呼ばれ、親しまれている織物があります。

丹波布たんばぬのとは、現在の兵庫県氷上郡青垣町佐治ひかみぐんあおがきちょうさじ地方を中心に、幕末から明治中頃にかけてのみ盛んに織られました。

木綿を主体に、緯糸に絹糸を織り込んだもので、産地の佐治では「縞貫しまぬき」と呼ばれ、他の織物とは区別されながら発達していきました。 続きを読む

江戸っ子に好まれた川越唐桟

江戸っ子とは?「いき」な江戸っ子に好まれた川越唐桟について

江戸っ子という言葉が、文献にみえはじめるのは、18世紀後半の明和年間ごろ(1764年〜1771年)とされます。

江戸っ子とは?

江戸っ子に関する文献を調査した歴史学者である西山松之助にしやままつのすけは、彼の著書『江戸っ子』にて、江戸っ子には「自称江戸っ子」と「主流江戸っ子」の二種があり、二重構造をもっていると述べています。 続きを読む

三纈(さんけち)とは何か?古代の染色技法である纐纈(こうけち)、夾纈(きょうけち)、臈纈(ろうけち)について

三纈さんけちとは、日本で古くから行われてきた三種類の染色技法をまとめて表す言葉であり、絞り染めの纐纈、こうけち板締めの夾纈きょうけち、ろうけつ染めの臈纈ろうけちのことを意味します。

上代じょうだい三纈さんけち」「天平てんぴょう三纈さんけち」などと称し、三纈さんけちの染色技法が、奈良時代には(710年〜794年)今の中国からすでに伝わっていました。

世界文化遺産にも指定され、多数の美術工芸品を収蔵していた正倉院しょうそういんに、三纈さんけちの技術を示す品々が、現在も保管されています。

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正倉院, あずきごはん, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons,Link

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縞帖(1857年)(安政四年嶋染集帳)

縞帖とは?縞帖の特徴から時代の変化を読み解く(手紡ぎ糸から紡績糸へ、天然染料から化学染料へ)

古く、機織はたおりは各家庭でおこなわれ、もっぱら女性の仕事でした。

縞帖しまちょうとは、自家用で作る織物の参考のために、使い終わった大福帳だいふくちょうの上に縞柄しまがらきれが無数に貼りつけられたものです。

縞柄のきれが貼られた縞帖しまちょうには、年号が記されたものも多く(経年劣化で解読できないものも多い)、貼り付けられた織物の年代を知る手掛かりとなります。

縞帖の特徴から、時代の変化もみえてくるのです。

縞帖(1857年)「安政四年嶋染集帳」

縞帖(1857年)「安政四年嶋染集帳」

縞帖(1857年)「安政四年嶋染集帳」

縞帖(1857年)「安政四年嶋染集帳」

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小紋とは?江戸小紋の歴史や制作工程について

江戸小紋という言葉を聞いたことがある方もいるかと思いますが、そもそも小紋とはどのような意味でしょうか。

紋という言葉は、単一または反復文様を表し、一般的には秩序立って乱れがなくきちんと並んでいる様を表す文様です。

小紋は、文字通り小形の紋様の集合を一定の間隔で繰り返し表した染め物をいいます。

小紋

小紋,Metropolitan Museum of Art, CC0, via Wikimedia Commons,Link

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江戸っ子に好まれた川越唐桟

縞柄と粋。江戸時代に、町人の間で流行した縞の文様の由来とは

江戸時代後期に、町人の間で好まれた文様が縞です。

縞は英語でstripe(ストライプ)ですが、柄を表現するのには、シンプルであるがゆえに、色糸、柄の大小や間隔の組み合わせによって無限大の表現方法があると言えます。

江戸っ子に好まれた川越唐桟『川越唐桟縞帳』

江戸っ子に好まれた川越唐桟『川越唐桟縞帳』

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捺染(プリント)とは。シルクスクリーンの歴史と活用方法

捺染なっせん(プリント)とは、模様を抜いた型紙やシルクスクリーン、彫刻ちょうこくをいれたローラーなどを使って、合成染料を混ぜた糊料こりょう色糊いろのり)を布地にプリントして模様を出すことを意味します。

色糊いろのりは、糊の防染力ぼうせんりょくと染料の着色力を合わせもつ材料なので、使い方によってはさまざまは表現をすることができます。

捺染なっせんの作業によく使用されるシルクスクリーンは、ヨーロッパにおける型染めの技法として生まれたもので、ずっと後になって工業や商業、芸術の文野へ進出するまで、捺染なっせんによる印刷法だけあって、長い間染色の分野で育ってきました。

合成染料に発明によって、初めて可能になった染色技法でもあり、日本においては合成染料が最初に輸入されたのは明治3年(1870年)ですが、実際に捺染なっせんが始まったのは、明治17年頃(1884年)と考えられています。

OSCAL 2017 silkscreen printed materials 28

シルクスクリーン,silkscreen,Manolis Angelakis, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons,Link

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