デザイン」カテゴリーアーカイブ

江戸時代の書物『女鏡(おんなかがみ)』における小袖の模様(文様)

江戸時代に出版された書物である『女鏡おんなかがみ』(上中下3冊)には、冠婚祝賀の心得や礼儀作法、服装、化粧、その他江戸時代の婦女子ふじょししつけの全般にわたる事項を、多数の挿絵が添えてながら記されています。

そのうちの一項目である「小袖こそでめす模様の事」の項に、衣桁いこう(着物を掛けておくために用いる、鳥居のような形をした衣裳掛け)にかけて表した式色服と12ヶ月の小袖模様(文様)十六図があります。

いわゆる雛形本ひながたぼんと同じ形式で小袖模様(文様もんよう)が表現されているため、雛形本ひながたぼんの先がけともいえます。 続きを読む

亀甲模様(亀甲文) 伊勢型紙

デザインにおける亀甲(きっこう)・亀甲文(きっこうもん)

亀甲模様(亀甲文きっこうもん)は、正六角形の幾何学模様で、亀の甲羅こうらの形に似ていることから「亀甲きっこう」の名前があります。

中国では亀が瑞兆ずいちょう(良い事が起こる前兆)とされ、古代中国の経書である『礼記らいき』には、想像上の霊妙な四種の瑞獣を表し、「麟鳳亀竜りんぽうきりゅう」との記述があります。

麟鳳亀竜りんぽうきりゅうは、りん(麒麟)・ほう(鳳凰)・(霊亀)・りゅう(応竜)を表します。

日本にも中国からの思想が伝わり、亀のデザインが瑞祥の模様(瑞祥文ずいしょうもん)として好まれました。 続きを読む

デザインにおける沢瀉(オモカダ)・沢瀉文(おもかだもん)

沢瀉(オモダカ)は、日本各地の低地の水田やため池、用水路などに見られる多年草です。

葉は根元にまとまってつき、長い葉柄がある独特の矢じり形をしていることから、「勝軍草かちいくさぐさ」とも呼ばれ、武士に愛されていました。

人の顔に似た葉を高く伸ばしている様子を指して「面高おもだか」とされたともいわれ、「面目めんぼくが立つ」(名誉が傷つけられずに保たれる・顔が立つ)という語にも通じています。 続きを読む

デザインにおける鴛鴦模様(おしどりもよう)・鴛鴦文(おしどりもん)

鴛鴦おしどり(オシドリ)は、オスの姿が特に美しく、多彩な羽根色や脇腹の銀杏羽(いちょうばね)、後頭部の冠羽(かんう)が特徴的です。

中国古代に、「君子万年くんしばんねん(教養や徳の高い立派な人はいつまでも長生きであるということを表わした四字熟語)」を祝うめでたい鳥としてや、夫婦和合ふうふわごう(夫婦円満)の象徴とされました。

日本でもこの思想を受け、二羽の鳥が翼を並べること(男女の仲睦まじい様子)のめでたさや翼の美しさをモチーフに、「鴛鴦文(おしどりもん)」として模様化(文様化)しました。

鴛鴦(オシドリ)Pair of mandarin ducks

鴛鴦(オシドリ)Pair of mandarin ducks,© Francis C. Franklin / CC-BY-SA-3.0, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons,Link

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デザインにおける車前草(おおばこ)

車前草おおばこ(学名:Plantago asiatica)は、日本各地の道端や野原などでよく見つけることができる多年草で、地面から葉を放射状に出して、真ん中から花穂をつけた茎が数本立ちます。

和名では「大葉子」とも表し、これは葉の大きいことに由来します。

車前草(おおばこ),Plantago major subsp. major kz02

車前草(おおばこ),Krzysztof Ziarnek, Kenraiz, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

漢名では「車前草(しゃぜんそう)」、種子を「車前子(しゃぜんし)」と言います。

種子は水気を帯びると体積が増え、粘着性を帯びて人間や車輪などに付着して広がっていき、車や人がよく通った跡(わだち)に沿って自生することから、「車前草」と名づけられたという説があります。

しかし、経尊きょうそんによって鎌倉時代に作られた語源辞書である『名語記みょうごき』(1268年)には、古代インドの名医で釈迦しゃかの弟子の一人である耆婆ぎばが、良薬である車前草おおばこを車の前板に植え、出行の際に食べたことによると記されているようなので、由来ははっきりとはしていません。 続きを読む

正倉院宝物「花氈第1号」藍地に紅・緑の濃淡で大唐花文を2つあらわす

デザインにおける唐花(からはな)・唐花文(からはなもん)

唐花からはな(唐花文)とは、現実に存在しているものと、空想上の花を集めて中国で作り上げた花模様(花文はなもん)です。

複雑で花弁がたくさんある花文はなもんをさまざまな方法で組み合わせ、華やかで美しい花形が構成されます。

唐代に盛んに染織品に用いられ、もともとはインドやペルシャ、ギリシャなどの西方的な要素を強く含み、いわゆる唐草模様からくさもようと同じようにデザインのモチーフにされました。 続きを読む