デザイン」カテゴリーアーカイブ

デザインという概念・思想のはじまり。ラスキンやモリスのものづくりに対する着眼点や美意識が社会に影響を与えていった。

デザインという概念の発生は、社会思想家のジョン・ラスキンや思想家であり芸術運動家であったウィリアム・モリスの思想がその源流として考えられています。

19世紀半ば、イギリスで産業革命がおこります。綿織物の製造における紡績機の開発、製鉄業の成長、蒸気機関の開発による動力源の改革、蒸気船や鉄道が発明されたことによる交通革命等、人の手ではなく、産業機械の発明と発展が大きく経済を動かし始めたのです。

初期の機械生産は、いいかげんで大ざっぱなものづくりであり、品質的には人の手が生み出すものと比べると、非常に劣るものでした。

そんな中、異常な速度で「下手なもの」が量産されていき、伝統的に手仕事が育んできた生活や文化、美意識をも奪っていくような機械生産に、意義を唱える人々も少なくありませんでした。

その代表的な人物が、ジョン・ラスキンとウィリアム・モリスです。 続きを読む

成熟した文化のたたずまいを再創造する。原研哉氏の『デザインのデザイン』

本書を読んでデザインというものが少しわからなくなったとしても、それは以前よりもデザインに対する認識が後退したわけではない。それはデザインの世界の奥行きに一歩深く入り込んだ証拠なのである。

グラフィックデザイナーで、武蔵野美術大学教授を務める原研哉氏の著書で2003年に初版が発売された『デザインのデザイン』のまえがきに、上記の言葉があります。

約20年前に出版された本になりますが、その内容はまったく陳腐化しておらず、小手先の「デザイン」ではなく、デザインとはなにか?を考えさせられる本になっています。 続きを読む

発酵とは何か?

発酵とは何か?

一般的には微生物の持っている機能を広く物質生産に応用して、人間の有益なものに利用することを発酵と呼んでいます。

英語で発酵は「fermentation」ですが、ラテン語の「湧く」という意味の「fervere」から生まれた言葉です。 続きを読む

真の美はただ「不完全」を心の中に完成する人によってのみ見いだされる。東洋精神を西欧に伝えた名著『茶の本』。

岡倉天心(覚三)が、日本や東洋の文化を欧米人に伝えるために英語で書いた本が1906年に出版された『The Book of tea(茶の本)』です。

日本人の美意識について書かれた本書の導入部分は、日本や東洋の文化に対する欧米人の認識が間違っていたと岡倉さんは指摘しています。

タイトルは『茶の本』ですが、単に茶に関することだけではなく、茶道、禅、道教などの思想を通して、芸術について論じられています。 続きを読む

デザインとは、何か?

デザインとは、何か?

ウィキペディア(Wikipedia)には、デザインとは「審美性を根源にもつ計画的行為の全般を指すものである。」とありますが、上記の質問に対する答えは、100人に聞けば100通りの答えが返ってくると思います。

世界的なベストセラーになった『エクセレント・カンパニー 』や数々の書籍を書いてきた経営コンサルタントのトム・ピーターズが2005年に出版した『トム・ピーターズのマニフェスト(1) デザイン魂。』には、彼が出会ってきた著名な人々の考える「デザインとは」についての記述があります。

デザインを考える上では、先人たちの言葉は非常に参考になり、イメージをふくらませる手助けとなります。 続きを読む

消費者の価値観が多様化することで、ものづくりはどう変わるか。『2030年アパレルの未来―日本企業が半分になる日』

これまでの日本においては、フォロアー層と呼ばれる「自らがこれといった価値観を持たず、世の中のトレンドに流されやすい中間層」が消費市場において大きな割合を占めていました。

ただ、消費社会が成熟化し、インターネットとスマホの普及にともない、人々の消費における価値観の多様化がますます進んでいます。

消費における価値観は、人それぞれ違いますが、大きく見ると8つに分類できるそうです。『2030年アパレルの未来―日本企業が半分になる日』によると、世界中のほとんどの国や地域で、だいたい当てはまる分類であるとされています。

本書を引用しながら、消費における価値観を下記に分類しています。 続きを読む

捺染(プリント)とは。型紙やシルクスクリーン、捺染ロールを使って模様を染める。

捺染(プリント)とは、模様を抜いた型紙やシルクスクリーン、彫刻をいれたローラーを使って、染料を混ぜた糊料を布地にプリントして模様を出すことを表した言葉です。

合成染料に発明によって、初めて可能になった染色技法であり、日本においては合成染料が最初に輸入されたのは明治3年(1870年)ですが、実際に捺染が始まったのは、明治17年頃と考えられています。

今回は捺染に使う道具や染め方について、取り上げてみます。 続きを読む

編むとは何か?ニット製品の特徴と特性を理解するとおもしろい。

私たちの生活のなかに、ニット製品は当たり前のように溶け込んでいます。

手編みのマフラーを編んだことがあるような人は、その原理がよくわかるかと思いますが、馴染みのない人にとっては、そもそもどうやって編むのかを理解するのは難しかったりします。

そもそも編むとはどういうことなのか、また織物と比較してどのような特徴があるのでしょうか。 続きを読む

日本の編み物の歴史。南蛮貿易時代からニット生産の近代化、メリヤスからニットへ。

日本の編み物の歴史は、1592年ごろにポルトガル人やスペイン人によって、手編みの靴下や手袋などがやってきたことが始まりとされています。

南蛮貿易時代に、日本の編み物の歴史がスタート

その後、1596年〜1614年の南蛮貿易時代の文献には「メリヤス」という言葉が記載されています。

今、現存するものとしては、常陸水戸藩の第2代藩主であった徳川光圀(とくがわ みつくに)が着用していた綿とシルクの靴下がもっとも古いものとされています。柄編みの靴下で、再現を試みたところ、一足つくるのに機械編みで数日かかったそうです。

徳川光圀といえば、創作物語である水戸黄門の黄門さまその人ですね。 続きを読む

オイルコーティングで、衣類や綿生地に防水性や光沢感を与える。

綿織物にオイルをコーティングすることで、防水性や光沢感を出すことができます。

オイルコーティングやオイルクロスなどと言いますが、もともとは綿の織物に、成熟した亜麻(あま)の種子から得られるアマニ油等の、空気中で徐々に酸化して固まる乾性油(かんせいゆ)を塗っていました。

用途としては、テーブルクロスや壁に貼る布等によく使われていたそうです。

今では、ポリウレタン、アクリル、エナメルやラッカーなどの樹脂をコーティングして、昔のオイルコーティングのもっていた独特の光沢やぬめり感を出しています。

樹脂は基本的に無色透明であって、塗ってもオイルの上から生地がちゃんと透けます。防水性、保湿性や耐熱性など、機能性の向上にも期待することができます。

ファッション性を向上させるためのオイルコーティング

機能性を向上させることを目的として、ジャケットやコートにオイルを塗っていましたが、現在ではファッション性の向上のために使用されることが多くなりました。

非常に丈夫で長持ちし、経年変化による風合いを楽しむことができますが、樹脂によってほこりや汚れがつきやすく、オイルが塗ってある洋服自体が重くなったり、通気性が悪くなるので蒸れやすくなったり等の面もあります。

一番大変なのは、普通の洋服のようには洗うことができないという点でしょう。

メンテナンスが難しいけれど、メンテナンスさえしっかりできれば、好きな人には非常にハマるものだと思います。メンテナンスがちゃんやろうとする意思がある人でないと、所有するのは難しいかもしれません。

なぜオイルを綿の布に塗ろうと思ったのか?

そもそも、なぜオイルを綿の布に塗ろうと思ったのかを考えてみると、やはり機能的な面での利点にあります。

水を弾いてくれる繊維が開発されてなく、レインコートなんてものはなかった時代においては、「綿繊維だけどもしかしたらオイル塗ったら水弾いてくれるのではないか?」というアイデアが出てくるのは、必然だったのでしょう。

イギリスでは、第一次世界大戦時には、防水服として軍にオイルコーティングされた服が配られていたそうです。

フィルムコーティング

オイルコーティングとは別に、フィルムを綿の織物にコーティングするフィルムコーティングというものもあります。

フィルムコーティングは、ポリウレタン、ポリエチレン、塩化ビニール、合成ゴムなどのフィルム状のものを、綿織物と合わせて接着したものです。

洋服用には、ポリウレタンやポリエチレンの薄いフィルムを使ったり、テーブルクロスのように厚い生地のものには、塩化ビニールや合成ゴムが使われたりします。

レジン(樹脂)加工

布地に合成樹脂をコーティングして、繊維を硬く、張りのあるものにすることができます。

樹脂は英語で、レジン (resin)なので、レジン加工と呼ばれたりします。

繊維の表面が樹脂でコーティングされるので、シワになりにくくなり、縮みも防止されます。

染色した後の色落ちを減らす(染色堅牢度を高くなる)効果を得ることができるので、製品で染められた衣類が仕上げにレジン加工される場合もあります。