投稿者「iroai.jp」のアーカイブ

なぜ振袖は、袖が長いのか?振袖の装飾技法と模様について

振袖ふりそでとは広い意味で、身頃みごろ(体の前面と背面を覆う部分)とそでの縫い付け部分を短くして、「り」(袖つけより下の袖の部分)を作った袖のこと、もしくは「振り」をもち小袖形の衣類全般を指します。

振袖ふりそでの”ようなもの”は、室町時代(1336年〜1573年)から安土桃山時代(1573年〜1603年)にかけて、当時の文献や肖像画からみてとれます。

着用しているのは、もっぱら子供や若い女性ですが、当時はまだ「振袖ふりそで」とは呼ばれず、袖も現在のように長くはありませんでした。

機能面では袖の下の一部分を解くことで、空気が通りやすくして暑さを逃がすという実用的な面もありました。 続きを読む

ファッションにおけるオイルコーティングのメリット・デメリット。衣類や生地を丈夫にし、防水性や光沢感を与える

綿織物にオイルをコーティングすることで、防水性や独特の光沢やぬめり感を出せます。

オイルコーティングやオイルクロス(oil cloth)などと言いますが、もともとは綿の織物に、成熟した亜麻あまの種子から得られるアマニ油や桐油きりあぶらなどの、空気中で徐々に酸化して固まる乾性油かんせいゆを塗っていました。 続きを読む

お金(小銭・硬貨)がサビると何色になるか?硬貨の色が違う理由について

普段の生活のなかでお金として使っている小銭は、私たちの暮らしの中でもっとも身近な金属のひとつです。

1円、5円、10円、50円、100円、500円と6種類の硬貨がありますが、例えば買い物の最中、瞬時にそれぞれどのように見分けているのでしょうか? 続きを読む

日本人の色彩と染色における歴史。日本の伝統色と色名について

四季のうつろい、地理的、歴史的、文化的背景などさまざまな影響を受け、日本の伝統色とされている色の名前は、非常に多くの種類があります。

数々の色の中でも、藍色、紅色、紫色の3つの色は歴史や色の豊富さなど、日本人にとってとりわけ関わりの深かった色とも言えます。

古来、日本人は、色彩や色の表現について特別な感情や独自の感性を持っていました。

古代の人々は、草木にも霊があると考え、草木の霊は特に木霊こだまと呼ばれ、一番身近に存在する和霊にぎたまとされていたのです。 続きを読む

【織物の三原組織】平織り、綾織り、朱子織り。三原組織における変化組織の特徴について

織物には基本とされる構造があり、ひら織り、あや織り、朱子織しゅすおりは、三原組織さんげんそしきと呼ばれています。

織りの三原組織さんげんそしきの基本をベースにして、そこから変化を加えることでさまざま特徴的な模様を出すことができます。 続きを読む

ファッション・服飾における黄金比、黄金分割。洋服が綺麗にみえるバランスを論理的に理解する

ファッションにおいて、外見が綺麗に見せることができるバランスがあります。

黄金比おうごんひという言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、黄金比おうごんひを用いて長さを分けることで、見栄えの良いバランスがとれるのです。

黄金比おうごんひを用いて長さを分けるので、黄金分割おうごんぶんかつ(GoldenMean)または黄金比分割おうごんぶんかつといいます。

一般的には、7:3に分けられたものが美しく見えるといわれます。

確かに7:3は黄金比に近い値ですが、より正確に「黄金比」に近いものは、5:8に分割された程度になります。 続きを読む

繊維が軽くて強く、伸び縮みするのはなぜか?繊維が加工しやすい理由について

普段私たちが着ている服を考えてみればよく分かることですが、私たちの身近にある繊維は、伸びたり縮んだりします。

これは、一般的に繊維を構成する高分子こうぶんし(ポリマー)の動きによるものです。天然の高分子こうぶんしは、構造が複雑で、合成された高分子は簡単な構造で組み立てられています。

合成方法によって、繊維の性質がさまざま変わってきます。

無機繊維と金属繊維以外の化学繊維も、「高分子こうぶんし」と呼ばれる細長い形をした分子でできているのです。

伸びたり縮んだりと、高分子こうぶんし(ポリマー)でできている繊維の代表的な性質について挙げてみます。 続きを読む

浮世絵に使用された主要な絵具。錦絵、紅絵に使用された有機絵具と無機絵具

浮世絵うきよえとは、江戸時代初期に成立した絵画のジャンルのひとつで、暮らしや風俗、その時の流行などが反映された絵の総称を表します。

さまざまな色で表現された浮世絵うきよえですが、実際にどのような絵具えのぐが使用されていたのでしょうか。 続きを読む

染色・草木染めにおける櫟(クヌギ)。薬用効果や橡色(つるばみいろ)の歴史について

クヌギ(学名Quercus acutissima CARRUTH. )は、ブナ科の落葉広葉樹です。

属名のQuercusは、ケルト語のguer(良質の)とcuez(材木)に由来するもので、acutissimaの種名は、「最も鋭い」という意味で、葉っぱの鋸葉のこぎりばの様を表しています。

成長すると樹高は15〜20メートルほどになり、日本では本州の岩手、秋田県以南、本州、四国、九州の各地に広く分布しています。

Quercus acutissima BW-5424050

クヌギ,Franklin Bonner, USFS (ret.), Bugwood.org, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons,Link

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愛染明王とは。愛染明王が藍染・染色業者に信仰されるようになった理由

古くから、職人と呼ばれる手工業者たちは、守護をしてくれる神仏をまつっていました。

同業者同士で信仰のための組織である「こう」を結成する場合も、数多くありました。

こう」においては、神仏の信仰だけでなく、同業者同士、技術の向上や保護を目的に活動したり、互いの結束を強める役割もありました。

染色職人、とりわけ藍染に関わる人々は、仏教の愛染明王あいぜんみょうおうを信仰し、同業者が集って、「愛染講あいぜんこう」を結成していました。

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