「染分縮緬地源氏絵海辺風景模様小袖(そめわけちりめんじげんじえうみべふうけいもようこそで)」

源氏物語を題材にした源氏絵文(げんじえもん)


『源氏物語』を題材とした絵の総称を「源氏絵文げんじえもん」と表現します。

平安時代の風俗を物語式に描いたものを文様化(模様化)し、絵画性が強く、工芸品のデザインに好んで用いられていました。

源氏物語を題材にした源氏絵文(げんじえもん)

源氏絵文が描かれてる染織品で有名なものは、江戸時代に作られた「染分縮緬地源氏絵海辺風景模様小袖そめわけちりめんじげんじえうみべふうけいもようこそで」です。

この小袖は、腰を境に雲取くもどりによって染め分けた上半分が紅地で、下半分が白地です。

紅地の上半身には、扇面、松皮菱まつかわびし、雪輪の形に白く染め抜いたの一つ一つの白場に、物語の一場面が墨絵すみえで描かれています。

また、上半身には『源氏物語』を巻名の一部が刺繍ししゅうされています。

下半身には『源氏物語』の巻名の一つである「須磨すま(第12帖)」や「明石(第13帖)」の巻を連想させる海辺の風景が、友禅ゆうぜん染めと刺繍ししゅうの染織技法を用いて表現されています。

小袖こそでなどの着物の模様(文様)の配置において、腰を境に身頃の上下で模様を変えるスタイルは、元禄げんろく(1688年〜1704年)頃に、女性の帯幅が広くなるとともに登場したとされます。