ものづくり」カテゴリーアーカイブ

長板中形とは。長板中型の特徴と技法と歴史について

長板中形ながいたちゅうがたは、小紋や形友禅などと同じく、日本に古くからある型染めの一種です。

6メートル以上(3間半)にもなる一枚板である「長板ながいた」に生地を広げ、中形ちゅうがたと呼ばれる、大紋だいもん小紋こもんの中間ぐらい柄の大きさに彫られた型紙を使用して型付けを行うため、長板中形ながいたちゅうがたという名前がありました。

伊勢型紙,MET DP13824

伊勢型紙,Metropolitan Museum of Art, CC0, via Wikimedia Commons,Link

長板中形ながいたちゅうがたの技術は、江戸時代中頃から浴衣地の型付け・藍染に多用されたため、中型といえば浴衣の代名詞のようになっていました。

埼玉で「長板中形ながいたちゅうがた」が盛んになった理由として、中川・綾瀬川などの水量の豊富な河川に恵まれていたことに加えて、何より大消費地であった江戸、東京の隣接地であったことが挙げられます。

江戸の需要に応える形で、多くの人々が型付け職人として仕事に従事していました。 続きを読む

信念や哲学を持ったものづくりでないと、それはただの量産品になる。

ものづくりと一口にいっても、世の中にはさまざまなものづくりがあります。

低価格で、大量にものをつくるのであれば、機械に頼ったものづくりになります。いわゆる量産品ですが、これがものづくり産業の大部分を占めています。

一方で、価格は高いし、数をつくれないものづくりもあります。それは、人の手作業が必要となるものづくりです。

価格と生産量において機械には太刀打ちできない、後者のものづくりの利点はなんでしょうか。

個人的には、手作業であるからこその非効率の価値があると考えています。 続きを読む

人の手がかかるものづくりには非効率の価値があるから、その他の作業をできるだけ効率化するべき。

ものづくりの分野、とりわけ全ての工程を機械やロボットで完結するのではなく、人の手が必要とされる手仕事などは、非効率にみえる作業部分が多くあります。

手仕事においては、人の手が必要な非効率な部分こそが、大きな価値として評価される点でもあるのです。手仕事の手のかかる部分に、しっかりと時間を割くということは言うまでもありません。

ただ、分野にもよりますが、なかなか手仕事でご飯を食べていくのは難しいところです。なぜなら、手仕事であるため、投下した時間に対する生産量に限りがあるからです。

限りがあるなかでどうやって、利益を効率よく出すことができるかを考える第一歩として、まずは手をかける作業以外の工程を徹底的に効率化する意識を持つことが大事だと思います。

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不器用で下手な素人のものづくりには価値がある。ものづくりの本質は、心でつくること。

初版が1993年に発行された岡本太郎(著)『自分の中に毒を持て』は、人生に大切だと思えるエッセンスがたくさん詰まった本です。

岡本太郎は芸術家でしたが、「ものづくり」に関しても、本書にて言及していました。

そこに書かれていることが、ものづくりに関わる人でも、そうでない人にとっても示唆に富むものに感じました。 続きを読む

安心感と信頼性がブランド価値の土台にある

企業は顧客にブランドを認知してもらい、商品やサービスを購入してもらうためにブランド価値を高める努力をしています。

ブランド価値を高める活動全般がブランディングですが、さまざまな企業がある中で自社の商品やサービスを選んでもらうためには、競合他社との差別化が必要になります。

自社が特徴やコンセプトを明確にし、ネーミング、ロゴ、パッケージ、キャッチフレーズなどにより自社がどのようなブランドであるかを伝えていくのです。

ブランド価値をどのように向上させていくのか、その手段や施策は数知れずですが、ただ単に知名度があげていけば良いという単純な話ではありません。

知名度が高ければ、購買につながる可能性は確かに高くなりますが、繰り返し商品やサービスを顧客に購入してもらうためには、ブランドのファンになってもらうことが大事なのです。 続きを読む

日本における刺繍の歴史と特徴。奈良、平安、鎌倉、室町、江戸、それぞれの時代における刺繍について

針と糸があれば、布を自由に装飾できる刺繍は、世界中で古くから行われてきました。

中国では、殷代(紀元前17世紀〜紀元前1046年)の青銅器に付着していた絹にひし形の文様が刺繍された例が見つかっています。

日本においては、中国から発達した刺繍の影響を受けながらも、織りや染めと混ざりあいながら、日本的な美しさが数多く生まれてきました。

豪華な刺繍の打敷

刺繍の打敷,Hemuta999, CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons,Link

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用と美と堅牢。生産者は5年、10年先の将来を見据えたものづくりへ

「用と美」という言葉があります。

この言葉を聞くと、「民藝運動の父」と呼ばれる柳宗悦(1889年〜1961年)を思い浮かべる方も多くいるのではないでしょうか。

名も無き職人の手から生み出された日常の生活道具を「民藝」と名づけ、民藝には美術品に負けない美しさがあると唱え、美は生活の中にあると語りました。

人々の暮らしの営みのなかから生まれた民藝には、「用」にきちんとひも付いた「美」が宿っている。豪華な装飾がほどこされ、観賞用の作品が主流となってきていた工芸の世界において、あたらしい美の価値観やモノの捉え方を提示したのです。 続きを読む

摺り染めと括り染め。絞りによる染物「ゆはた」「ゆふ」、絞り染めを意味する「ゆふせん」

日本の古代の人々は、草木が成長し花が咲き、果実が実るのは、草木に宿る精霊(木霊)の力であると信じ、草木からとれる自然の色で、衣服を染めつけていました。

強い精霊の宿るとされる草木は、薬用として使用されていました。薬草に宿る霊能が、病気という悪霊によって引きおこされた病状や苦痛を人体から取り除き、悪霊をしりぞける作用があるとされていたのです。

日本の染色技術が飛躍的に発展するのは、4世紀ごろに草花から染料を抽出し、これを染め液として、浸して染める「浸染」(しんせん)の技術が中国から伝わってきてからです。

もっとも原始的な染色方法として、植物を生地に直接こすりつけて色を染め付ける「摺染」(すりぞめ)です。

日本古代の色彩と染』には、摺り染めについて、下記のように記述があります。 続きを読む

花森安治『灯をともす言葉』。暮らし、生き方、美しさ、創ること、書くことについて

生活雑誌『暮しの手帖』の創刊者である花森安治はなもりやすじ

彼は、「暮しの手帖」の取材、執筆からデザイン、表紙にいたるまで自ら手がけていました。1997年に心筋梗塞でこの世を去るまで、さまざまな才能を発揮しづづけた、稀有な編集者です。

2016年、NHKの朝の連続テレビ小説、『とと姉ちゃん』では、暮しの手帖社の創業者である大橋鎭子おおはししずことの雑誌出版の物語がモチーフにとされました。

灯をともす言葉』という書籍には、より良い生活や暮らしについて考えつづけた彼が、残してきた言葉の数々が載っています。

個人的に好きな言葉がたくさんありましたので、そのなかの一部を紹介したいと思います。 続きを読む