綿・麻以外の植物繊維。カポック、パイナップル繊維、ヤシ繊維、芭蕉繊維。

植物繊維といえば、綿と麻に代表されますが、その他にも実用的に繊維として使用されている植物があります。

カポック(パンヤ)

カポックは、インドネシアやその周辺の国々で生育しており、日本ではパンヤという名前でよく知られています。

種子を保護するために生えている、コットンボールのようなものを繊維にします。種子毛繊維と呼ばれます。綿花とは異なり、軽くたたくだけで繊維と種子が分離するので収穫が簡単です。

繊維の特徴としては、筒状で内部がつ空洞になっているので、非常に軽く、やわらかいです。ただ、天然撚りがなく、表面がなめらかので、紡績はしにくいです。

関連記事:糸の撚り(より)の強さは品質にどう影響するか?甘撚りと強撚の特徴。

繊維内部の空洞に水が入りにくいという特徴もあるので、水に浮きやすく、救命用具の中綿として使われたり、弾力性や保温性にすぐれているので、枕やふとん、マットレスなどに用いられています。

パイナップル繊維(アナナス繊維)

パイナップルの葉っぱの葉脈を使った繊維で、繊維の長さは約5〜10cmほどです。

白色、もしくはやや黄色みを帯びた白色(象牙色)で、繊維は細いけれど強度があり、光沢感に富み、耐水性にすぐれています。

織物にする際は、加工次第でやわらかくも硬くもできます。主に、袋物や、テーブルクロスなどに使用されています。

フィリピンでは、パイナップルから採取した糸で織った「ピーニャ」と呼ばれる伝統的な織物があります。

ヤシ繊維

ヤシの実の殻からとれる繊維で、色はややくすんだ明るい茶色(肉桂色)をしています。

繊維は硬いのでシワになりにくく、摩擦にも強いうえに、太陽光や温度の変化による変形や、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質(耐候性)を持っています。

ラフィアヤシ

ラフィアヤシの葉っぱから採れる繊維は、かつて織物の素材としてアフリカで広く使われてきました。

マダガスカルとナイジェリアが原産国で、アフリカ中部や西アフリカの熱帯雨林の周辺にも生育するようです。

ラフィアヤシの葉っぱの長さは15mにまで育ちますが、繊維として利用するのは若葉のみです。

繊維の取り出し方としては、葉裏の柔らかい部分をナイフの刃で削るか手でむくかして、上面の表皮だけの状態にします。そうすると半透明の、繊維組織をとることができます。

繊維を天日干ししてから、手の爪や貝殻、あるいは専用のくしを使って細く裂き、長さ1メートルほどのしなやかな繊維の束にするのです。

ひもにしたり、柔らかくてチクチクしない織物となったり、皮革素材のように使えば使うほどしなやかになり、ツヤが出るのが特徴です。

芭蕉繊維

バショウ科、多年草イトバショウの茎や葉の内側にある靭皮繊維(じんぴせんい)から、繊維を採取することができ、沖縄県や奄美群島の地域で、芭蕉布と呼ばれる貴重な織物が織られてきました。

麻よりも硬いけれど、布自体は軽くて張りがあるので、夏物の着物地としても古くから愛用されてきました。

樹皮繊維である藤、葛、緒、芙蓉など

昔の人々は、藤、葛(くず)、緒(お)、芙蓉(ふよう)など身近にある植物から繊維を取り出して利用してきました。

沖縄のオヒョウから作られるアツシ織り、静岡県の掛川市に古くから伝わる葛布、京都の丹後地方の藤布などが知られています。

麻や木綿が普及していく前は、自然の木々や植物から皮をむいて繊維や布にしていたのが、ごく当たり前に行われていたのでしょう。

参考文献:『21世紀へ、繊維がおもしろい』

発酵とは何か?

発酵とは何か?

一般的には微生物の持っている機能を広く物質生産に応用して、人間の有益なものに利用することを発酵と呼んでいます。

英語で発酵は「fermentation」ですが、ラテン語の「湧く」という意味の「fervere」から生まれた言葉です。 続きを読む

人類最古の繊維である麻の種類や性質、歴史。日本の麻栽培地と主要な麻織物産地。

人類にとって、繊維の中でも麻との関わりが最も古くからあると言われます。

紀元前約1万年前の新石器時代の遺跡から、麻織物が出土しています。

また、紀元前の古代エジプトのミイラは、麻の布で包んでありました。 続きを読む

繊維の宝石、世界最高級の海島綿(シーアイランド・コットン)。

木綿の原産地は、インドと言われています。

インドのパンジャブ地方は、古くから織物の技術の世界的な源であり、ヒマラヤを源流としインド洋に注ぐインダス川流域の文化とともに世界中へ広がっていきました。

紀元前一世紀頃の古代ローマでは、人々はすでに綿の布を身にまとっていたようです。

日本に木綿が入ってきたのは1200年ごろの鎌倉時代初期、中国から綿がやってきたと推定できる文献はあるそうで、その後に種子が伝わってきて、三河や遠江、大和、摂津、河内、和泉などが産地となりましたが、明治時代の産業の近代化の波に飲まれ、衰退していきます。

関連記事:和綿が衰退した歴史。産業の近代化の波に飲まれ、輸入綿を原料に、和綿が切り捨てられる。

綿を巡る歴史は、世界中数え切れないほどありますが、西インド諸島で栽培されていた海島綿とコロンブスの話があります。

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繊維の性質。軽くて強く、伸び縮みするのはなぜか?

普段私たちが着ている服を考えてみればよく分かることですが、私たちの身近にある繊維は、伸びたり縮んだりします。

これは、一般的に繊維を構成する高分子(ポリマー)の動きによるものです。天然の高分子は、構造が複雑で、合成された高分子は簡単な構造で組み立てられています。合成方法によって、繊維の性質がさまざま変わってきます。

無機繊維と金属繊維以外の化学繊維も、「高分子」と呼ばれる細長い形をした分子でできているのです。

伸びたり縮んだりと、高分子(ポリマー)でできている繊維の代表的な性質について挙げてみます。 続きを読む

化学繊維の種類と、繊維をつくる高分子について。再生繊維、半合成、合成繊維、半合成繊維。

繊維を糸の状態にすることを紡績(ぼうせき)といいますが、紡績された繊維は、大きく天然繊維と化学繊維に分けることができます。

天然繊維は、植物そのものから繊維を取り出す綿や麻、羊などの動物の毛を刈り取って利用するウール、蚕が口の中から出したまゆ糸からつくるシルクなどがあります。

上記のような天然繊維を、人類は昔から植物を栽培したり、動物を飼育することで獲得してきましたが、多大な労力がかかり、天候にも大きく左右されるので、生産量や価格が不安定でした。

天然繊維しかなかった時代に、発展してきた化学技術を繊維分野に生かさないわけにはいきません。技術のおかげで、化学繊維として、木材や石炭、石油、天然ガスなどを原料にすることで、繊維を作り出すことに成功しました。

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繊維や糸の太さを表す単位、デニール、テックス、番手とは?フィラメント(長繊維)とステープル(短繊維)の違い。

繊維の太さを表すためのに用いられる単位に、デニール、テックス、番手があります。

デニール

繊維や糸の太さ、すなわち繊度(せんど)を表す単位として、デニールが用いられます。

デニールは、長さ9000メートルで、1グラムのときを1デニールといい、繊維の場合には「d」または「den」で、糸の場合は「D」で表します。

デニールは、その数字が大きいほど太くなっていきます。 続きを読む

草木染め・染色における灰汁の効用。灰から生まれる灰汁の成分は何か?

木や藁の灰に水や熱湯を加えてかき混ぜると、灰が沈殿したその上澄み液が灰汁と呼ばれるアルカリ性の液体になります。

古くから世界中で洗濯用の「洗剤」として広く使われていたり、日本ではお酒に混ぜてアルカリ性にすることで防腐や色つけ効果を求めたり、和紙や焼き物の製造などに活用されてきた歴史があります。

普通に生活していても、灰汁というものにふれる機会はないと思いますが、現代においても灰汁が活用されている分野があります。 続きを読む

野蚕シルクの種類と特徴、家蚕シルクとの違いについて。

シルクの素材を扱う上で、「家蚕(かさん)」、「野蚕(やさん)」という言葉に出会います。

野生であったものを人工的に繁殖させたり、品種改良しながら飼育された蛾が「家蚕(かさん)」と呼ばれ、野生に生息していたり、野生に近い状態のマユをつくる昆虫類を「野生絹糸虫」と総称し、その中で特に実用的なマユをつくる品種を「野蚕(やさん)」と呼んでいます。 続きを読む

萱葺き屋根(茅葺き屋根)は、なぜ萱が素材として使われたのか?

日本の住宅建設様式の一つに、合掌造り(がっしょうづくり)が挙げられます。

急勾配の屋根を持ち、白川郷の風景を思い浮かべる人も多いかと思いますのが、その屋根に使われている素材が萱(かや)です。

昔の人々は、なぜ萱を屋根の素材として使用したのか?理由としては、やはり素材そのものの耐久性にありました。 続きを読む