草木染め、植物染料とは何か?語源と定義、一般的な染色方法について

「草木染め」という言葉は、日本の作家で染織家の山崎斌やまざきあきら(1892年〜1972年)に命名されました。

1930年(昭和5年)、化学染料が普及してきたころ、天然染料は衰退の一途をたどっていきました。

「草木染め」という言葉は、古くから伝承されてきた染色方法を復興するにあたり、化学染料と区別するために名付けられたのです。

現在、草木染めという言葉の定義は、自然から得られる染料で染色することの総称として定着しています。 続きを読む

染色におけるインド藍。歴史と染色方法について

インド藍(学名 Indigofera suffruticosa)は、熱帯地方に分布するマメ科コマツナギ属の藍色素を持つ植物から抽出した染料の名前でもあり、植物の名称でもあります。

日本の本土で古くから栽培されてきたタデアイ(くさの藍)に対して、木藍きあいと呼ばれたりもしました。

Starr 061201-1766 Indigofera suffruticosa

インド藍,Indigofera suffruticosa,Forest & Kim Starr, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons,Link

続きを読む

染色・草木染めにおける黄檗(きはだ)。黄檗の歴史と薬用効果、染色方法の一例について

黄檗きはだ(学名 Phellodendron amurense RUPR.)は日本各地の山地に自生するみかん科の落葉高木です。

幹の外皮は厚く、外皮の内側の内皮が黄色いため、古くから黄色を染める染料に使用されてきました。

飛鳥時代の染織品の中で、緑色系のものの多くは、藍染した上から黄檗きはだで染め重ねたものとされています。

Phellodendron amurense Korkowiec amurski 2019-05-24 05

黄檗,キハダ,Phellodendron amurense RUPR.,Agnieszka Kwiecień, Nova, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link

続きを読む

染色・草木染めにおける馬酔木(あせび)。歴史と馬酔木の毒性について

馬酔木あせび(学名 Pieris japonica D.don)は、ツツジ科の常緑低木で、日本固有の植物です。

属名のPierisは、ギリシャ神話の文芸、芸術、音楽をつかさどる神の名前に由来があります。

馬酔木あせびという漢字が当てられますが、中国名ではなく日本でつけられた名称です。

大体は2〜3メートルくらいの樹高ですが、大きいものだと5メートルほどにもなり、庭木としても使用されます。

3月から5月ごろ、小枝の先にスズランのような白色で、ツボ状の形をした花が密集してたくさん咲くのが特徴的です。

Pieris japonica Prelude 4zz

馬酔木,あせび,Pieris japonica,Photo by David J. Stang, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link

馬酔木あせびは、園芸品種も様々あり、薄紅色の花を咲かせるアケボノアセビ、花の穂が長いホナガアセビ、葉にまだら模様が入っているフクリンアセビなどがあり、江戸時代終わりごろから欧米などの海外でも観賞用として栽培されるようになっています。

Pieris japonica 'Katsura' Pieris japoński 2019-04-06 01

馬酔木,Agnieszka Kwiecień, Nova, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link


続きを読む

フェルトとは?不織布の代表であるフェルトの歴史と分類について

フェルト(Felt)とは、代表的な不織布として日常生活の中でも使用されており、羊毛や獣毛繊維を縮ませて作られるものです。

フェルトという言葉は、ギリシャ語のFulzen(結合させる)からきているように、羊毛の縮絨性しゅくじゅうせい(縮むこと)をはっきりと表しています。

紀元前3世紀ごろから、中央アジアの遊牧民たちは、羊毛や獣毛からフェルトを作り、カーペットや衣類などとして使用してきました。

日本においては、正倉院の御物中に、中国から渡来した花文のある毛氈もうせんが残されています。

毛氈もうせんとは、羊毛などの獣毛を原料に、延ばしたり、加熱や圧縮して織物風に仕上げたフェルト状の敷物です。

フェルトの技法は、スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国にも古くから伝わっており、フェルトの帽子や靴下など、その保温性の高さと摩擦に強いことから、広く親しまれています。

Colored felt cloth

Colored felt cloth,Bastet78, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link

続きを読む

染色・草木染めにおける杏(あんず)。薬用効果や歴史について

あんず(学名 Prunus armeniaca)は、バラ科のブンゴウメに良く似ており、春先に花が咲かせ、果実は6月下旬から7月上旬にかけて収穫されます。

日本では、東北、信州、甲州などの比較的北国での栽培が適しています。

原産地は中国北西地方や中央アジアで、中国では古代からウメやモモと共に重要な果樹、もしくは薬木やくぼくとして栽培されてきました。

Prunus armeniaca in Donetsk

杏,Prunus armeniaca,Andrew Butko, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

種を割った中に入っている杏仁きょうにんは、生薬として使用されてきました。
続きを読む

染色・草木染めにおけるロッグウッド。世界最大の需要を誇った染料、ロッグウッドの普及と衰退の歴史

ロッグウッド(学名 Haematoxylum campechianum)は、マメ科の植物で、属名のHaematoxylumは、ギリシャ語でhaima(血液)とxylon(樹木)の二語から由来し、種名のcampechianumは、原産地がメキシコ湾のカンペチェ湾(Campeche)沿岸であることから命名されています。

血木と呼ばれるのは、材木を空気に酸化させると美しい赤褐色の色が出てくるためです。

原産地は、中米などの熱帯地方で、樹高は6〜12mほどになり、幹にはドゲがあります。

小さくて黄色い花が咲き、幹の中央部の心材しんざいが染料として使用され、青紫色の色素であるヘマトキシリンが含まれています。

Haematoxylum campechianum (Campêche)

ロッグウッド,logwood,Haematoxylum campechianum,Fpalli, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

ロッグウッド(logwood)は、国によって様々な名称があり、イギリスにおいてロッグウッドという名称がはじめて文献に現れたのは、1581年のことです。

17世紀の始め頃からヨーロッパの市場では、ホンジュラスのベリーズから産出するものとユカタン半島のカンペチェから産出するものの棲み分けがされていました。

カンペチェ産のものの方が、ホンジュラス産のものに比べて品質が優れているとされていたため、名称も区別する必要があったのです。

続きを読む

染色・草木染めにおける紫草(むらさき)。染色方法の一例について

紫色を染める材料としては、古代から紫草むらさきが主に使用されてきました。

平安時代には、藍と紅花による紫色も使用されはじめ、二藍ふたあい桔楩色ききょういろなどと言われていました。

江戸時代になると蘇芳すおうによる紫色が多くなり、単にむらさき似紫にむらさきと呼ばれています。

桔楩色ききょういろは、江戸時代になると藍と蘇芳すおうによる染色になっていきます。

江戸末期から明治にかけてロッグウッドが輸入されるようになってからは、主にロッグウッドが紫色の染めに使用されるようになりました。

その他、紫系の色を染める際には、五倍子ごばいし矢車附子やしゃぶしなどが活用されました。

五倍子ごばいし矢車附子やしゃぶしは、採取してからすぐに染めると紫色と言ってもいいような色合いになります。 続きを読む

染色・草木染めにおける譲葉(ユズリハ)。薬用効果や歴史について

譲葉ユズリハ(学名 Daphniphyllum macropodum Miq.)は、本州中南部、四国、九州を中心に海から離れた内陸の山地に自生し、海外では、朝鮮半島や中国にも分布しています。

属名のDaphniphyllumは、 ギリシャ語のdaphne(月桂樹の古名)+phyllon(葉)で、月桂樹の葉のようなさまであることを意味しており、種名のmacropodumは、大脚、もしくは長脚の意味で、葉っぱが長いことに由来しています。

常緑樹で、樹高は4m〜10mほどの高さまで成長し、葉っぱは15cm〜20cmほどの大きさになり、葉の美しさから、庭木としても用いられます。

Daphniphyllum macropodum2

譲葉,Daphniphyllum macropodum,KENPEI, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

新しい葉の出る初夏の時期に、黄緑色の小さな花をつけます。雌雄異株で、受粉後には雌花は楕円形の実となり、熟すと黒味がかった藍色になります。

続きを読む