絞り染めとは、部分的に布に染まらない部分を作る防染の技術です。
布の一部を糸で強く巻き締める「巻締め」や、針と糸で布を縫い、その糸を引き締めることによって防染する「縫締め」と呼ばれるものが基本的な技法です。
巻締めの一種である鹿子絞りは、江戸時代には非常に流行したため、たびたび奢侈禁止令の対象にもなっていました。
そこで絞り染めの手間とコストを抑えるために、型染めで絞り染めを表現する工夫がなされました。
目次
型染めで絞り染めのような柄を表現する技法
型染めで絞り染めの柄を表現した理由としては、主に2点挙げられます。
①絞り染めの手間を省く
一番大きな理由としては、絞り染めの手間を省くためです。
布の全面に鹿子絞りを表現するような柄は、絞り染めの中でも特に手間がかかります。
そこで、「型鹿の子」と呼ばれるように、型染めで鹿子絞りを表現する工夫がなされていました。
絞り柄を彫った型紙を作ってしまえば、何度も同じパターン(柄)で染色することができるのです。
②型染めでしか表現できない「絞り柄」を表現する
型染めで絞り染めの柄を表現した理由の二つ目としては、絞り染めでは表現できないような「絞り柄」を型染めを用いることで表現できる点です。
絞り染めでもある程度想定した柄を出せますが、布を引き締めるため、事前に想定したような柄が出ないということは多々あります。
一方、型染めの場合は「柄として」型紙を彫るため、想定通りの模様(文様)を表現できます。
絞り染めの柄で何らかの模様(文様)を表現したり、絞り柄が交差するように模様を出すなどと、絞り染めでは出せない柄を、型染めを用いることで表現できるのです。
型染めで表現する絞り柄の特徴
型染めで絞り柄を表現する技法の特徴としては、絞り染めの良さでもある柄に表れる染液の滲みは少なく、シャープな柄となります。
また、彫り上げた型紙の大きさのパターンが繰り返されるため、一つ一つ手絞りで表現される絞りならでは味や風合いには劣るとも言えます。
明治時代以前の技術の発展と需要の拡大によって、型紙を使用した絞り風の模様は多く作られていたようです。
絞り柄に彫られた型紙のように、通常、織りの模様(文様)表現としての絣も、型染めで表現されることもありました。
江戸時代後期に生まれたとされる型染技法で、特に仙台で発達していった藍染の絣形を「常磐紺形染」と呼びます。
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絣産地がなかった東北地方においては、絣形に彫られた型紙を使用した型染を行うことで、「絣模様」を表現するという工夫がなされていました。
また、絞り染めの柄を表現した型染めと同じように、型染めで絣の模様を表現することで、同じ柄を量産することができ、模様表現の手間を大きく抑えることができました。