豆汁(ごじる),呉汁(ごじる)

染色・草木染めにおける豆汁(ごじる)の効用。豆汁(呉汁)の作り方について


染色・草木染めにおいて、大豆をすりづぶして作った豆汁ごじる呉汁ごじる)が使用されてきました。

豆汁ごじるの成分は、主に大豆タンパクとデンプン、脂肪の混合物となります。

豆汁ごじるは、大豆タンパクで、絵具や顔料を定着させるために活用されます。

卵白らんぱくや牛乳などは、豆汁ごじると同じようにタンパク質による接着剤、凝固剤としての役割をします。

染色・草木染めにおける豆汁(ごじる)の効用

豆汁(ごじる),呉汁(ごじる)

豆汁(ごじる),呉汁(ごじる)

植物性のタンパク質としては、大豆から作る豆汁ごじるがもっとも有用とされます。

色素を定着させるために、古くから豆汁ごじるは染色に使用されてきました。

特に、顔料を定着させるのに非常に有用な助剤の役割を果たしています。

豆汁のメリット(利点)

豆汁ごじるを使用するメリット(利点)としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 濃厚な豆汁ごじるを使用することで、顔料を定着させられる
  2. 和紙に扱う際、和紙の全面に薄く豆汁ごじる刷毛はけ引きすると、和紙を水洗いする場合の補強となり、無地場の染めムラを防止する
  3. 木綿や絹(シルク)を型染めする場合、色のにじみを防ぐ
  4. 酸性染料の固着に役立ち、染料の吸収を良くする
  5. 刷毛はけ染の場合、刷毛はけの跡が出るのを防止するのに効果的

豆汁のデメリット(欠点)

豆汁ごじるを使用するでデメリット(欠点)としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 柔らかい布地の手触りを硬くして、風合いを損ねる
  2. 染めの色合いが変化する(くすんだり、黒っぽくなる)
  3. 豆汁はアルカリに弱く、洗いの際のアルカリ処理で豆汁は簡単に溶けて落ちるため、アルカリで洗う染料には使用しない

豆汁ごじるがただ乾燥しただけのものは、水で簡単に溶けてしまうため、何もしない場合は、2〜3日放置し酸化させることによる硬化を待つのは大事な点です。

地入れして2〜3日経った後から染色を始めるのが理想で、地入れしてあまり放置しすぎるのも、硬化が進み、染液の進入を防止するようになります。

豆汁ごじるは、豆腐が苦汁にがりで固まるように、例えば和紙に型絵染かたえぞめする場合も、豆汁ごじる顔料で染色したあと、乾燥させ、明礬液みょうばんえき(1%〜2%ほど)を刷毛はけ引きすると、豆汁ごじるが硬化されます。

そのため、2〜3日放置しなくとも乾燥したら水洗いをし、型染めで使用したのりを落とすこともできるのです。

豆汁(呉汁)の作り方

豆汁ごじるの作り方や分量について、これといったルールはありませんがポイントはいくつかあります。

まず、大豆をミキサー、またはすり鉢で水と共にすり潰す前に、大豆がつぶれやすくなるように水でふやかしておく必要があります。

例えば、25℃の室温で8時間〜10時間、18℃の室温で12時間ほど放置し、豆の内部に少しだけ硬い部分が残るくらいが適当です。

大豆100gに対して、500ccくらいの水でふやかすくらいでも問題ないでしょう。

すり鉢で潰すのは大変なため、ミキサーで回した方が早くて楽で、綺麗に大豆を砕けます。

ミキサーで豆汁を作る

ミキサーで豆汁ごじるを作る手順としては、以下のような流れになります。

豆汁ごじるの濃度をどれくらいにしたいかによって、水で薄める程度が変わってきます。

①水でふやかした大豆をミキサーの容量の4割くらいところまで入れ、次に水をミキサーの容量の6割くらいまで入れる

②大豆が砕ける音が変わるまで約2分間くらいミキサーを回す(最初はガリガリ音がしてミキサーが回っていたのが、大豆が砕けてあまり音がしなくなるくらい)

③ミキサーから液があふれない程度の上の方まで追加で水をいれ、約1分間再度ミキサーを回す

④例えば、1袋250gの大豆を全て豆汁ごじるにする場合、1000ccの容量を持つミキサーで③の作業を3回程度行えば、すべての大豆がミキサーで砕ける

⑤しっかりとミキサーで大豆を砕いた液を、バケツなどの容器にいれて、大豆のカスが容器の底に沈殿ちんでんするまで1時間ほど待つ

⑥空のバケツ上部に布を引いてヒモでしっかりと縛って布を固定して、液をす準備をしておく

⑦1時間ほど経過し、余分な浮遊物のカスが沈殿ちんでんしたら、上澄みを静かにすくって、⑥のバケツに入れて少しずつしていく

上記の手順で、豆汁ごじるは作れますが、さらに薄い豆汁ごじるが必要であれば、上澄うわずみを取り終わった後の沈澱した部分に水を加えてしっかり混ぜ、再度沈澱するのを待ってからしていく

豆汁ごじるの保存できる期間は、冷蔵庫で行うと2〜3日程度の保存が効きます。

常温で気温が暑ければ暑いほど、ダメになってしまう(豆汁ごじる自体が分離したり、腐ってしまう)スピードが早くなります。

消石灰を少量加えておくと、いくらか保存が良くなり、豆汁ごじる上澄うわずみとかたまり部分の分離が起きにくくなります。

【参考文献】『月刊染織α1985年No.55』


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