イラクサ(蕁麻)で織られた麻織物

麻(苧麻)を原料とした平織物である貲布(さよみ)

奈良時代に織られた布の一種で、麻(苧麻ちょまを原料とした平織物に「貲布さよみ」と呼ばれるものがありました。

古くは植物繊維を原料とした平織の布の中でも最も上質で、糸は細く、太さも整い、薄く軽やかなものを表したとされますが、後世にはあらく織った麻布を意味するようになりました。 続きを読む

染色における忍摺り(しのぶずり)・忍文字摺(しのぶもじずり)

染色のはじまりというようなものは、世界中のどの国においても、目の前になる色を持っている植物やその花、木や草の果実、色のある土などを用いて、布やそのほかのものにすりりつけて染めたことから始まったと考えられます。

摺染すりぞめ」とは、草木の花や葉を布の上からたたいて色を染めたり、花や葉の汁をすりりつけて染めることを表します。

露草つゆくさ(つきくさ)」や「鶏頭けいとう(からあい)」や、「燕子花かきつばた」や「はぎ」なども、古くから摺染すりぞめに用いられていたとされます。

「忍(しのぶ)」の葉を用いた「忍摺り」や「山藍やまあい」の葉を使用した摺染すりぞめは、よく知られています。 続きを読む

【ウールの黄ばみの原因】黄ばんだウールの洗濯方法と、黄色の変色とカビをできる限り防ぐ方法

ウールは日光に当たったり、酸化さんかによって、次第に黄色味を帯びてきます。

もちろん黄ばみに関しては、ウールだけではなく、コットンやシルク、ナイロンやポリエステルなどさまざまな繊維に対して発生します。

ウール糸のストック,Stock of wool

ウール糸のストック,Stock of wool ,Lauchap, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

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ポリエステル65%,綿35%,混紡,特徴,黄金比率(黄金ブレンド)

綿とポリエステルを混紡した黄金ブレンド(黄金比率)。ポリエステル65%綿35%の素材的特徴、長所と短所について

綿(cotton)とポリエステル(polyester)は、さまざまな用途で使われています。

綿は、肌に触れる下着やインナー、タオルなど実用的に使える場面は数知れません。

綿は、その肌ざわりの良さは言うまでもありませんが、他の繊維と比較しても綿は万能な繊維として知られています。

綿の特徴としては、化学繊維のポリエステル(polyester)やナイロン(nylon)といった繊維よりは、糸そのものの強度は劣り、シワになりやすかったり縮みやすいという点もあります。

ポリエステルの特徴としては、シワになりにくく、水にれても乾きやすい点などが挙げられます。 続きを読む

絣柄に彫られた伊勢型紙,絣型染(かすりかたぞめ)

型染めで絣模様を表現する絣型染(かすりかたぞめ)・常磐紺形染(ときわこんがたぞめ)。絣形に彫られた型紙を使用した型染め技法について

現在の福岡県の久留米における久留米絣くるめがすりや愛媛県の伊予絣いよがすりなど、絣織物の産地が日本各地にありました。

糸をヒモで括って部分的に防染した絣糸かすりいとを用い、織りによって絣の模様(文様)を表現するのが通常の絣の織物です。

織りで模様(文様)が表現された一般的な絣(絵絣),松竹梅文

織りで模様(文様)が表現された一般的な絣(絵絣),松竹梅文

ただ、絣産地がなかった東北地方においては、絣形に彫られた型紙を使用した型染めを行うことで、「絣模様」を表現するという工夫がされていました。 続きを読む

デザインにおける鹿文(しかもん)

鹿は古くから人間と関わりが深かったため、文様(模様)表現として活用された歴史も非常に古いです。

中国大陸最古の王朝であるいんの時代から、鹿頭の飾りが用いられたり、中国神話に現れる伝説上の動物である麒麟きりんのモチーフにもなっています。

日本においても弥生時代に製造された青銅器である銅鐸どうたくのなかに、鹿の模様(鹿文しかもん)が描かれているものがあることから、その当時から関わりがあったことを示しています。 続きを読む

シーアイランドコットン(海島綿)の特徴について

木綿の原産地は、インドと言われています。

インドのパンジャブ地方は、古くから織物の技術の世界的な源であり、ヒマラヤを源流としインド洋に注ぐインダス川流域の文化とともに世界中へ広がっていきました。

紀元前1世紀頃の古代ローマでは、人々はすでに綿の布を身にまとっていたようです。

日本に木綿が入ってきたのは1200年ごろの鎌倉時代初期、中国から綿が持ち込まれており、その後に種子が伝わり、三河や遠江、大和、摂津、河内、和泉などが産地となりました。

17世紀前半ごろの江戸時代の早い時期には、幕府が栽培を問題視しなくてはならないくらいには、木綿栽培が全国各地で広がっていたのではないかと考えれています。

木綿が大陸から入ってくる以前は、麻が庶民の日常着でしたが、木綿の経済性や機能性の良さによって、江戸時代には木綿が庶民の日常着になっていくのです。

その後、明治時代の産業の近代化の波に飲まれ、国内の綿栽培は急速に衰退していきます。

綿を巡る歴史は、世界中数え切れないほどありますが、西インド諸島で栽培されていたシーアイランド・コットン(海島綿かいとうめん)とコロンブスの話があります。 続きを読む