人類最古の繊維である麻の種類や性質、歴史。日本の麻栽培地と主要な麻織物産地。


人類にとって、繊維の中でも麻との関わりが最も古くからあると言われます。

紀元前約1万年前の新石器時代の遺跡から、麻織物が出土しています。

また、紀元前の古代エジプトのミイラは、麻の布で包んでありました。

人類最古の繊維、麻の歴史

麻類は、地球上のあらゆるところで自生し、その種類も多いため、起源を決めるのはむずかしいとされています。

一説によれば、原産地はロシアのコーカサス地方から中近東とされており、アーリア人(インド・ヨーロッパ語族に属している民族のうち、中央アジアからインドやイランに移動し、定住した民族)によって、東西に伝わっていったとされます。

紀元前2千年〜3千年にはエジプトでは、すでに麻が栽培されており、紀元前2世紀のローマ時代からヨーロッパ中部へ伝わっていきました。

11世紀には、ドイツやフランスに麻織物の技術が伝わっていき、14世紀にはイギリスに同業の組合ができたほど、麻が一つの産業として発達していました。

アメリカへ伝わったのは、17世紀頃のことです。

日本における麻の歴史

日本においては、約1300年前の正倉院御物(ぎょぶつ=皇室の私有品)の衣服に、上布(じょうふ)と呼ばれる麻織物が多くみられます。

縄文土器の中から、麻やヤシ科の植物である棕梠(しゅろ)が発見されているので、4千年から5千年前から麻が使われていたことがわかります。

江戸時代以前、木綿が大陸からやってくる前は、日本において苧麻(からむし)を原料にした布が、一般的に生産されていました。

関連記事:日本の綿花栽培・木綿生産が普及した歴史。苧麻が、木綿に取って代わられた理由。

戦国時代から江戸初期にかけて、木綿が爆発的な普及したとされますが、麻も庶民の夏の普段着として変わらずに重用されていたに違いありません。

麻の種類

麻は、非常に種類が多いことで知られており、植物の種類は60種類以上をこえます。

繊維の採取の仕方、繊維の硬さによって、軟質繊維(軟質麻)と硬質繊維(硬質麻)の大きく2つに分けることができます。

代表的な亜麻や(繊維をフラックスと呼び、糸や布をリネンと呼んでるもの)、苧麻(ラミー、からむし、シナ麻)、大麻(ヘンプ)、黄麻(ジュート)、洋麻(ケナフ)、莔麻(インディアンマロー、青麻)などのような、茎の内側の靭皮(樹木の外皮のすぐ内側にある柔らかな部分)から採取する軟質繊維。

マニラ麻(アバカ、マニラヘンプ)、サイザル麻、ニュージーランド麻(マオラン麻)などのように、葉脈から採取する硬質繊維に分けられます。

家庭用品品質表示法により、衣類のタグに「麻」と表記できるのは、麻から作られる繊維のリネンと苧麻の繊維であるラミーのみで、大麻(ヘンプ)は含まれていません。

ちなみに、大麻繊維は「指定外繊維(大麻)」や「指定外繊維(ヘンプ)」などと表記されます

代表的な麻植物

亜麻(あま)

亜麻は、草丈約1mの1年草です。

亜麻の繊維は、細くて短めですが、非常にしなやかで、木綿に近い風合いを持ち、黄色がかった薄茶色(亜麻色)です。

世界各地で重用されている麻の織物のほとんどが亜麻のリネンで、リネンは冬の寒さが厳しい地域でも生育します。

ベルギーは古くからリネンの名産地で、「ベルギーリネン」という言葉は一度は聞いたことがあるかもしれません。

アイルランドは、世界一の品質と伝統を持つ「アイリッシュリネン」の生産地として知られていました。

ロシアやフランス、中国も古くから亜麻の産地です。

苧麻(ちょま)

苧麻は、草丈が約2〜4mの多年草で、繊維が長く、麻特有のシャリ感が非常に強く、しなやかで、シルクのような光沢感があります。

吸水性と放湿性(吸収した水分を放出する性能)が麻の中でもっとも優れ、素晴らしいひっぱり強さ(繊維が切れるに至るまでの最大の力)を持っています。

福島県の昭和村は、古くから苧麻の産地で現在でも、栽培が続けられています。中国、フィリピン、ブラジルが苧麻の主産地として知られています。

黄麻(こうま)

黄麻は、草丈が1.5m〜3mの一年草で、繊維が細く、強度が強くないので、衣類には向かず、布袋やカーペットの裏地、バッグの素材などに使用されています。

手触りはザラザラとしていて、硬く感じます。

インドやバングラディッシュが、主な主産地です。

麻繊維の性質

主成分は、綿と同じセルロースですが、短い繊維が互いに密着した構造で、それぞれの繊維がルーメンと呼ばれる中空構造(ストローの空洞のようなイメージ)になっています。

麻の繊維は、水に濡れた場合の膨潤度(液体を吸収し、体積が膨れ上がる事)が、綿繊維と比べると低いです。

繊維が濡れた場合には、乾いている時よりも若干強度が強くなります。

麻の織物としての特徴としては、ひっぱりや摩擦に強く、吸水性はしっかりあるのに乾きやすいので肌に涼しさを与えます。

感触が硬く、伸び縮みしづらく、シワが比較的寄りやすいのは、麻をうまく扱う上では考慮にいれなければいけない点です。

日本の麻栽培地と主要な麻織物産地

日本においても、麻を栽培している地域が今でも残っており、古くから麻織物の産地として有名な土地がありました。

麻栽培地

苧麻・・・福島、沖縄

大麻・・・宮城、福島、栃木、群馬

麻織物産地

宮城・・・栗駒麻布
山形・・・関川麻布
福島・・・昭和麻布、会津からむし、大芦からむし
新潟・・・越後上布、小千谷ちぢみ
栃木・・・鹿沼麻
群馬・・・岩島麻
長野・・・尋麻布
富山・・・福光麻布
石川・・・能登上布、能登ちぢみ
滋賀・・・近江上布、近江ちぢみ、近江蚊帳、甲津原麻布
奈良・・・奈良晒、月ヶ瀬御料麻布
沖縄・・・宮古上布、宮古麻、八重山上布、八重山交布、八重山麻布 引用:『21世紀へ、繊維がおもしろい』

上記に記した麻織物で有名だった産地も、今では見る影もないところもありますが、まだまだその伝統を守っている土地と歴史を受け継いでいる人々がいます。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です