色合い」カテゴリーアーカイブ

蓮(はす)で染め色の例

染色・草木染めにおける蓮(はす)

はす(学名Nelumbo nucifera)は、ハス科ハス属の耐寒性たいかんせい落葉多年草らくようたねんそうの水生植物です。

インドやその周辺地域が原産地とされ、世界中の熱帯や温帯地域の蓮田はすだ、泥沼、池、水田で栽培されています。

蓮(はす),Nelumbo nucifera

蓮(はす),Nelumbo nucifera,Shin-改, Public domain, via Wikimedia Commons,Link

英名ではロータス(Lotus)と呼ばれ、大きな葉を乾燥させたものは漢方薬の「荷葉かよう」の原料となります。

地下茎ちかけいは、泥の中をうように延び、秋の終わりに地下茎ちかけいの先が太ってレンコン(蓮根れんこん)ができます。

花は、7月〜8月に咲き、多数の花弁が重なり合い、桃色や白色の花をつけます。

花が散ったあと、花床かしょうは大きくなり、蜂の巣のような穴の中に果実をつけます。 続きを読む

染色・草木染めにおけるガマズミ

ガマズミ(学名Viburnum dilatatum)は、レンプクソウ科(スイカズラ科)ガマズミ属で樹高が2〜3mになる落葉樹で、日本各地で自生しています。

Viburnumはラテン語でガマズミの古名に由来するといわれ、dilatatumは「広がった」の意味があり、葉っぱの形に由来します。

江戸時代の薬物についての知識をまとめた本(本草書ほんぞうしょ)には、ガマズミの漢字は、「莢蒾がまずみ」と記載されています。

莢蒾がまずみさやは「豆類の種子を包む殻」を表し、「ずみ」は「染め」を意味します。 続きを読む

露草(つゆくさ),蛍草(ほたるぐさ),Dayflower

染色・草木染めにおける摺り染め(すりぞめ)。摺り染めと花摺り(はなすり)の染色方法について

日本の古代の人々は、草木が成長し花が咲き、果実が実るのは、草木に宿る精霊せいれい木霊こだま)の力であると信じ、草木からとれる自然の色で、衣服を染めつけていました。

強い精霊の宿るとされる草木は、薬用として使用され、薬草に宿る霊能が、病気という悪霊によって引きおこされた病状や苦痛を人体から取り除き、悪霊をしりぞける作用があるとされていたのです。

日本の染色技術が飛躍的に発展するのは、4世紀ごろに草花から染料を抽出し、これを染め液として、浸して染める「浸染しんせん」の技術が中国から伝わってきてからとされます。

もっとも原始的な染色方法に、植物を生地に直接こすりつけて色を染め付ける「摺り染めすりぞめ」があります。 続きを読む

露草(つゆくさ),蛍草(ほたるぐさ),Dayflower

青花(あおばな)とは?露草(つゆくさ)を原料にした青の染め色について

浮世絵版画において、特徴的な色として露草つゆくさを原料にした青があります。

露草つゆくさは、夏の暑い時期に青い花を咲かすツユクサ科の一年草です。

別名を、月草つきくさ蛍草ほたるぐさなどともいいます。

英語名では、「Dayflower」と表記し、花が咲いてからわずかな時間でしぼんでしまうという特徴が名前からもよくわかります。

古くから日本では、この露草つゆくさを原料にした青色が使用されていました。
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縅(おどし)とは?甲冑(かっちゅう)において、小札を革紐や組紐などで繋ぎとじたもの

おどし(威)とは、戦いのとき身を守るために着用する武具である甲冑かっちゅうにおいて、小札こざねを革紐や組紐くみひもなどで繋ぎじたものです。

小札こざね縅毛おどしげ(小札をじ付けるために用いられた組紐や革)でじ付ける動作のことを、「おどす」と言います。

小札こざねとは、甲冑かっちゅうよろい)を構成するあらゆる場所に用いる重要な構成要素で、一般的には革または鉄板金を素材とし、形は、名前の通り小さい短冊形たんざくがたです。

小札こざねを横方向に革紐で繋ぎ、仕上げにうるしを何層にも塗ることで、堅牢けんろうなな「小札の板」となります。 続きを読む

葡萄色(えびいろ)

染色・草木染めにおける葡萄染(えびぞめ)。葡萄蔓(えびづる)を利用した染色方法について

日本の色名に、ヤマブドウの実が熟したような赤紫色のことを表す、葡萄色えびいろがあります。

葡萄えびは、甲殻類の海老えびではなく、果物のブドウのことです。

紫色を染める植物といえば、紫草むらさきが知られますが、今回は蝦蔓えびずる(えびかずら)を使用した、葡萄色えびいろについて紹介していきます。
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染色・草木染めをやる上で注意点や大切な心構え『染色の口伝』

本書は、古代の人々の心の遺産とも言うべき日本民族本来の、色彩と染を研究し、現在の多くの人々に、古代から伝承されて来た色彩の実態についての理解を得ようとするために執筆したものである。

前田雨城氏の著書、『日本古代の色彩と染』のまえがきには、上記の言葉があります。

この本は、なかなか安く出回っていないのですが、前田氏の集めてきた知識と実際の経験からの得た色について学べ、日本の古代における染色やその歴史について興味のある方にとっては読む価値が十二分にある本と言えます。 続きを読む