素材」カテゴリーアーカイブ

イラクサ(蕁麻)で織られた麻織物

麻(苧麻)を原料とした平織物である貲布(さよみ)

奈良時代に織られた布の一種で、麻(苧麻ちょまを原料とした平織物に「貲布さよみ」と呼ばれるものがありました。

古くは植物繊維を原料とした平織の布の中でも最も上質で、糸は細く、太さも整い、薄く軽やかなものを表したとされますが、後世にはあらく織った麻布を意味するようになりました。 続きを読む

【ウールの黄ばみの原因】黄ばんだウールの洗濯方法と、黄色の変色とカビをできる限り防ぐ方法

ウールは日光に当たったり、酸化さんかによって、次第に黄色味を帯びてきます。

もちろん黄ばみに関しては、ウールだけではなく、コットンやシルク、ナイロンやポリエステルなどさまざまな繊維に対して発生します。

ウール糸のストック,Stock of wool

ウール糸のストック,Stock of wool ,Lauchap, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

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ポリエステル65%,綿35%,混紡,特徴,黄金比率(黄金ブレンド)

綿とポリエステルを混紡した黄金ブレンド(黄金比率)。ポリエステル65%綿35%の素材的特徴、長所と短所について

綿(cotton)とポリエステル(polyester)は、さまざまな用途で使われています。

綿は、肌に触れる下着やインナー、タオルなど実用的に使える場面は数知れません。

綿は、その肌ざわりの良さは言うまでもありませんが、他の繊維と比較しても綿は万能な繊維として知られています。

綿の特徴としては、化学繊維のポリエステル(polyester)やナイロン(nylon)といった繊維よりは、糸そのものの強度は劣り、シワになりやすかったり縮みやすいという点もあります。

ポリエステルの特徴としては、シワになりにくく、水にれても乾きやすい点などが挙げられます。 続きを読む

シーアイランドコットン(海島綿)の特徴について

木綿の原産地は、インドと言われています。

インドのパンジャブ地方は、古くから織物の技術の世界的な源であり、ヒマラヤを源流としインド洋に注ぐインダス川流域の文化とともに世界中へ広がっていきました。

紀元前1世紀頃の古代ローマでは、人々はすでに綿の布を身にまとっていたようです。

日本に木綿が入ってきたのは1200年ごろの鎌倉時代初期、中国から綿が持ち込まれており、その後に種子が伝わり、三河や遠江、大和、摂津、河内、和泉などが産地となりました。

17世紀前半ごろの江戸時代の早い時期には、幕府が栽培を問題視しなくてはならないくらいには、木綿栽培が全国各地で広がっていたのではないかと考えれています。

木綿が大陸から入ってくる以前は、麻が庶民の日常着でしたが、木綿の経済性や機能性の良さによって、江戸時代には木綿が庶民の日常着になっていくのです。

その後、明治時代の産業の近代化の波に飲まれ、国内の綿栽培は急速に衰退していきます。

綿を巡る歴史は、世界中数え切れないほどありますが、西インド諸島で栽培されていたシーアイランド・コットン(海島綿かいとうめん)とコロンブスの話があります。

シーアイランドコットン(海島綿)の特徴

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cotton,綿花,Raffi Kojian, CC BY-SA 3.0via Wikimedia Commons,Link

シーアイランドコットンは、日本では「海島綿かいとうめん」などとも呼ばれます。

シーアイランドコットン(Seaisland Cotton)という名前は、西インド諸島で栽培されていた綿花の品種を、北米南部のカロライナやジョージアなどの高温多湿の地に移植し、特に海岸や島で生育されていたことに由来します。

綿花は、種類によって採れる繊維の長さに違が出てきます。

大きく分類すると、エジプト綿やスーダン綿の系統は超長繊維綿ちょうちょうせんいめんで、アメリカ綿に代表されるアンプラント綿は中長繊維綿、アジア在来種のデシ綿は短繊維綿に分けられます。

綿の繊維の長さは、糸にするときに、その糸の細さに大きく関係し、綿の繊維が長いほど糸も細くなり、それによって手触りもなめらかで、糸にすると光の反射率が高いため、光沢感が生まれます。

シーアイランドコットン(海島綿かいとうめん)は、超長綿ちょうちょうめんであり、繊維が長く、一本の長さは3.8cm〜5cmほどにもなります。

糸の紡績ぼうせきに必要な天然のを多くもち、弾力に富むという特徴を持っています。

コロンブスが出会ったシーアイランドコットン

15世紀半ばから17世紀半ば頃までの大航海時代において、キリスト教世界の白人としては最初にアメリカ海域へ到達したとされていた探検家のコロンブスです。

彼が、1492年のアメリカ発見となる航海をおこなった時に、シーアイランドコットン(海島綿かいとうめん)に出会いました。

1492年コロンブスがアメリカ発見となる航海をしたときに、彼は未開の島だと思っていたカリブ海に浮かぶ小島バハマで、原住民から絹のような光沢をした見事な綿糸を進呈されました。

コロンブスは、彼らがしなやかでやわらかい感触の立派な綿布を使用していたことに驚いたといいます。

これが現在でも世界最高級といわれる、シーアイランドコットン(海島綿かいとうめん)だったのです。

西インド諸島の六つの島で栽培され、繊維の宝石とまで言われるような価値のある綿として、イギリスの王室や貴族の間で古くから珍重されたり、古代ペルーの奥地で栄えたインカ帝国の遺跡からも、多くの海島綿かいとうめんの糸や布が発見されているようです。

1533年にインカ帝国が滅亡したとされているので、それ以前には綿を糸にする技術や織物の技術が伝わっていたのです。

現代でも海島綿かいとうめんが品種改良されたものが、良質な超長綿ちょうちょうめんとして栽培されており、海島綿かいとうめんも西インド諸島の一部地域で栽培されています。

イラクサ(蕁麻)で織られた麻織物

日本の綿花栽培・木綿生産が普及した歴史。苧麻が、木綿に取って代わられた理由

江戸時代に流通した主な商品は、米を抜きにして考えると、木綿・菜種・干鰯ほしか・酒・材木・などが上位を占めました。

江戸時代以前、木綿が大陸からやってきて広がっていくまでは、日本においてイラクサ科の多年草木である苧麻からむし(学名 Boehmeria nivea var. nipononivea)を原料にした布が一般的に生産されていました。

木綿は、戦国時代から江戸初期にかけて、爆発的に普及したとされています。
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ウール(羊毛)の特徴と素材の特性。ウール(羊毛)はなぜ縮むのか?

ウール(羊毛ようもう)は、家畜として飼育されている羊の毛を言い表します。

国際的な商取引では羊毛に限って「ウール(wool)」と呼んでおり、他の獣毛じゅうもう繊維を「ヘア(hair)」と呼んで区別しています。

品質表示において「毛」と表記する場合は、すべての獣毛じゅうもうに適応できます。

高級品であること示すために、カシミヤ(cashmere)モヘア、アンゴラなどとそれぞれ表記できる場合もあります。

Wilderness Road - Sheep for wool (7047953945)

Sheep for wool,Virginia State Parks staff, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons,Link

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生機(原反)加工の流れ。精錬、毛焼き、糊抜き、漂白等。P下、下晒し生地について

織り機や編み機で加工し、出来上がったばかりの生地のことを、「生機きばた」や「原反」げんたんといいます。

織り上がった生地をそのまま未加工で使用する場合もありますが、油脂ゆしや繊維のカスなどの不純物が混在していることが多いため、基本的には加工してから商品として出荷されます。

倉敷帆布を織るシャトル織機の様子

倉敷帆布を織るシャトル織機の様子,Baistone, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

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藍染された糸

糸の撚りの強さは品質にどのように影響するか?撚糸(ねんし)における甘撚り糸(あまよりいと)と強撚糸(きょうねんし)の特徴について

1本の糸をつくるためには、1本から複数の糸をねじりあわせることでりをかける作業が必要です。

り」とは、糸をねじり合わせることを意味し「撚糸ねんし」という言葉は、「りをかけた糸」を表します。

糸をることで、丈夫な1本の糸をつくることができるのです。

糸のりについて考えるのは非常に重要で、なぜなら糸のり方によって、糸の強度、肌ざわりや風合いに大きく影響するためです。 続きを読む

インド更紗

インドの綿織物であるキャラコ(calico)。ヨーロッパを魅了したキャラコと産業革命との深い繋がり

インドにおけるキャラコ(calico)と呼ばれた平織りの綿織物が、17世紀終わり頃からヨーロッパに伝わり、人々を魅了しました。

キャラコは、カーテンやシーツ、そして肌着等にも適していました。

もともと、ヨーロッパには綿花の栽培と綿工業がなかったため、インドからやってきた綿織物が、人気を博すのは必然でした。

人々に愛されたキャラコですが、歴史をたどってみると、イギリスの産業革命とその背景にあった悲しい歴史がみえてきます。

更紗の断片 (インド)、18 世紀後半,,Chintz Fragments (India), late 18th century (CH 18481741)

更紗の断片 (インド)、18 世紀後半,Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum, Public domain, via Wikimedia Commons,Link

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