奈良時代に織られた布の一種で、麻(苧麻)を原料とした平織物に「貲布」と呼ばれるものがありました。
古くは植物繊維を原料とした平織の布の中でも最も上質で、糸は細く、太さも整い、薄く軽やかなものを表したとされますが、後世には粗く織った麻布を意味するようになりました。 続きを読む
木綿の原産地は、インドと言われています。
インドのパンジャブ地方は、古くから織物の技術の世界的な源であり、ヒマラヤを源流としインド洋に注ぐインダス川流域の文化とともに世界中へ広がっていきました。
紀元前1世紀頃の古代ローマでは、人々はすでに綿の布を身にまとっていたようです。
日本に木綿が入ってきたのは1200年ごろの鎌倉時代初期、中国から綿が持ち込まれており、その後に種子が伝わり、三河や遠江、大和、摂津、河内、和泉などが産地となりました。
17世紀前半ごろの江戸時代の早い時期には、幕府が栽培を問題視しなくてはならないくらいには、木綿栽培が全国各地で広がっていたのではないかと考えれています。
木綿が大陸から入ってくる以前は、麻が庶民の日常着でしたが、木綿の経済性や機能性の良さによって、江戸時代には木綿が庶民の日常着になっていくのです。
その後、明治時代の産業の近代化の波に飲まれ、国内の綿栽培は急速に衰退していきます。
綿を巡る歴史は、世界中数え切れないほどありますが、西インド諸島で栽培されていたシーアイランド・コットン(海島綿)とコロンブスの話があります。
cotton,綿花,Raffi Kojian, CC BY-SA 3.0via Wikimedia Commons,Link
シーアイランドコットンは、日本では「海島綿」などとも呼ばれます。
シーアイランドコットン(Seaisland Cotton)という名前は、西インド諸島で栽培されていた綿花の品種を、北米南部のカロライナやジョージアなどの高温多湿の地に移植し、特に海岸や島で生育されていたことに由来します。
綿花は、種類によって採れる繊維の長さに違が出てきます。
大きく分類すると、エジプト綿やスーダン綿の系統は超長繊維綿で、アメリカ綿に代表されるアンプラント綿は中長繊維綿、アジア在来種のデシ綿は短繊維綿に分けられます。
綿の繊維の長さは、糸にするときに、その糸の細さに大きく関係し、綿の繊維が長いほど糸も細くなり、それによって手触りもなめらかで、糸にすると光の反射率が高いため、光沢感が生まれます。
シーアイランドコットン(海島綿)は、超長綿であり、繊維が長く、一本の長さは3.8cm〜5cmほどにもなります。
糸の紡績に必要な天然の撚りを多くもち、弾力に富むという特徴を持っています。
15世紀半ばから17世紀半ば頃までの大航海時代において、キリスト教世界の白人としては最初にアメリカ海域へ到達したとされていた探検家のコロンブスです。
彼が、1492年のアメリカ発見となる航海をおこなった時に、シーアイランドコットン(海島綿)に出会いました。
1492年コロンブスがアメリカ発見となる航海をしたときに、彼は未開の島だと思っていたカリブ海に浮かぶ小島バハマで、原住民から絹のような光沢をした見事な綿糸を進呈されました。
コロンブスは、彼らがしなやかでやわらかい感触の立派な綿布を使用していたことに驚いたといいます。
これが現在でも世界最高級といわれる、シーアイランドコットン(海島綿)だったのです。
西インド諸島の六つの島で栽培され、繊維の宝石とまで言われるような価値のある綿として、イギリスの王室や貴族の間で古くから珍重されたり、古代ペルーの奥地で栄えたインカ帝国の遺跡からも、多くの海島綿の糸や布が発見されているようです。
1533年にインカ帝国が滅亡したとされているので、それ以前には綿を糸にする技術や織物の技術が伝わっていたのです。
現代でも海島綿が品種改良されたものが、良質な超長綿として栽培されており、海島綿も西インド諸島の一部地域で栽培されています。
ほとんどすべての繊維は、「ポリマー」と呼ばれる高分子物質で構成されています。
合成された高分子化合物から造った繊維を、「合成繊維(英:synthetic fiber)」と言います。 続きを読む
ウール(羊毛)は、家畜として飼育されている羊の毛を言い表します。
国際的な商取引では羊毛に限って「ウール(wool)」と呼んでおり、他の獣毛繊維を「ヘア(hair)」と呼んで区別しています。
品質表示において「毛」と表記する場合は、すべての獣毛に適応できます。
高級品であること示すために、カシミヤ(cashmere)やモヘア、アンゴラなどとそれぞれ表記できる場合もあります。
Sheep for wool,Virginia State Parks staff, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons,Link
1本の糸をつくるためには、1本から複数の糸をねじりあわせることで撚りをかける作業が必要です。
「撚り」とは、糸をねじり合わせることを意味し「撚糸」という言葉は、「撚りをかけた糸」を表します。
糸を撚ることで、丈夫な1本の糸をつくることができるのです。
糸の撚りについて考えるのは非常に重要で、なぜなら糸の撚り方によって、糸の強度、肌ざわりや風合いに大きく影響するためです。 続きを読む
インドにおけるキャラコ(calico)と呼ばれた平織りの綿織物が、17世紀終わり頃からヨーロッパに伝わり、人々を魅了しました。
キャラコは、カーテンやシーツ、そして肌着等にも適していました。
もともと、ヨーロッパには綿花の栽培と綿工業がなかったため、インドからやってきた綿織物が、人気を博すのは必然でした。
人々に愛されたキャラコですが、歴史をたどってみると、イギリスの産業革命とその背景にあった悲しい歴史がみえてきます。
更紗の断片 (インド)、18 世紀後半,Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum, Public domain, via Wikimedia Commons,Link