黄八丈とは?黄・樺・黒の三色の色糸の縞模様を織り出す絹織物


黄八丈きはちじょうとは、主に草木染めで染められた黄色・樺色かばいろ・黒色の三色の糸を使って、さまざまな縞模様を織り出す絹織物のことです。

全体的に渋く味わいのある色合いであるため、絹織物らしい光沢感は抑えられます。

染色の工程で、乾燥のために長い日数を八丈島の強い直射日光にさらすため、堅牢度が良く変色したり退色しづらい特徴があります。

黄八丈は、たくさん使われ、洗われることで、年を経るにつれて、より一層色合いが冴えてくるともいわれたりします。

黄八丈を構成する3種の色糸

黄染

黄色を染める染料として、苅安かりやすやこぶなぐさを用います。

苅安

苅安かりやすは、イネ科に属する一年草で、秋口に穂の出かかったころをみて刈り取り、夜露に当てないようにして乾燥し、貯蔵して使用します。

刈り取りの時期が早すぎると青味がかった黄色になり、遅れると赤味がかった黄色になります。

こぶなぐさ

こぶなぐさは、大きく束ねて釜の中に入れ、浮き上げらないように抑えながら、煎じます。

火加減は、はじめは強火で、煮立った段階で少しづつ火力を落としていきます。

抽出した煎汁を、染めるためのおけに入れて、糸を浸けて絞って天日で乾燥させてを繰り返して濃くしていきます。

染めを繰り返していくと、黄土色になります。

仕上げに木灰の上澄み液である灰汁に浸け、しばらく放置してから絞って乾燥させると、山吹色やまぶきいろに変わっていきます。

灰汁につけるのは、一回限りでつけ直しはしないため、黄染めの出来の良し悪しは、一回の灰汁付けで決まるとも言われていたようです。

灰汁に使用する灰は、椿灰つばきばい4割、さかき6割の割合で、生葉を小枝のまま切り混ぜながら、積み上げて燃やして作ります。

良い灰汁は、舐めると甘苦いともいわれます。

樺染

樺染かばぞめは、「たぶのき」や「まだみ」の生皮を使用します。

たぶのきは、くすのき科で高さ15mほどに達します。

たぶのきの皮を剥いで、しばらく置いておくと樹液が酸化して色が変わってきます。

この時に赤くなるものを「くろた」といい、赤くならないものを「しろた」と言います。

染料としては、赤くなる「くろた」がよく、樹齢は30年以上ものとされます。

染料に用いる樹皮は、むきたてのものがよく、日が経つと色が悪くなってきます。

たぶのきの染め方

樹皮を細かく削って、朝から夕方まで沸騰させて煎じ出します。

この煎汁の中へ、煎じたたぶのきの樹皮を乾燥させて焼いた灰を入れて混ぜると泡立って赤く発色します。

しばらくすると液面に薄い膜が張りますが、これは糸にくっつくとムラになる可能性があるので、取り除きます。

染液に入れる灰の量が大事なポイントで、少なければ赤みが足りず黒味がかり、多すぎると発色が悪いといわれています。

染める際は、糸を完成した染め液に十分に浸し、しっかり絞って天日のもとで乾燥させます。

乾燥できたら、染めるを何度も繰り返して濃くしていき、何度か灰汁につけて乾燥させたりして媒染も行います。

染め上りの色は、八丈島に自生するヤマモモの実の熟した色が理想とされ、その色を目指して何度も染め重ねられるのです。

黒染

黒染は、樹齢30年以上のしいの樹皮を剥がして、雨や湿気を避けながら乾燥し、3年ほど保管したものを染料として使用します。

生皮や乾燥が悪いもの、樹齢の若い木の皮は、いい色を出せないとされています。

樹皮を30〜40cmほどにカットし、釜の中に6〜7時間沸騰させて煎じ出します。

煎汁に糸をつけて、絞って天日の元で乾燥を繰り返して濃くした後、鉄分の多い泥土で染め(媒染)を繰り返して希望の色に染めていきます。

【参考文献】『月刊染織α 1983年No.31』


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