江戸時代の男子の衣服における裃(かみしも)

江戸時代において男子の衣服として着用された裃(かみしも)は、古く直垂ひたたれ素襖すおうのように、上下同じ生地(共裂ともぎれ共布ともぬののものを意味しました。

後に肩衣かたぎぬ半袴はんばかまをつけること肩衣袴かたぎぬばかまの意となり、江戸時代にさらにその形を整えたものをかみしもと呼び、武士の公服、庶民の礼服として用いられました。 続きを読む

絵絣文様「桜蕨の市松」

絣(かすり)とは?絣の歴史や久留米絣の技法、日本の庶民に愛された絣文様について

江戸時代後期から明治、大正、昭和の時代にかけて、庶民の間でとりわけ親しまれた織物にかすりがあります。

織物の組織としては、かすりは平織りと繻子織りしゅすおりにみられます。

かすりは「綛」や「纃」とも表記し、中国では「飛白」、マレー語の「イカット(ikat)やフランス語の「シネ」もそれぞれ絣模様の織物を表します。 続きを読む

「白練緯地桐竹鳳凰模様刺繍・摺箔小袖」16世紀桃山時代

日本や世界における刺繍(ししゅう)の歴史や特徴。奈良、平安、鎌倉、室町、江戸、それぞれの時代における刺繍について

針と糸があれば、布を自由に装飾できる刺繍ししゅうは、世界中で古くから行われてきました。

中国では、殷代いんだい(紀元前17世紀〜紀元前1046年)の青銅器に付着していた絹に菱形ひしがたの模様(文様もんよう)が刺繍ししゅうされた例が見つかっています。

日本においては、中国から発達した刺繍ししゅうの影響を受けながらも、織りや染めの技法と混ざりあいながら、日本的な美しさが数多く表現されてきました。
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江戸時代に出版された更紗についてまとめた本『更紗図譜』(さらさずふ)稲葉通龍(刊行)

江戸時代に出版された更紗についてまとめた本『更紗図譜』(さらさずふ)・『佐羅紗便覧』(さらさびんらん)

稲葉通龍いなばつうりゅう(1736年〜1786年)が江戸時代後期の天明てんめい5年(1785年)に『増補華布便覧』を補正し、更紗さらさについてまとめた本である『更紗図譜さらさずふ』を刊行します。

更紗さらさとは、室町時代末期以降(16世紀以降)、ポルトガルやオランダ、イギリスなどのいわゆる南蛮船なんばんせんが運んできた、インドやペルシャ、シャム(タイ)・ジャワ(インドネシア)などの東南アジアの模様染めされた布を指して呼ばれたものです。

江戸時代中期以降に、日本でも更紗を模して、京更紗や江戸更紗、鍋島更紗や天草更紗、長崎更紗や堺更紗など、それぞれの土地でそれぞれの更紗(和更紗わさらさ)が作られました。

稲葉通龍いなばつうりゅうは、大阪の心斎橋に住み、「芝翠館しすいかん」という屋号で刀剣や書籍などの商売を行なっており、更紗さらさ蒐集家しゅうしゅうか(コレクター)でもありました。 続きを読む

ベンガラ(弁柄)を部分的に摺り込んで染められた、唐草模様の藍染布

染色に使用される赤色の顔料であるベンガラ(弁柄/紅殻)について

天然に出る赤色の土は、世界中のいたるところで見られます。

日本においては、水稲農耕すいとうこうさくが始まる弥生時代やよいじだい(紀元前10世紀頃〜紀元後3世紀中頃)以前に用いられた顔料は基本的には赤と黒の2色で、赤は赤土あかつち(せきど)が使用されていたと考えられます。 続きを読む

8世紀「浅緑地花卉鳥獣文錦」正倉院蔵

正倉院裂(しょうそういんぎれ)とは?正倉院宝物として保存されている裂(布きれ)について

正倉院裂しょうそういんぎれとは、正倉院宝物しょうそういんほうもつとして保存されているきれ(布きれ)のことです。

正倉院裂しょうそういんぎれには、奈良時代の天平勝宝てんぴょうしょうほう年間(749年〜757年)に行われた東大寺大仏開眼供養だいぶつかいげんくように用いられた裂や聖武天皇(701年〜756年)にゆかりのあった裂などがあります。

その大部分は絹と麻でできた織物で、他には羊毛(ウール)を熱や圧力をかけて縮めた毛氈もうせんがあります。 続きを読む

ざざんざ織

ざざんざ織(颯々織)とは?ざざんざ織の特徴と技法について

静岡県の浜松市周辺は、「遠州織物えんしゅうおりもの」の名前で広く知られ、昔から織物業が盛んでした。

機屋はたやの家系を持ち、民藝運動家であった静岡県浜松市の平松実ひらまつみのるが、遠州織物の伝統技術を基盤に、新しい創造性を加えて作り出したのが、「ざざんざ織(颯々織)」です。 続きを読む