萱葺き屋根(茅葺き屋根)は、なぜ萱が素材として使われたのか?


日本の住宅建設様式の一つに、合掌造り(がっしょうづくり)が挙げられます。

急勾配の屋根を持ち、白川郷の風景を思い浮かべる人も多いかと思いますのが、その屋根に使われている素材が萱(かや)です。

昔の人々は、なぜ萱を屋根の素材として使用したのか?理由としては、やはり素材そのものの耐久性にありました。

そもそも萱(かや)とはなにか?

萱という言葉は、だれしも聞いたことがあると思いますが、特定の植物の名前ではなく、ススキやカリヤス、オギ、チガヤなどの屋根を覆う素材に用いられるイネ科の植物の総称なのです。

漢字では、「萱」や「茅」が当てられます。

萱場(かやば)という言葉がありますが、萱がたくさん生えている土地であると同時に、屋根を葺く(ふく)材料や家畜のえさを集めるための草刈場という意味がありました。

昔の人は、茅を効率よく採取する知恵を持ち、人の手でしっかりと萱場を管理していました。屋根葺き材としてはもちろんのこと、燃料、肥料、家畜のえさなど、萱場の利用目的は多岐に渡りました。

なぜ、萱を屋根葺きに使ったのか?

萱を屋根葺きにつかった理由としては、枯れていても強度がしっかりしており、耐水性があって腐りにくいことが挙げられます。

生活工芸書『萱』には、以下のような記述があります。

筑波大の安藤邦廣名誉教授によれば、一般的な民家の場合、煮炊きによる煙で天井が燻されるため、耐久年数は30年ほどだそうだ。伊勢神宮の社殿はそれより短い20年で遷宮(せんぐう)のために建て替えられる。これは、生活による煙がないため、虫や微生物がつきやすくなること、風通しが民家よりもよくないこと、などによるという。

ガスや電気が広まる前は、かまどや囲炉裏で燃やした木々の煙が家中を包んでいたことが、結果として萱の耐久年数を長くしていたというのは、非常に面白いです。

また、水性植物のヨシを使った茅葺屋根の特徴は、通気性、断熱性、吸音性、調湿性に優れ、夏は涼しく、雨音がしない等が挙げられます。

囲炉裏を使って出た煙も抜けやすいため、室内に煙が充満して困るということもないようです。

イネ科の植物は物理的強度が高い

茅葺きに使われるのがイネ科の植物であるのは、他の植物に比べるとシリカ(二酸化ケイ素)が多く含まれることが挙げられます。シリカ含有量が多いと、草食動物に食われにくくなったり(消化を妨げたり、歯をすり減らしたり、肝臓や胆嚢(たんのう)に胆石を形成する効果があるそう)、乾燥した環境にも適応しやすい効果があるようです。

イネ科の茎が頑丈で、物理的強度が高いというのは、触ったことがある人であればよくわかることでしょう。

元をたどればアフリカ大陸の乾燥した気候のもと、草食動物に食べられないよう防御するために進化してきたイネ科の植物であるが、分布を広げていた先の日本列島の高温多雨で多湿な環境で、雨をしのぐための屋根葺き材として使われるようになるとは、なんとも面白い巡り合わせである。生活工芸書『萱』

イネ科が出現したのは、約6500万年前と言われているそうです。乾燥しやすい気候で草食獣による摂食が多い環境に適応するために、光合成の仕方を工夫し、体内にシリカを取り込むことで厳しい環境を生き延びてきたイネ科が、日本において屋根葺き材として使われるようになった歴史があるというのは非常に興味深いことですね。


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