素材」カテゴリーアーカイブ

イラクサ(蕁麻)で織られた麻織物

イラクサ(蕁麻)の繊維から生まれる布。イラクサ(蕁麻)の採取・苧引き・糸積みについて

古くから、衣類の原料やあみなわなどを編む繊維などに使用されてきた植物にイラクサ(蕁麻いらくさ)があります。

イラクサ(蕁麻いらくさ)はイラクサ科の植物で、世界中で40属、50種以上を数えるといわれますが、繊維として利用されるものは主に、イラクサ属(ミヤマイラクサ、ムカゴイラクサ、エゾイラクサ)、カラムシ属(ナンバンカラムシ、カラムシ、コアカソ)などで、まれにミズ属のミズ類も用いられました。

カラムシ畑,福島県昭和村

カラムシ畑,福島県昭和村,Qwert1234, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

このうち、カラムシ属のナンバンカラムシ(学名:Boehmeria nivea var. nivea)は、いわゆる苧麻ちょまで、栽培される麻織物の主原料となっていました。 続きを読む

デニム(denim)・ジーンズ(jeans)の防虫・虫除け効果。デニムとジーンズの違いやリーバイスデニムの特徴について

デニム(denim)は、もともとアメリカで労働着(ワークウェア)として誕生しました。

1840年代にカリフォルニアで金の鉱脈が発見されたことにより、いわゆるゴールドラッシュと呼ばれる金の採掘ブームが1870年代にかけてまきおこりました。

金鉱労働者の間で堅牢けんろうな衣類の需要が増えたことが、デニム誕生の背景としてあるのです。

1853年、ドイツからサンフランシスコに移民としてやってきたLeviStraussリーヴァイ・ストラウスは、耐久性に優れたキャンバス素材を使ったパンツを自身の雑貨店で販売しました。

これが、世界中で愛されているデニムブランド「リーバイス(Levi’s)」のはじまりと言われています。 続きを読む

黄八丈(きはちじょう)

黄八丈(きはちじょう)とは?八丈島の絹織物である黄八丈の歴史と染色技法について

黄八丈きはちじょうとは、主に草木染めで染められた黄色・樺色かばいろ・黒色の三色の糸を使って、さまざまな縞模様を織り出す絹織物のことです。

黄八丈きはちじょうは、広い意味で茶系統の鳶八丈とびはちじょうや黒系統の黒八丈くろはちじょうを含めた、八丈島で生産されたつむぎを総称しています。

全体的に渋く、味わいのある色合いであるため、絹織物らしい光沢感は抑えられます。

染色の工程で、乾燥のために長い日数を八丈島の強い直射日光にさらすため、堅牢度けんろうどが良く変色したり退色しづらい特徴があります。

黄八丈きはちじょうは、たくさん使われ、洗われることで、年を経るにつれて、より一層色合いが冴えてくるともいわれたりします。 続きを読む

尾州紺木綿『江戸・明治藍の手染め』愛知県郷土資料刊行会

日本の綿花栽培・木綿生産が普及した歴史。苧麻が、木綿に取って代わられた理由

江戸時代に流通した主な商品は、米を抜きにして考えると、木綿・菜種・干鰯ほしか・酒・材木・藍などが上位を占めました。

江戸時代以前、木綿が大陸からやってきて広がっていくまでは、日本においてイラクサ科の多年草木である苧麻からむし(学名 Boehmeria nivea var. nipononivea)を原料にした布が一般的に生産されていました。

木綿は、戦国時代から江戸初期にかけて、爆発的に普及したとされています。
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生機(原反)加工の流れ。精錬、毛焼き、糊抜き、漂白等。P下、下晒し生地とは何か

織り機や編み機で、出来上がったばかりの生地のことを、生機きばた原反げんたんといいます。

そのまま、未加工で使用する場合もありますが、油脂ゆしや繊維のカスなどの不純物が混在していることが多いので、何かしらの加工をしてから商品として出荷されます。

倉敷帆布を織るシャトル織機の様子

倉敷帆布を織るシャトル織機の様子,Baistone, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

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蚕(かいこ)の繭(まゆ)。絹糸(シルク糸)の原料

シルク(絹)とは?シルクの性質と特徴、美しい光沢感をもつ理由について

シルクは、綿や羊毛(ウール)と違い、連続した細い繊維でできており、しなやかな感触と優雅な光沢感を持っています。

シルクを産出しなかったヨーロッパでは、シルクはシルクロードを通って遠く中国から運ばれ、同じ重さの黄金と同じ価格で取引されたと言われています。

人類は5000年以上も前から、マユを利用して糸をつくることを知っていたようですが、現代においては貴重で最高の繊維とされているシルクの特徴としては、さまざま挙げられます。 続きを読む

リップル加工(ripple finish)とは?シルケット加工とマーセリゼーション(mercerization)について

綿繊維は、苛性かせいソーダで処理すると収縮しゅうしゅく(縮む)する性質があります。

そこまで厚みのない平織りの綿織物に、強アルカリの苛性かせいソーダ(水酸化ナトリウム溶液)を含んだのりをプリントしたり、先に樹脂等で防染しておいてから苛性かせいソーダに浸けるかすると、苛性かせいソーダがついた部分が収縮して、その他の部分も自然な縮み方をします。 続きを読む

からむし糸と絹糸で織った布

【染織の名著】堀切辰一(著)『襤褸達の遍歴ーこぎれ四百姿』

1987年1月21日、古民具店を経営していた堀切辰一氏が、『襤褸らんる達の遍歴』という本を出版しました。

この本は、約15年かけて全国から集めた着物やふとん地の布400枚が、4センチ×12センチに切り分けられ、貼り付けられています。

江戸から昭和初期にかけて生産された布たちの用途、材質、産地を一枚ずつ調べ、可能な限り身につけていた人から着物にまつわる話を聞き出して、解説が書かれているのです。

襤褸らんるとは、「ぼろきれ」や「ぼろ」のことを指し、使い古した布や、補修されて継ぎ接ぎだらけの布を意味しています。

堀切氏は、「ぼろ」ではなくあえて襤褸らんると呼んでいました。

なぜなら、小さな布もまだ使命を持っており、役に立たないものではないから「ぼろ」と呼ぶのはふさわしくないと考えていたためです。

古着としても歴史資料の価値がある着物を切り刻んで本に張るのには、やはり周囲の反対があったようですが、「布に込められた人生と思いは、実物の布に触れてもらわないと伝わらない」と堀切氏はあえて本に残したのです。

襤褸 

経糸がからむし糸、緯糸に絹糸で織られた布

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