蚕(かいこ)の繭(まゆ)。絹糸(シルク糸)の原料

絹(シルク)をこすり合わせた時に出る音「絹鳴り(きぬなり)」


絹(シルク)をすり合わせた時や、絹でできたおびを手や指でこすったりした時に出る音を「絹鳴り(きぬなり)」と言います。

一般的には、毛羽がほとんどない長繊維(フィラメント)の織物は、すり合わせると音が発生しやすいです。

特に絹糸は、単糸たんしの断面が三角形であるため、より高い音が出ます。

絹(シルク)を擦り合わせた時に出る音「絹鳴り(きぬなり)」

絹鳴り(きぬなり)」の同義語としては、「シルケンラスリング(silken rustling)」や「スクループ(scroop)」などがあります。

生糸きいとや絹織物を精錬せいれんする程度(絹繊維のフィブロインを包むセリシンを除去する程度)やそれに用いる薬剤、織りの組織、後加工によって絹鳴り(きぬなり)しない場合もあります。

「絹鳴り(きぬなり)がする絹織物は高級品である」というの言説があったようですが、これは民間のいいならわしで根拠がはっきりとしていない俗信ぞくしんと考えられています。

シルク繊維の成分

シルク繊維は、グリシン38%アラニン22%セリン15%チロシン9%のほか、ロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、バリンなど21種類のアミノ成分から構成されています。

蚕(かいこ)の繭(まゆ)。絹糸(シルク糸)の原料

蚕(かいこ)の繭(まゆ)。絹糸(シルク糸)の原料

野蚕と総称される天蚕てんさん柞蚕さくさん、エリ蚕など、家蚕から作った絹と比べると、アミノ酸組成が異なるため、糸の性質もそれぞれ異なります。

関連記事:野蚕シルクの種類と特徴、家蚕シルクとの違いについて。

野蚕糸は繊維の中に無数の細かい隙間があるため、引っ張った時の伸縮性に富むのが特徴的です。

シルクのセリシン

家蚕のまゆから取ったままの糸を、生糸きいと(raw silk)と言います。

生糸を構成している一本の繊維は、2種のタンパク質からなります。

カイコの体内にある左右の絹糸腺からつくられた2本の「フィブロイン」タンパク質が、ニカワ質の「セリシン」タンパク質に包まれた形になっています。

生糸を藁灰わらばい灰汁あくなどのアルカリ液で精錬すると、全体の20%〜30%を占めるセリシンがほとんど溶けて除かれ、フィブロインだけが残ります。

通常、「絹(シルク)」といえば、セリシンを除去した後のフィブロインだけのものを言います。

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セリシンをどのように落とすかによって、織物の風合いを微妙に変えることができます。

例えば、セリシンを残したままの生糸で織物にしてから精錬すると、セリシンが溶けたことによってできた空間によって、絹織物特有の柔らかい風合いが生むことができます。


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