1933年に初版が発行された、谷崎潤一郎(1886年〜1965年)の名著『陰影礼賛』。
『陰影礼賛』は、私たちが当たり前に使っている電気がなかった時代における、日本の美の感覚や芸術的な感性について論じたものです。
表題が「陰影礼賛」であるように、まさに「陰影(光の当たらない部分、かげ)」を「礼賛」(すばらしいものとしてほめたたえること)している本です。
日本人の感性や美意識、そしてデザインなどに興味がある人にとっては非常に参考になる本です。
瓦当は、丸瓦の先端に葺く鐙瓦につけた模様(文様)のある円形の部分を表します。
後には、平瓦の先端に葺く軒瓦にも瓦当をつけました。
瓦当を模様化(文様化)したものを瓦当文といいます。
円の中に巴文や蓮華文、宝相華文、同心円文などがデザインされてきました。
デザインにおける羯磨文は、密教の法具である「羯磨金剛杵」が模様化(文様化)されたものです。
『金剛頂経』の教えを表す成身会は、大日如来の智慧の世界そのものともいえる会で、単独で「金剛界曼荼羅」と呼ばれることもあるほど重要な会ですが、この会が「羯磨会」や「根本会」などとも呼ばれます。
羯磨は、羯磨会の際に用いるのでこの名前があります。
金剛杵は、もともと杵の形をした武器で、両端が鋭くとがっており、密教では煩悩を破る法具とされます。
この金剛杵の両端に、三つの鋒が付いた三鈷杵を十字に組み合わせたのが羯磨文です。
羯磨文の交差した部分は、もともと半球型であったのが、のちに蓮花(ハスの花)の形となり、家紋にも用いられてきました。
「片輪車文」は工芸模様(文様)の一つとして、デザインに用いられてきました。
王朝貴族の乗り物であった牛車の車輪は木製で、乾燥すると割れてしまうため、使用しない時は川の流れの中に浸しておくことがありました。
その情景を図案化したものが、片輪車文です。 続きを読む
形のない風を模様化(文様化)したものは少なく、古代中国では風神や風のシンボルとされる想像上の鳥である鵬、雨とのつながりなどでデザインに表現されてきました。
風そのものを形にしたものには、細長い笹の葉のような三角形の一群を横に飛ばしたような模様(文様)があります。
日本においては、風は揺れ動く物体や空に飛ぶ雲などで表現されてきました。
桛木とは、紡錘(つむ)で紡いだ糸をかけて巻く工字形の木です。
桛木を模様化(文様化)したものは、桛木文として知られ、絣のデザインによく用いられてきた幾何学文様です。
絣織物の絣柄を表すための糸を、地糸に対して「絣糸」といいます。
絣糸は、さまざまな防染方法を活用し、糸に染まっていない部分を作ることで表現されます。 続きを読む
銘仙は、群馬県の伊勢崎が有名で、「銘仙といえば伊勢崎」というほど、全国的に知られていました。
銘仙は、平織りの絹織物の一種で、目専、目千、銘撰とも書かれ、「銘仙」の字を当てたのは明治時代以後となります。
続きを読む
インドネシアの織物の中で模様を織り出す技法としては、紋織りとともに、広い地域で行われていたのが絣です。 続きを読む