「東都大伝馬街繁栄之図(とうとおおてんまがいはんえいのず)」歌川広重(1797年〜1858年)作 暖簾(のれん)が掛かる大通り

暖簾(のれん)の意味や役割、機能性について


暖簾のれんは、古くから日本において親しまれてきました。

例えば、戦国時代にあたる16世紀初頭から江戸時代にかけて制作された屏風絵びょうぶえである「洛中洛外図らくちゅうらくがいず」は、京都の市街(洛中らくちゅう)と郊外(洛外らくがい)の景観や風俗を描いたもので、絵の中には「暖簾のれん」と思われる描写が多数見受けられます。

紙本著色洛中洛外図 六曲屏風,Rakuchu rakugai zu byobu (Fukuoka City Museum)

紙本著色洛中洛外図 六曲屏風,Kano Takanobu (attributed), Public domain, via Wikimedia Commons,Link

上記の屏風絵びょうぶえも、町屋の入り口に布がカーテンのようにかけられてあり、表通りに面した入り口の白い布には、商売のためにすみのようなもので紋印もんじるしが描かれています。

この屏風絵びょうぶえのように、古い資料には暖簾のれんが見受けられ、色地に模様を染め抜いたようなものも登場します。

布だけでなく、なわをたくさん吊り下げたものや、軒下のひさしの内側に短い布切れを「一」の字のように、まっすぐ横に並んで吊り下げたようなものも見受けられます。

家の出入り口に布をかけて、古くは必ずしも暖簾のれんを2つや3つに割って使用していなかったようです。

暖簾(のれん)の意味や役割、機能性

暖簾をかける意味や役割、機能性についてはいくつか挙げることができます。

暖簾に屋号を描き、店先に吊り下げることによって、商売の標識としての意味が大きくあります。

現代のようにさまざまな素材を使って看板を作れなかった時代には、加工しやすい布を使って屋号を表すのが一般的だったのです。

もちろん現代でも、商売の標識としての暖簾は、老舗の名店から庶民的な飲食店、その他さまざまな業種においても見かけることができます。

お店の入り口にかける暖簾は、お店が営業中かどうかを示すための目印にもなります。

暖簾を出している時は営業中で、下ろすと閉店になります。

暖簾の機能性に関しては、日除け、ほこり除け、目隠しとしての役割があります。

直接日光が店先に入ることを防ぐため、暖簾を日除けとして使うというのはよくわかります。

現代のように道路も舗装ほそうされていなかった時代には、特に商売に適した人通りの多い道は、砂埃すなぼこりが立ちやすい環境であったことが容易に想像ができるため、暖簾がほこり除けとしての役割も持っていました。

店内が常に見える状態ではなく、目隠しとしての役割も暖簾にはあるのです。

藍染と暖簾(のれん)

暖簾の染色には、藍染がよく使用されていました。

藍染は木綿や麻に良く染まり、布の汚れも目立たなくなるため、地を藍色に染めて屋号を白抜きしたり、時には地を白にして模様部分だけを染めることもおこなわれていました。

明治8年(1875年)に、東京大学の初代お雇い教師であったイギリスの科学者であるロバート・ウィリアム・アトキンソン(1850年~1929年)が来日した際、道行く人々の着物や軒先のきさきの暖簾などを見て日本人の暮らしの中に、青色が溢れていることを知りました。

関連記事:日本における藍染の歴史。藍作・藍染が発展し、衰退していった背景について

東京を歩き、日本人の服飾に藍色が多いのを見て驚いたアトキンソンは、明治11年(1878)『藍の説』を発表し、藍に「ジャパンブルー(JAPANBLUE)」と名付けました。

尾州紺木綿『江戸・明治藍の手染め』愛知県郷土資料刊行会

尾州紺木綿『江戸・明治藍の手染め』愛知県郷土資料刊行会

江戸時代の浮世絵師である歌川広重うたがわひろしげ(1797年〜1858年)によって、天保14年(1843年)~弘化4年(1847年)に描かれた「東都大伝馬街繁栄之図とうとおおてんまがいはんえいのず」には、現在の東京都中央区日本橋大伝馬町にあった木綿問屋街の様子が描かれています。

東都大伝馬街繁栄之図(とうとおおてんまがいはんえいのず),歌川広重,NDL-DC 1307610-Utagawa Hiroshige-東都大伝馬街繁栄之図-cmb

東都大伝馬街繁栄之図(とうとおおてんまがいはんえいのず),歌川広重,Utagawa Hiroshige, Public domain, via Wikimedia Commons,Link

江戸時代末期に描かれたこの作品には、屋号が染め抜かれた藍染の暖簾が、店の軒下にところ狭しと描かれていることがわかります。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です