ものづくり」カテゴリーアーカイブ

布の触感をやわらかくし、光沢感を与えるための砧打ち(きぬたうち)

砧打ち(きぬたうち)とは、布を木槌きづちで打って感触を柔らかくし、光沢感を出すために行われます。

古くから、絹や麻布の仕上げにきぬた打ちが行われました。

布の触感をやわらかくし、光沢感を与えるための砧打ち(きぬたうち)

布を織るときには張力がかけられ、洗ったりのり付けしたりとさまざまな要素によって、布を構成する糸は細く固まって粗硬そこうな感じになります。

平らな板や石の上などに置いた布を木槌きづちで丁寧に叩いていくことによって、糸はほぐれて布目がつまるとともに柔らかくなり、光沢感も次第に表れてきます。

打布機なども作られましたが、それでもきぬた打ちには時間がかかるため、柔軟剤で仕上げなど後加工の技術の発達によってほとんど行われなくなります。

きぬた打ちは、むかし女性が夜の仕事として行い、その響く音に風情を感じて歌に詠まれます。

室町時代に成立し、世阿弥ぜあみ作といわれる能楽作品に「砧(きぬた)」という演目があり、この作品では、女主人公がきぬたを打つことが情念の表現となっています。

Youtubeには、「砧(きぬた)」の演目がアップロードされているので、興味がある方はご覧になってください。

加賀友禅(かがゆうぜん)とは?加賀友禅の技法と京友禅との違いについて

加賀友禅かがゆうぜんが染められてきた石川県の金沢市は、周囲を美しい山々に囲まれ、犀川さいがわと浅野川が流れる、加賀百万石の城下町でした。

この地域における染色の歴史も非常に古く、1500年代頃にはすでに「梅炭うめずみ」といわれる無地染が発達し、布地を梅の皮やしぶで染め、黄色味がかった赤色に染め上げたのです。

江戸時代初期には、「御国染おくにぞめ加賀染かがぞめ)」や「兼房染かねふさぞめ(けんぼうぞめ)」と呼ばれる友禅染めのような模様染めが行われていました。

このように染色の土台があった加賀において、京都から宮崎友禅斎みやざきゆうぜんさいが移り住んできたのです。
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有松絞りの技法や種類、歴史について

有松ありまつ絞りは、鳴海なるみ絞りとも呼ばれます。

有松ありまつ鳴海なるみは、ともに旧東海道五十三次の宿場町ですが、有松で絞り加工されたものが、賑やかな隣町の鳴海で盛んに販売されたため、鳴海なるみ絞りの名で全国的に有名になったのです。

このことは、安藤広重あんどうひろしげの「東海道五十三次・鳴海の宿」の江戸浮世絵うきよえの中にもみることができます。
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手拭中形(てぬぐいちゅうがた)とは。長板中形に代わって登場した手拭中形の技法について

大正時代から昭和にかけて、手拭中形てぬぐいちゅうがた手注てちゅう)や注染ちゅうせんという方法が始まり、浴衣ゆかたが大量生産されるようになりました。

手拭中形てぬぐいちゅうがたとは、折付おりつけ中形や注染ちゅうせん中形、大阪中形(阪中さかちゅう)などと呼ばれ、布地を昔の日本手拭にほんてぬぐいの長さに折りたたんで染色することから「手拭中形てぬぐいちゅうがた」という名前で呼ばれています。 続きを読む

染色・草木染めにおける摺り染め。摺り染め・花摺りの染色方法について

日本の古代の人々は、草木が成長し花が咲き、果実が実るのは、草木に宿る精霊せいれい木霊こだま)の力であると信じ、草木からとれる自然の色で、衣服を染めつけていました。

強い精霊の宿るとされる草木は、薬用として使用されていました。

薬草に宿る霊能が、病気という悪霊によって引きおこされた病状や苦痛を人体から取り除き、悪霊をしりぞける作用があるとされていたのです。

日本の染色技術が飛躍的に発展するのは、4世紀ごろに草花から染料を抽出し、これを染め液として、浸して染める「浸染しんせん」の技術が中国から伝わってきてからです。

もっとも原始的な染色方法に、植物を生地に直接こすりつけて色を染め付ける「摺り染めすりぞめ」があります。

染色・草木染めにおける摺り染め

前田雨城(著)『日本古代の色彩と染』には、摺り染めすりぞめについて、下記のように記述があります。 続きを読む

長板中形(ながいたちゅうがた)とは?長板中形の特徴と技法、歴史について

長板中形ながいたちゅうがたは、小紋や形友禅などと同じく、日本に古くからある型染めの一種です。

長さが3間半(約6m36cm)、幅が約46cm、厚さが約2cmの一枚板である「長板ながいた」に生地を広げ、中形ちゅうがたと呼ばれる、大紋だいもん小紋こもんの中間ぐらい柄の大きさに彫られた型紙を使用して型付けを行うため、長板中形ながいたちゅうがたという名前がありました。

階級制度の厳しい封建社会ほうけんしゃかいのため、庶民は武士の目を意識して、大紋だいもん小紋こもんの中間の型を使用して、木綿の着物を染めたのが始まりと考えられます。

伊勢型紙,MET DP13824

伊勢型紙,Metropolitan Museum of Art, CC0, via Wikimedia Commons,Link

長板中形ながいたちゅうがたの技術は、江戸時代中頃から浴衣地の型付け・藍染に多用されたため、中形といえば浴衣の代名詞のようになっていました。

埼玉で「長板中形ながいたちゅうがた」が盛んになった理由として、中川・綾瀬川などの水量の豊富な河川に恵まれていたことに加えて、何より大消費地であった江戸、東京の隣接地であったことが挙げられます。

江戸の需要に応える形で、多くの人々が型付け職人として仕事に従事していました。

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信念や哲学を持ったものづくりでないと、それはただの量産品になる。

ものづくりと一口にいっても、世の中にはさまざまなものづくりがあります。

低価格で、大量にものをつくるのであれば、機械に頼ったものづくりになります。

いわゆる量産品ですが、これがものづくり産業の大部分を占めています。

一方で、価格は高いし、数をつくれないものづくりもあります。それは、人の手作業が必要となるものづくりです。

価格と生産量において機械には太刀打ちできない、後者のものづくりの利点とはなんでしょうか。

個人的には、手作業であるからこその非効率の価値があると考えています。 続きを読む

人の手がかかるものづくりには非効率の価値があるから、その他の作業をできるだけ効率化するべき。

ものづくりの分野、とりわけ全ての工程を機械やロボットで完結するのではなく、人の手が必要とされる手仕事などは、非効率にみえる作業部分が多くあります。

手仕事においては、人の手が必要な非効率な部分こそが、大きな価値として評価される点でもあるのです。手仕事の手のかかる部分に、しっかりと時間を割くということは言うまでもありません。

ただ、分野にもよりますが、なかなか手仕事でご飯を食べていくのは難しいところです。なぜなら、手仕事であるため、投下した時間に対する生産量に限りがあるからです。

限りがあるなかでどうやって、利益を効率よく出すことができるかを考える第一歩として、まずは手をかける作業以外の工程を徹底的に効率化する意識を持つことが大事だと思います。

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