色合い」カテゴリーアーカイブ

染め色における韓紅(からくれない)

韓紅からくれないとは、紅染で濃く染めた色を表します。

『万葉集』には、「紅の濃染」と詠まれたものがありますが、文献では、平安時代の『延喜式えんぎしき』において韓紅からくれないがみられます。

一般的な紅色に比べ、色が深いものを言い表すために深紅や韓紅からくれないなどと言って区別をしていました。 続きを読む

弥生時代から古墳時代までの色彩。装飾古墳に使われた顔料について

日本においては、水稲農耕すいとうこうさくが始まる弥生時代やよいじだい(紀元前10世紀頃〜紀元後3世紀中頃)以前に用いられた顔料は基本的には赤と黒の2色でした。

原料の赤はベンガラや朱、黒はマンガンの酸化物などです。 続きを読む

『延喜式』(えんぎしき)平安時代にまとめられた三代格式の一つで、古い染色を研究する人たちにとっては、欠かすことのできない文献

染色・草木染めにおける『延喜式』(えんぎしき)。衣服の色によって位階に差をつける衣服令(服色制)について

日本の古代の人々は、草木が成長し花が咲き、果実が実るのは、草木に宿る精霊(木霊)の力であると信じ、草木からとれる自然の色で、衣服を染めつけていました。

強い精霊の宿るとされる草木は、薬用として使用されていました。薬草に宿る霊能が、病気という悪霊によって引きおこされた病状や苦痛を人体から取り除き、悪霊をしりぞける作用があるとされていたのです。

染色の起源は、草木の葉っぱや花などをりつけて染める「摺染すりぞめ」です。

日本の染色技術が飛躍的に発展するのは、4世紀ごろに草花から染料を抽出し、これを染め液として、浸して染める「浸染しんせん」の技術が中国から伝わってきてからです。 続きを読む

正倉院宝物(しょうそういんほうもつ)に使用された顔料と染料について

奈良・平安時代の中央・地方の官庁かんちょう大寺だいじには、穀物や財物などの重要物品を納める正倉しょうそうが設けられていました。

日本中、あちこちに置かれた正倉しょうそうは、今日に至るまでにさまざまな理由で亡んでしまい、現在残っているのが、東大寺正倉院内の正倉一棟だけです。これがすなわち、正倉院宝庫しょうそういんほうこです。

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東大寺正倉院/あずきごはん/CC BY-SA 4.0/via Wikimedia Commons,Link

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日本における化粧の色合いと歴史。古典的な赤く塗る化粧と、白く塗る化粧に使用された化粧料の素材について

化粧の原型は、顔や身体への彩色さいしょくと言われています。

体に色を塗っているアフリカの部族を映像で見たことがある人もいると思いますが、古くは部族や階級間の差別化や、色がもたらす呪術じゅじゅつ的な目的のために彩色さいしょくが行われていたと考えられているのです。

Karo Woman at Korcho. (in explore) - Flickr - Rod Waddington

Rod Waddington from Kergunyah, Australia, CC BY-SA 2.0 , via Wikimedia Commons,Link

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支子(梔子)で染めた色合いの一例

染色・草木染めにおける支子(くちなし)。支子(梔子)の染色方法や薬用効果について

支子くちなし(学名 Gardenia jasminoides)は、あかね科クチナシ属の常緑の低木で、現在は支子くちなしではなく、梔子くちなしの字を当てる場合が多いです。

古くから、支子くちなしの果実が染色や薬用に使用されてきました。

本記事では、以下、支子くちなしと表記します。

支子くちなしは、庭園の樹木として植えられ、葉は2枚の葉がつく対生たいせい、もしくは3枚の葉が輪生りんせいします。

6月〜7月頃に葉腋ようえき(葉の付け根)から花柄を出し、白い六片に裂けた筒状花とうじょうかをつけ、2〜3日で黄色く変色しますが、良い香りがします。

支子(梔子),Cape Jasmine (Gardenia jasminoides)

支子(梔子),Gardenia jasminoides,Mokkie, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons,Link

果実は、頂部に咢片がくへんが残り、熟すと黄赤きあか色になります。 続きを読む

染色・草木染めにおいて、媒染と染めを分けて行う理由

草木染めにおいては使用される植物染料は、それぞれ染料としての性質が異なります。

藍や紅花べにばななど特殊なものを除けば、媒染剤ばいせんざいを活用することで発色し、固着するものがほとんどです。

染色と媒染ばいせんの工程は、基本的には一緒に行いません。

染めと媒染が一緒にできれば楽だと思いますが、それぞれの工程を分けるのにはきちんとした理由があるのです。

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蓼藍(タデアイ)

草木染め、植物染料とは何か?語源と定義、一般的な染色方法について

「草木染め」という言葉は、日本の作家で染織家の山崎斌やまざきあきら氏(1892年〜1972年)に命名されました。

1930年(昭和5年)、化学染料が普及してきたころ、天然染料は衰退の一途をたどっていきました。

「草木染め」という言葉は、古くから伝承されてきた染色方法を復興するにあたり、化学染料と区別するために名付けられたのです。

現在、草木染めという言葉の定義は、自然から得られる染料で染色することの総称として定着しています。 続きを読む

藍染の原料である蒅(すくも)

【藍師・水師七悪(ななあく)】藍師が蒅(すくも)づくりにおいて注意をしていた点

藍染の原料となるすくもは、収穫した蓼藍たであいの葉を乾燥させ、水をかけかき混ぜる作業を挟みつつ、約100日以上の発酵期間を経て出来上がります。

すくもづくりにおいては、良い葉藍を栽培することが何よりも大事とされていますが、それと同じくらいに、乾燥葉をすくもと呼ばれる状態にするまでの発酵期間も重要です。 続きを読む