葡萄色(えびいろ)

染色・草木染めにおける葡萄染(えびぞめ)。葡萄蔓(えびづる)を利用した染色方法について


日本の色名に、ヤマブドウの実が熟したような赤紫色のことを表す、葡萄色えびいろがあります。

葡萄えびは、甲殻類の海老えびではなく、果物のブドウのことです。

紫色を染める植物といえば、紫草むらさきが知られますが、今回は蝦蔓えびずる(えびかずら)を使用した、葡萄色えびいろについて紹介していきます。

染色・草木染めにおける葡萄染(えびぞめ)

葡萄色(えびいろ)

葡萄色(えびいろ)

蝦蔓えびずる(学名Vitis ficifolia)は、ブドウ科ブドウ属でつる性の落葉低木です。

エビヅル,葡萄蔓(蝦蔓),Vitis thunbergii

エビヅル,葡萄蔓(蝦蔓),Vitis thunbergii,Qwert1234, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

蝦蔓えびずるは、山野に多く生育し、若くて細いつるには細毛があり、夏ごろ(6月〜8月)になると、淡黄緑色の小さな花が密集して咲きます

実は熟すと黒くなっていき、食べられます。

古くは、ヤマブドウ(学名Vitis coignetiae)も葡萄蔓エビカズラとも呼ばれていました。

葡萄蔓えびづるやヤマブドウは、非常によく似ていますが、葉っぱの形で判別できます。

ヤマブドウ,Vitis coignetiae kz01

ヤマブドウ,Vitis coignetiae,Krzysztof Ziarnek, Kenraiz, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

平安時代になり、王朝文学に多数出てくる葡萄染えびぞめは、延喜式えんぎしき』(927年)に記されているように紫草むらさきの根のよる染色であると考えられます。

延喜式えんぎしき』の縫殿寮ぬいどのつかさ雑染用度条には、「葡萄えび一疋いっぴき。紫草きん。酢一合。灰四しょう。薪四十きん。帛一疋いっぴき紫草きん。酢一合。灰二しょう。薪廿斤にじゅうきん。」とあります。

ただ、日本の色名には染める材料がその色名になっている場合が非常に多く、ブドウ科ブドウ属の葡萄蔓えびづる蝦蔓えびづる)で染めたものが葡萄えびではないかという説もあります。

葡萄蔓えびづる蝦蔓えびづる)の古名が、葡萄えび(えび)であり葡萄蔓えびかずらでもあることから、葡萄蔓えびづる蝦蔓えびづる)で染めたものが、葡萄えびではないかという理屈です。

葡萄蔓(えびづる)を利用した染色方法

7世紀後半から8世紀後半(奈良時代末期)にかけてに成立したとされる日本に現存する最古の和歌集である『万葉集まんようしゅう』には、4,500首以上歌が集められていますが、今から1350年前から1250年ぐらいの飛鳥時代から奈良時代の間に作られています。

この100年くらいの間を、「万葉の時代」と言うことがあります。

万葉の時代の葡萄蔓えびづる蝦蔓えびづる)による葡萄染えびそめは、無媒染むばいせんであったと考えられます。

何回か染め重ねて濃く染まったとしても、濃い目の薄紫色で、紫色の色合いとしても青味のあるものだったと思われます。

以下、葡萄蔓えびづるを利用した染色方法の流れの一例です。

①染色する対象物に対して同量の、熟した葡萄蔓えびづるの実を水に入れて、火にかけて熱し、沸騰してから20分間熱煎して、煎汁せんじゅうをとる

煎汁せんじゅうが熱いうちに、染色する対象物(布や糸など)を浸し、染め液が冷えるまで置く

③最初に煮出した葡萄蔓えびづるの実からさらに、2番、3番の煎汁せんじゅうをとり、布や糸を浸してある染め液に追加する

④染め液が冷えたら再び火にかけ、沸騰してから10分間煮染したあと、染液が冷えるまでおく

⑤そのまま水洗いして仕上げると薄紫色になる。水洗いする前に、灰汁に浸してから仕上げた場合は、いくぶんか青味のある薄紫色になる

【参考文献】『月刊染織α1985年7月No.52』


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です