八重鬼菊唐草文『江戸・明治藍の手染め』愛知県郷土資料刊行会

沖縄の藍型(えーがた)。藍型の種類や技法について


沖縄で行われていた藍染は、タデ藍ではなく、琉球藍りゅうきゅうあいが原料に使用されてきました。

藍染の染色技法としては、型紙を用いて模様を表現する型染めが盛んにおこなわれ、沖縄では藍型えいがた(えーがた)と呼ばれていました。

藍型えいがた(えーがた)の技法は、紅型びんがたとほとんど同じで、広い意味では紅型びんがた藍型えいがたも含まれますが、一般的には区別されます。

沖縄の藍型(えーがた)

紅型びんがたは、王侯貴族おうこうきぞくの衣服となり、多彩で華やかな色合いが特徴的であったのに対して、藍型えいがた琉球王朝りゅうきゅうおうちょうの時代から庶民の衣服でした。

藍型えいがたは、藍の濃淡による単純な一色染めであり、地味な色合いであるのにもかかわらず、型染めによる大らかな模様が表現されます。

藍型(えーがた)の種類

白地しるじ藍型

白地しるじ藍型は、白地に模様の部分を藍一色に染めたものです。

芭蕉布ばしょうふに染められたものは、生地の薄茶色と相まって、藍型の美しさが表現されます。

浅地花取り(あさじはなどり)

浅地花取りは、白地に模様が藍の濃淡で染められたもので、型付けして淡い藍を染めてから、その部分をのり伏せし、藍染を繰り返します。

のり伏せした部分が、濃く染まらないことで、藍の濃淡が表現できるのです。

黒花出し

黒花出しは、模様が濃淡で、全体が淡い藍色のものです。

白花出し

白花出しは、地色が藍色、もしくは紺色で、模様部分が白上がりのものです。

藍朧型(えいおぼろがた)

藍朧型えいおぼろがたは、絵模様と小紋こもんを組み合わせたものです。

紅入藍型(びんいりえーがた)

紅入藍型びんいりえーがたは、藍型の部分に、しゅ臙脂えんじ黄土おうどなどで少量の色さしをおこなったものです。

藍型の技法

藍型を彫る前に、まず型紙に下絵を描いてから、彫り方は、突彫つきぼりで主に彫られていました。

生地は、元々は芭蕉布ばしょうふが主に使用されていましたが、麻や木綿も用いられました。

紅型びんがたと同様に、絹(シルク)は素材に使用しません。

生地の精錬作業は、古くは石灰汁で煮てから、海水に浸すなどしていました。

生地を細長い型板に張り、固定させる地張じばり作業をします。

地張じばりが済んだら、生地の上に型紙を当てて、防染糊ぼうせんのりをヘラで塗り、型付けします。

型付けした生地が乾いたら、型板から取り外し、屏風びょうぶだたみにして伸子しんしに吊るし、藍がめで浸染します。

染め上がってから、のりを水洗いして落としていきます。

藍の型染に他の色を加える技法

藍染による型染めは、一般的には藍一色ですが、他の色を加えて色合いを表現することがありました。

藍一色の型染めに比べると作用が複雑でしたが、江戸時代末期頃に多く制作されました。

藍の型染に他の色を加える技法の流れとしては、布地にのりで型置きしてから豆汁ごじるを引き、それに色彩をほどこし、明礬みょうばんで色止めします。

色差しした部分の上にのりを伏せてから藍の染液につけて染め、染色後にすべての糊を落とすと、各種色の入ったものが出来上がります。

紅色は、紅花べにばなや酸化鉄を主成分とする赤色顔料の一種であるベンガラ(弁柄/紅殻)が用いられ、茶褐色は紅色の上に藍色を重ねるなどして表現されました。

緑色を表現する場合は、刈安かりやすの上に藍色が重ねられます。

沖縄の泥藍(どろあい)

沖縄の藍染に用いられる琉球藍りゅうきゅうあいは、年に2回収穫でき、5月〜7月に収穫されるものを夏藍、9月〜10月のものを冬藍と呼んでいました。

琉球藍りゅうきゅうあいは、「泥藍どろあい」にして染料にします。

泥藍どろあいの製法は、まず水槽すいそうに刈り取った藍の葉を入れ、上から重しを乗せて水に沈めます。

夏藍は、3日〜4日、冬藍は5日〜7日で発酵し、藍の色素が水に十分溶け出してから、石灰を入れてよくかき混ぜます。

かき混ぜてから、数日後に水槽の底に沈殿ちんでんしたかたまり泥藍どろあいになります。

藍の建て方(発酵のさせ方)としては、藍甕あいがめに泥藍をいれ、木灰からつくる灰汁あく苛性かせいソーダを水で溶かしたもの(アルカリ性の液体)を加えます。

藍を仕込む時の泥藍どろあいとアルカリ性の液体の割合としては、約180リットル(一石いっこく)の容量で、泥藍どろあいを約50kg使用します。


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