染色・草木染めにおける山漆(やまうるし)


山漆やまうるし(学名:Toxicodendron trichocarpum)は、ウルシ科ウルシ属の落葉小高木です。

中国などを原産とする漆器しっき漆工しっこう)に利用されるウルシとは別の木ですが、ウルシに似た枝葉を持ち、山地や丘陵きゅうりょうに自生することから「山漆(ヤマウルシ)」と命名されています。

染色・草木染めにおける山漆(やまうるし)

うるし塗りに利用されるウルシとヤマウルシとの違いは、木の高さや葉の大きさ、紅葉の色の違いなどで見分けられます。

山漆(やまうるし),Toxicodendron trichocarpum 01

山漆(やまうるし),Toxicodendron trichocarpum,Σ64, CC BY 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

ウルシは樹高10mほどに成長するのに対して、ヤマウルシは一般的には2m~3mほどと比較的小さく、ものによっては8mほど成長します。

小葉はウルシの方が少し幅広く大きめで、ウルシの葉は秋になると黄色く変わりますが、山漆やまうるしは赤やオレンジに染まります。

山漆やまうるしの紅葉は、早いものでは8月下旬頃から色が変わるため、よく目立ちます。

ヤマウルシは漆塗りに使われることはありませんが、樹液や葉の汁にウルシにも含まれる「ウルシオール」という成分が若干含まれています。

ウルシオールの成分によって、枝葉に触れるとかぶれるため、庭木として使われる例は少ないです。

山漆やまうるしは、ウルシやはぜ(山櫨)など似ている木があり、葉や樹皮などは古くから染料に使われてきました。

黒染めには、木の葉が一般的に用いられ、茶色の染色には枝が用いられます。

媒染剤ばいせんざいは、黒染めには鉄分(鉄媒染)を使用し、茶色には、木灰から作る灰汁あく石灰せっかいなどが活用されます。

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兼房染(けんぼうぞめ)における山漆(やまうるし)

兼房染けんぼうぞめとは、元は吉岡染よしおかぞめと言い、桃の樹皮と鉄(カネ)とで黒茶色の小紋こもんを染めたものをいいました。

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享保きょうほう元年(1716年)以後の兼房染けんぼうぞめは、藍で下染したものに、山漆やまうるしの葉を煎じた汁を鉄(カネ)で媒染するようになります。

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媒染に用いる鉄(カネ)は、不要になった刀を用いていたので、武士の間では、兼房染けんぼうぞめの羽織は敵に切られても手傷を負わないと信じられ、兼房染けんぼうぞめが流行したようです。

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