染色における没食子(もっしょくし)


没食子もっしょくし(Gallnuts/Oak apple/Oak gall)は、西アジアや中東に産し、タンニン剤として有名です。

没食子もっしょくしとは、ブナ科のナラ(学名:Quercus)やカシなどの若枝の付け根に寄生したタマバチ(Cynips gallaetinctoriae)によってできる「虫こぶ」のことを表します。

植物に昆虫が産卵、寄生した結果、寄生物の出す分泌物質などで異常な発育を起こした部分を「虫癭ちゅうえい」と言います。

没食子(もっしょくし),Andricus kollari oak marble gall, knikkergal

没食子(もっしょくし),Rasbak, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons,Link

虫癭ちゅうえい没食子もっしょくしにあたりますが、このこぶができる理由は、若芽にインクタマバチGallwasp(Cynips gollae-tinctoriae)が産卵し、こぶの中で成長するためです。

こぶは直径約2cmほどの球状で、木や虫の種類の違い以外は、「五倍子ごばいし」と同じようなものです。

染色における没食子(もっしょくし)

植物の若芽が変形してできた没食子もっしょくし(こぶ)には、タンニンや没食子酸もっしょくしさんが多く含まれ、抽出したものが染料やインク、鞣革なめしがわ用として活用されてきました。

染色には、古くから黒染めや茶染めのほか、インクの製造原料として使用されてきました。

染色・草木染めにおけるタンニン

タンニン(タンニン酸)は、染色・草木染めにおいて非常によく知られている成分です。

タンニンの定義としては、「植物界に広く分布し、水に良く溶け、収れん性の強い水溶液を与え、皮をなめす作用を有する物質の総称」とされています。

タンニン酸という呼び方は、元々は、五倍子ごばいしのタンニンを表したものでしたが、現在では特に区別されていません。

ほとんどの植物はタンニンを含んでいますが、多量に含むものを「タンニン酸」などとも呼びます。

タンニンは、非常に複雑でさまざまな種類のものがあるということですが、分離して生じる物質の種類によって、ピガロールタンニンとカテコールタンニンに大別されています。

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