染色・草木染めにおけるタンニン(tannin)


タンニン(タンニン酸)は、染色・草木染めにおいて非常によく知られている成分です。

タンニンの定義としては、「植物界に広く分布し、水に良く溶け、収れん性の強い水溶液を与え、皮をなめす作用を有する物質の総称」とされています。

染色・草木染めにおけるタンニン(tannin)

タンニン酸という呼び方は、元々は、五倍子ごばいしのタンニンを表したものでしたが、現在では特に区別されていません。

ほとんどの植物はタンニンを含んでいますが、多量に含むものを「タンニン酸」などとも呼びます。

タンニンは、非常に複雑でさまざまな種類のものがあるということですが、分離して生じる物質の種類によって、ピガロールタンニンとカテコールタンニンに大別されています。

ピガロールタンニンとカテコールタンニン

ピガロールタンニンを含むものとしては、五倍子ごばいしかしの実、ミロバラン、ヤシャブシ(矢車附子やしゃぶし)などが主に挙げられます。

カテコールタンニンを含むものとしては、ヤシ科の植物であるビンロウ(檳榔びんろう、アカシアの樹皮で皮なめし剤の原料として使用されるワットル、マングローブなどがあります。

タンニンの性質

タンニンの純粋なものは、無色で針状結晶しんじょうけっしょうで、水やアルコールに溶け、水溶液は微酸性を表します。

タンニンは不純物を含むと、淡い黄色から淡い褐色かっしょくになります。

タンニンは、いずれもその化学構造の中に水酸基すいさんき(-OH)を数多く持っているため、絹や木綿によく吸着します。

また、カチオン性の物質やタンパク質と結合して、不溶性の化合物を生じ、鉄イオンと結合して青黒色、ないし緑黒色の沈殿を生成します。

染色助剤としてのタンニン

タンニンの染色助剤としての用途は、木綿を塩基性えんきせい染料で染色する際の媒染剤ばいせんざいとしての役割や、塩基性えんきせい染料を使用して絹(シルク)を染めた後や、酸性染料によってナイロンを染色後の堅牢度けんろうど増進剤などの役割で使用されてきました。

その他、インドでは木綿の布を染色したインド更紗さらさが古くから有名ですが、インド更紗の下地染めにもタンニンを多く含むミロバランの実が使われていました。

ミロバラン,訶梨勒(かりろく),Haritaki (Terminalia chebula) fruits

ミロバラン,訶梨勒(かりろく),Salil Kumar Mukherjee, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

牛乳やヤギの乳のタンパク質と、ザクロやミロバランの木の実を煮つめた液を混ぜて使用することで、木綿や麻などの植物繊維も染色しやすく(染まりやすく)なるのです。

関連記事:染色・草木染めにおけるミロバラン。訶梨勒(かりろく)の染色方法について


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