科布(しなふ)(榀布)

科布(しなふ)とは?科布(榀布)の生産工程について


原始古代布といわれるものの一つに、科布しなふ(榀布)があります。

科布しなふは、東北地方の各地で昭和初期ごろまで盛んに織られていました。

藤蔓ふじつるで作る藤布ふじぬのくづつるで作る葛布くずふなどと同じように、科布しなふは1000年以上の歴史をもつ織物といわれています。

科布(しなふ)とは?

科布(しなふ)(榀布)

科布(しなふ)(榀布)

科布しなふの原料はしな(榀)の木の皮であり、荒々しい肌ざわりですが、歴史的に東北地方の人々は男女問わず科布しなふの仕事着を用いることが多かったのです。

明治時代以降、東北各地にも紡績ぼうせきされた木綿が出回るようになりますが、当時は高価でなかなか買うことができない衣類でした。

次第に木綿が普及してきた頃になっても、山間部に住む人々はしなや麻など山野から採集した繊維の織物が以前として自家用の主な衣類だったのです。

東北地方の山間部でも昭和35年(1960年)頃の日本経済の著しい発展によって、科布しなふを生産する地域はほとんどなくなってしまいました。

現在では、新潟県村上市山北地区や山形県鶴岡市関川などの一部地域のみで生産されています。

科布(しなふ)の特徴

科布(しなふ)(榀布)

科布(しなふ)(榀布)

科布しなふは、荒々しく力のある素材感が特徴的です。

科布しなふは、生地をきぬた打ちすることによって、布に磨きがかかり、繊維もふっくらとします。

きぬた打ちとは、木槌きづちで平らな石の上などに置いた布を丁寧に叩いていくことです。

科布の生産工程

科布しなふの生産工程としては、以下のような流れになります。

①6月〜7月の梅雨時期に、5〜6年たった成長盛りの若いしな(榀)を立木のまま、根本からこずえ(木の先端)に向かって樹皮をぎ取るか、伐採して皮を

②外皮をぎ、芯を抜き取り、中皮を剥ぎ取る(中皮5貫目(18.75kg)で約4反分の原料)

③中皮を束にして、陰干ししておく

④8月頃に、木灰もくばいからつくる灰汁あくで2、3日間煮て樹脂を取り除いてやわらかくし、そのあと科皮を何枚にも細かく剥がし科苧にする

関連記事:染色・草木染めにおける灰汁(あく)の効用と作り方。木灰から生まれる灰汁の成分は何か?

⑤清流で汚れを洗い落とす

⑥科苧は、黒ずんでいるため、一、二日間、ぬかに漬け込む。ぬかに漬けることで、黒茶色のような色であった繊維が、漂白ひょうはくさらし加工)され、白くはなりませんが、薄い茶色となり、また灰汁あくで長時間煮たことでアルカリ状態となった繊維を、ぬかの乳酸菌で中和しする効果がある

漬け込んだ後は、ぬかを清流で洗い流し、晩秋まで影干しする

⑦農閑期の11月中旬から、科布しなふの糸づくりの第一工程「科裂しなさき(科積しなうみ)」で科苧を細分する

⑧細かく裂いたものを「科うみみ」で一本の糸になるように長く繋ぎ、りを掛けやすいように直径6〜7寸、高さ8寸ほどの円錐形えんすいけいのヘソ玉に丸巻きする(1寸は約3.03cm)

⑨1月中旬ごろ、ヘソ玉の糸を糸車で縦糸は強いり、緯糸は、弱くりをかけ、二つに作り分けする

⑩簡単な経てのべ道具で手のべ整経して、織る準備にかかる。ある程度湿気しっけがないと非常に織りづらいため、2月中旬の寒冷期から3月末の積雪の間にいざり機(居坐機いざりばた)で織る

【参考文献】『月刊染織α1986年7月No.64』


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