染色・草木染めにおけるミロバラン。訶梨勒(かりろく)の染色方法について


インドにおいて、古くから僧衣そういを染めてきた染料がミロバランといわれています。

ミロバランは、訶梨勒かりろくの名で正倉院の薬物の中に現存しています。

ミロバランmyrobalan(学名Terminalia chebula)は、シクンシ科モモタマナ属で10m〜20m程の高さになる落葉樹で、その果実が「ミロバラン」という名前で草木染めの染料として売られています。

ミロバラン,訶梨勒(かりろく),Terminalia chebula

ミロバラン,訶梨勒(かりろく),Terminalia chebula,Sipuwildlife, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

染色・草木染めにおけるミロバラン

インドでは、幼果ようか(ふくらみはじめたばかりの果実)や花を染色に使用し、黄茶色や黒色を染めたりもしていました。

ミロバランには、タンニンが多く含まれており、金属イオンが付きやすくなるので、木綿や麻などの植物繊維も染まるようになります。

ミロバラン,訶梨勒(かりろく),Haritaki (Terminalia chebula) fruits

ミロバラン,訶梨勒(かりろく),Salil Kumar Mukherjee, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

インド木綿更紗の下地染めにもミロバランの実が使われ、牛乳やヤギの乳に、ザクロやミロバランの木の実を煮つめた液を混ぜて使用していました。

ミロバランの液に浸してからしっかりと絞り、天日の元でしっかりと乾燥させた後に、染色したのです。

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ミロバランの染色方法

ミロバランは、媒染処理の素材によって、黒から淡い黄色まで幅広い色合いに染められます。

灰汁を媒染に使用し、絹糸1kgを染める場合、以下のような流れになります。

①灰汁に絹糸1kgを30分間浸し、しっかり絞ってから天日に当てて乾かすという作業を2回繰り返す

②染料店などで染色用販売されているミロバランの実500gを10リットルの水に入れて熱し、沸騰してから20分間熱煎して、煎汁せんじゅうをとる

③一回煮出した実をつぶしてくだき、同じように2回目の煎汁せんじゅうをとる

④1回目と2回目の煎汁せんじゅうを混ぜて染料とし、灰汁で先に媒染した糸を浸して、15分間煮染する

⑤染液が冷えるまで糸を浸しておき、天日に当てて乾かす

⑥灰汁10リットルに30分浸して、天日に当てて乾かす(中干し)

⑦2回まで煎汁せんじゅうをとった実を同じようにして、3回、4回目の煎汁せんじゅうをとり、中干しした糸を15分煮染し、染液が冷えるまで浸しておき、水洗いし中干しする

⑧必要であれば、4回まで煎汁せんじゅうをとった実を同じようにして、5回、6回の煎汁せんじゅうをとり、煮染する

⑨しっかりと水洗いし、天日に当てて乾かす

【参考文献】『月刊染織α1985年No.53』


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