生機(原反)加工の流れ。精錬、毛焼き、糊抜き、漂白等。P下、下晒し生地とは何か


織り機や編み機で、出来上がったばかりの生地のことを、生機きばた原反げんたんといいます。

そのまま、未加工で使用する場合もありますが、油脂ゆしや繊維のカスなどの不純物が混在していることが多いので、何かしらの加工をしてから商品として出荷されます。

倉敷帆布を織るシャトル織機の様子

倉敷帆布を織るシャトル織機の様子,Baistone, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

生機(原反)加工の流れ

出来上がったばかりの生地を加工する場合、一般的には以下のような流れになります。

生機きばた原反げんたん)→①ミシン掛け→②毛焼き→③糊抜き→④精錬→⑤漂白→⑥シルケット→⑦染色→⑧特殊加工→仕上げ

①ミシン掛け

細切れではなく、連続する生地にして加工が楽になるように、ミシンで布地をつなぎ合わせます。

②毛焼き(けやき)

未加工の生機きばたの表面には、無数の短毛が出てます。

短繊維からできる布には特に毛羽立ちがあり、短毛があると生地の光沢を悪くし、染色加工の際の効果も良くないので、ガスの炎や電熱で短毛を焼いて取り除きます。

焼きとる作業を「毛焼き」と言いますが、毛焼きをすることで、表面が滑らかになり、染色性も良くなるのです。

毛焼きの作業は、普通、糊抜きや精錬せいれんに先立って行われます。

毛焼きの方法には、ガス毛焼き、熱板毛焼き、ロール毛焼き、電熱毛焼きがあり、このうちガス毛焼きが最も多く行われてきました。

ちなみに、毛焼きした縫い糸は「ガス糸」とも言われます。

③糊抜き(のりぬき)

織りあがったばかりの生地は、のりが付いていてパリパリです。

そのため、織る前に経糸につけられたのりを、酸化糊抜き剤や酸素系糊抜き剤を使用して洗い落とします。

④精錬(せいれん)

苛性かせいソーダやソーダ灰などのアルカリや界面活性剤かいめんかっせいざいを溶液に浸して、一時間ほど蒸すなどして、綿繊維にむくまれている蝋分ろうぶん(油分)や、紡績ぼうせきの過程で付着したワックスや機械油などを取り除きます。

不要な油分は、染色加工をする際のトラブル原因になります。

関連記事:綿繊維の組成。セルロースが主成分である繊維に表れる特徴について

⑤漂白(ひょうはく)

綿繊維に含まれる色素不純物は、精錬の過程ではすべて取り除くことはできないので、酸化剤さんかざい還元剤かんげんざいを使って色素を分解除去し、生地を白く加工します。

もとの繊維の色が残っていると、染色の際に影響がでてきます。

科学的に楽に漂白する技術が生まれる以前は、繊維を灰汁に浸したり、天日干しを何度も繰り返すことで漂白や精錬を行っていました。

関連生地:灰汁や天日、雪、海水で布を精錬・漂白する(晒す)方法。雪晒し(ゆきさらし)、海晒し(うみさらし)とは?

イギリスのC・テナントによって塩素の漂白作用を利用した「さらし粉」が発明され、漂白技術に革命が起こりました。

さらし粉は、クロルカルキ、またはカルキといい、特異な臭いのある白色粉末で、消石灰しょうせっかいに塩素ガスを吸収させて作られます。

木綿などの漂白に広く使用されてきましたが、漂白作用の強さは、含まれている塩素の割合で変化していきます。

⑥シルケット加工

シルケット加工をしない場合ももちろんありますが、苛性かせいソーダの溶液に浸して、引っ張りながら加工することで、綿繊維に光沢が出ます。

詳しいことは、下記記事にまとめています。

関連記事:リップル加工とは?シルケット加工とマーセリゼーション(Silket、Mercerization)

⑦染色

染色をする場合は、織り上がった生地の精錬や漂白が終わってから行います。

関連記事:6種類の基本的な染色の仕方と染料の種類。直接染法、反応染法、建染め染法、発色染法、媒染染法、分散染法について

⑧特殊加工

生地加工の仕上げとして、用途によってさまざまな特殊加工がなされる場合があります。

生地を毛羽立たせる起毛きもう加工や、生地をあらかじめ収縮させる防縮ぼうしゅく加工、柔軟じゅうなん加工やコーティング加工など、多岐にわたります。

関連記事:ファッションにおけるオイルコーティングのメリット・デメリット。衣類や生地を丈夫にし、防水性や光沢感を与える

P下、下晒し生地

P下ぴーした下晒したざらしという言葉があります。

P下ぴーしたとは、プリント下生地の略で、その名の通り、プリントする前の白生地のことを言います。

P下ぴーした表記がある場合は、漂白し、余分は樹脂などが除去されて、プリントや染色ができることを表しています。

下晒したざらしという言葉は、繊維に含まれる色素を除去して白くする事です。漂白と同義と考えていいでしょう。

さらしていないものを「未晒みざらし」、自然そのままの色合いを生成きなりといい、その茶色や黄色っぽさをあえて生かすことで、素材独自のあたたかみを表現することもできます。

染色によってあえて、生成り色を出す場合もあります。


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