織り機や編み機で、出来上がったばかりの生地のことを、生機や原反といいます。
そのまま、未加工で使用する場合もありますが、油脂や繊維のカスなどの不純物が混在していることが多いので、何かしらの加工をしてから商品として出荷されます。
目次
生機(原反)加工の流れ
出来上がったばかりの生地を加工する場合、一般的には以下のような流れになります。
生機(原反)→①ミシン掛け→②毛焼き→③糊抜き→④精錬→⑤漂白→⑥シルケット→⑦染色→⑧特殊加工→仕上げ
①ミシン掛け
細切れではなく、連続する生地にして加工が楽になるように、ミシンで布地をつなぎ合わせます。
②毛焼き(けやき)
未加工の生機の表面には、無数の短毛が出てます。
短繊維からできる布には特に毛羽立ちがあり、短毛があると生地の光沢を悪くし、染色加工の際の効果も良くないので、ガスの炎や電熱で短毛を焼いて取り除きます。
焼きとる作業を「毛焼き」と言いますが、毛焼きをすることで、表面が滑らかになり、染色性も良くなるのです。
毛焼きの作業は、普通、糊抜きや精錬に先立って行われます。
毛焼きの方法には、ガス毛焼き、熱板毛焼き、ロール毛焼き、電熱毛焼きがあり、このうちガス毛焼きが最も多く行われてきました。
ちなみに、毛焼きした縫い糸は「ガス糸」とも言われます。
③糊抜き(のりぬき)
織りあがったばかりの生地は、糊が付いていてパリパリです。
そのため、織る前に経糸につけられた糊を、酸化糊抜き剤や酸素系糊抜き剤を使用して洗い落とします。
④精錬(せいれん)
苛性ソーダやソーダ灰などのアルカリや界面活性剤を溶液に浸して、一時間ほど蒸すなどして、綿繊維にむくまれている蝋分(油分)や、紡績の過程で付着したワックスや機械油などを取り除きます。
不要な油分は、染色加工をする際のトラブル原因になります。
関連記事:綿繊維の組成。セルロースが主成分である繊維に表れる特徴について
⑤漂白(ひょうはく)
綿繊維に含まれる色素不純物は、精錬の過程ではすべて取り除くことはできないので、酸化剤や還元剤を使って色素を分解除去し、生地を白く加工します。
もとの繊維の色が残っていると、染色の際に影響がでてきます。
科学的に楽に漂白する技術が生まれる以前は、繊維を灰汁に浸したり、天日干しを何度も繰り返すことで漂白や精錬を行っていました。
関連生地:灰汁や天日、雪、海水で布を精錬・漂白する(晒す)方法。雪晒し(ゆきさらし)、海晒し(うみさらし)とは?
イギリスのC・テナントによって塩素の漂白作用を利用した「晒し粉」が発明され、漂白技術に革命が起こりました。
晒し粉は、クロルカルキ、またはカルキといい、特異な臭いのある白色粉末で、消石灰に塩素ガスを吸収させて作られます。
木綿などの漂白に広く使用されてきましたが、漂白作用の強さは、含まれている塩素の割合で変化していきます。
⑥シルケット加工
シルケット加工をしない場合ももちろんありますが、苛性ソーダの溶液に浸して、引っ張りながら加工することで、綿繊維に光沢が出ます。
詳しいことは、下記記事にまとめています。
関連記事:リップル加工とは?シルケット加工とマーセリゼーション(Silket、Mercerization)
⑦染色
染色をする場合は、織り上がった生地の精錬や漂白が終わってから行います。
関連記事:6種類の基本的な染色の仕方と染料の種類。直接染法、反応染法、建染め染法、発色染法、媒染染法、分散染法について
⑧特殊加工
生地加工の仕上げとして、用途によってさまざまな特殊加工がなされる場合があります。
生地を毛羽立たせる起毛加工や、生地をあらかじめ収縮させる防縮加工、柔軟加工やコーティング加工など、多岐にわたります。
関連記事:ファッションにおけるオイルコーティングのメリット・デメリット。衣類や生地を丈夫にし、防水性や光沢感を与える
P下、下晒し生地
P下や下晒しという言葉があります。
P下とは、プリント下生地の略で、その名の通り、プリントする前の白生地のことを言います。
P下表記がある場合は、漂白し、余分は樹脂などが除去されて、プリントや染色ができることを表しています。
下晒しという言葉は、繊維に含まれる色素を除去して白くする事です。漂白と同義と考えていいでしょう。
晒していないものを「未晒し」、自然そのままの色合いを生成りといい、その茶色や黄色っぽさをあえて生かすことで、素材独自のあたたかみを表現することもできます。
染色によってあえて、生成り色を出す場合もあります。