染色するために使用する植物を染色植物と呼び、それらの植物の組織内に存在している有色化合物が天然色素です。
これらの色素は、植物の組織の中では主として配糖体という形になっています。
天然色素を配糖体のまま、あるいは色素単体として、その他の成分と一緒に植物から抽出したものを「天然染料」と呼びます。
コチニールや貝紫など、動物から抽出する天然色素もあります。
目次
配糖体(はいとうたい)とは?
配糖体(glycoside)とは、広く植物界に分布する成分の一つで、酸、アルカリ、または適当な酵素の作用によって、グルコース(gluucose)などの糖の部分とアグリコン(aglycon)、またはゲニン(genin)と呼ばれる部分とに加水分解する物質の総称です。
配糖体のうち糖以外の成分をアグリコンといい、アグリコンの構造は多種多様であり、天然色素もこのアグリコンに相当していると言えます。
天然色素の種類
天然に存在する色素の種類は非常に多く、大別すると以下のようになります。
カロチノイド類(carotenoids)
カロチノイド類(カロテノイド)は、植物の葉や花、果実などに含まれます。
梔子(クチナシ)やサフラン、マリーゴールドなどが黄色の着色料として使用され、カロチノイドを含むものとして知られています。
フラボノイド類(flavonoids)
フラボノイド類は植物の幹や葉、花、果実などに含まれます。
刈安(かりやす)や黄金花(こがねばな)、桷などに含まれるフラボン類。
楊梅(やまもも)や槐(えんじゅ)の花(槐花)などに含まれるフラボノール類。
紅花(べにばな)のカルコン類。
その他、アントシアン類、ベタレイン類、オーロン類、カテキン類などさまざまなものがあります。
ピロール類(pyroles)
ピロール類は、植物の葉、動物の血液や組織などに含まれます。
クロロフィル類やヘム類、フィコビリン類などがあります。
キノン類(qllinones)
キノン類は、植物の根や動物の組織などに含まれます。
茜(あかね)やコチニール、ラックなどに含まれるアントラキノン類。
紫草(むらさき)や胡桃(くるみ)などに含まれるナフトキノン類。
その他の色素類
その他の色素類としては、鬱金(うこん)に含まれるジケトン類。
黄檗(きはだ)に含まれるアルカロイド類。
藍草などに含まれるインドール類。
栗(くり)や車輪梅(しゃりんばい)、檳椰子(びんろうじ)、五倍子(ごばいし)などに含まれるタンニン類が染色によく使用されます。