色合い」カテゴリーアーカイブ

藍染の原料である蒅(すくも)

渋沢栄一と藍作・藍玉づくり・藍染の関係について

江戸時代に木綿の栽培が日本中で広まり、木綿に染まりやすかった藍染の需要も飛躍的に伸びていきました。

江戸時代は貨幣経済が浸透してきたことから、商品作物や各藩の特産物として換金作物かんきんさくもつの栽培が推奨され、特に重要な作物は「四木三草しぼくさんそう」と呼ばれました。

四木しぼくは茶、こうぞうるしくわ三草さんそう紅花べにばな、麻のことを指します。

藍の産地としては、江戸時代中期ごろから徳島県の吉野川流域(阿波あわ)が最も盛んで、「阿波藍あわあい」としてブランド化していました。

現在の埼玉県が含まれる(武蔵国むさしのくに)でも江戸時代から藍の栽培(藍作)と藍染が行われており、明治初期には阿波藍あわあいに次ぐ全国第2位の生産高を誇っていました。

埼玉県深谷市は、2024年度(令和6年度)発行の新一万円札の「顔」となった渋沢栄一(しぶさわえいいち)(1840年〜1931年)が生まれた地で、彼の生まれ育った家も藍染の原料となる藍づくり農家でした。 続きを読む

蓼藍(タデアイ)

藍染の原料となる植物の種類。代表的な藍植物(indigo plant)について

藍染の歴史は非常に古く、古代エジプトではミイラを包む布が藍染されており、紀元前2000年前には藍が利用されていたとされています。

藍の色素を持つ植物も多種多様で、それぞれの地域にあった植物を使用し、さまざまな方法で藍染が行われてきたのです。

日本において、江戸時代に入ってからの服飾は藍一色に塗りつぶされたと言っても過言ではないほど、藍は庶民の身近な色として親しまれてきました。 続きを読む

ラベンダー

染色・草木染めにおけるラベンダー

ラベンダー(学名:Lavandula angustifolia)は、地中海沿岸が原産とされるシソ科の植物で、伝統的にハーブとして古代エジプト、ギリシャ、ローマ、アラビア、ヨーロッパなどで薬や調理に利用されてきました。

ラベンダーという名前は、ラテン語で「洗う」という意味の「ラワーレ(lavare)」という語からきており、洗濯や入浴に使用していたという歴史があります。

民間薬としては花を乾燥させて、入浴剤としてリウマチの治療に用いられ、麻を洗濯する際に香りづけと殺菌を兼ねて使われました。

ラベンダー(lavender)の花は、観賞用だけではなく、満開の状態で刈り取られて香水の原料に使用されたり、ハーブティーなどにも使用されます。

ラベンダーの花を染色に使用する場合は、生のままか、乾燥したドライフラワーのどちらも活用できますが、染まりあがりの色合いはどちらを使用するかによって変わってきます。

ラベンダー(lavender),Echter Lavendel (Lavandula angustifolia) (9478078399)

ラベンダー(lavender),Maja Dumat from Deutschland (Germany), CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons,Link

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染色・藍染におけるインド藍。インド藍の種類や歴史、染色方法について

インド藍(学名 Indigofera suffruticosa)は、熱帯地方に分布するマメ科コマツナギ属の藍色素を持つ植物から抽出した染料の名前でもあり、植物の名称でもあります。

日本の本土で古くから栽培されてきたタデアイ(くさの藍)に対して、木藍きあいと呼ばれたりもしました。

Indigofera tinctoria-2-papanasam-tirunelveli-India

インド藍,Indigofera tinctoria,Yercaud-elango, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

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染色・草木染めにおけるログウッド。世界最大の需要を誇った染料、ログウッドの普及と衰退の歴史

ログウッド(学名 Haematoxylum campechianum)は、マメ科の植物で、属名のHaematoxylumは、ギリシャ語でhaima(血液)とxylon(樹木)の二語から由来し、種名のcampechianumは、原産地がメキシコ湾のカンペチェ湾(Campeche)沿岸であることから命名されています。

血木と呼ばれるのは、材木を空気に酸化させると美しい赤褐色の色が出てくるためです。

原産地は、中米などの熱帯地方で、樹高は6〜12mほどになり、幹にはドゲがあります。

小さくて黄色い花が咲き、幹の中央部の心材しんざいが染料として使用され、青紫色の色素であるヘマトキシリンが含まれています。

Haematoxylum campechianum (Campêche)

ログウッド,logwood,Haematoxylum campechianum,Fpalli, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

ログウッド(logwood)は、国によって様々な名称があり、イギリスにおいてログウッドという名称がはじめて文献に現れたのは、1581年のことです。

17世紀の始め頃からヨーロッパの市場では、ホンジュラスのベリーズから産出するものとユカタン半島のカンペチェから産出するものの棲み分けがされていました。

カンペチェ産のものの方が、ホンジュラス産のものに比べて品質が優れているとされていたため、名称も区別する必要があったのです。

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一斤染(いっきんぞめ/いっこんぞめ)とは?紅花で染められた淡い色合い

紅花べにばな(学名:Carthamus tinctorius)は、キク科ベニバナ属で花弁かべんを植物染料にします。

秋に種をまいて、冬を越して春になってから開花、結実してから枯れる越年草えつねんそう(二年草)として生育したり、寒い地域では一年草として春早い時期に種をまく場合もあります。

紅色の染料としての用途のみならず、食用油の原料としても栽培されています。 続きを読む

色合い(色相)iroai

色合い(いろあい)とは?色は、色相、明度、彩度の3種類の要素の違いで成り立つ

色合い(いろあい)とは、赤色、青色、黄色、緑色、紫色、黒のような色味の違いや色の加減を表します。

色を正確に表すためには、色の持っている三つの要素を示すのがわかりやすいです。

三つの要素とは、「色相しきそう」「明度めいど」「彩度さいど」の3つのことで、これらの性質を理解することが、色を理論的に知るための基本となります。

色相しきそうは、赤や青などの「色合い」を表します。
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染色・草木染めにおけるリンボク(橉木)

リンボク(学名:Prunus spinulosa)は、バラ科バクチノキ属の常緑高木で、湿気の多い山地の谷間や温暖な沿海地にある林内などに生え、樹高は5m~15mほどに成長します。

漢字では橉木りんぼくと書き、若木の葉は針状の鋭い鋸歯きょし(葉の周縁にあるギザギザ)をがあることから、「ヒイラギカシ」の別名もあります。

リンボク(橉木),Prunus spinulosa rinboku04

リンボク(橉木),Prunus spinulosa,Keisotyo, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

リンボクが庭木として使われることは少ないですが、9月〜10月頃の秋に咲く花には春の花のような香りがあり、白色の小さな花をいっぱいに咲かせるため、「観賞価値」は高いとされます。 続きを読む

染色・草木染めにおける山漆(やまうるし)

山漆やまうるし(学名:Toxicodendron trichocarpum)は、ウルシ科ウルシ属の落葉小高木です。

中国などを原産とする漆器しっき漆工しっこう)に利用されるウルシとは別の木ですが、ウルシに似た枝葉を持ち、山地や丘陵きゅうりょうに自生することから「山漆(ヤマウルシ)」と命名されています。
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染色における没食子(もっしょくし)

没食子もっしょくし(Gallnuts/Oak apple/Oak gall)は、西アジアや中東に産し、タンニン剤として有名です。

没食子もっしょくしとは、ブナ科のナラ(学名:Quercus)やカシなどの若枝の付け根に寄生したタマバチ(Cynips gallaetinctoriae)によってできる「虫こぶ」のことを表します。

植物に昆虫が産卵、寄生した結果、寄生物の出す分泌物質などで異常な発育を起こした部分を「虫癭ちゅうえい」と言います。 続きを読む