投稿者「iroai.jp」のアーカイブ

染色・草木染めにおける紫根(しこん)。紫草(むらさき)の薬用効果や歴史について

紫色を染める材料としては、古代から紫草むらさきが主に使用されてきました。

紫を染める草というので、紫草むらさきと書きますが、染色に用いるのはその根で、「紫根しこん」と言います。

紫草むらさき(学名 Lithospermum erythrorhizon)は、ムラサキ科の多年草で、日本や中国、朝鮮、ロシアなど広く分布しており、山地や草原に自生しています。

Lithospermum erythrorhizon (Boraginaceae) (35666554771)

紫草,Lithospermum erythrorhizon,yakovlev.alexey from Moscow, Russia, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons,Link

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染色・草木染めにおける辛夷(こぶし)。薬用効果や歴史について

辛夷こぶし(学名Magnolia kobus DC.)バラ科リンゴ属の落葉樹で、樹高は3~10m程度になります。

属名のMagnoliahahaはフランスの植物学者P.Magnolの名前からきており、種名のkobusは、和名のコブシに由来しています。

辛夷こぶしは、3月下旬から4月上旬にかけて、雑木に混じって枝一面に白い花を咲かせることから、春の訪れを告げる花として知られています。 続きを読む

萱葺き屋根(かやぶきやね)は、なぜ萱が素材として使われたのか?萱葺き屋根の特徴について

日本の住宅建設様式の一つに、合掌がっしょう造りがあります。

合掌がっしょう造りといえば、急勾配の屋根を持ち、白川郷しらかわごうの風景を思い浮かべる人も多いかと思いますのが、その屋根に使われている素材がかやです。

Shirakawa village - 白川郷 002

白川郷,Emran Kassim, CC BY 2.0 , via Wikimedia Commons,Link

かやが使用された屋根は、萱葺かやぶき屋根(茅葺かやぶき屋根)として、日本の原風景の一つに数えられます。

日本だけでなく、世界中でもかやが屋根の素材として使われていました。

昔の人々は、かやを屋根の素材として使用したのには、理由があります。 続きを読む

綿の繊維長と糸番手の関係。超長繊維のブランド化について

綿花は、種類によって採れる繊維の長さが違います。

大きくわけると、エジプト綿やスーダン綿の系統は超長繊維綿で、アメリカ綿に代表されるアンプラント綿は中長繊維綿、アジア在来種のデシ綿は短繊維綿に分類できます。

綿の繊維の長さは、糸にするときにその糸の細さに大きく関係してきます。 続きを読む

染色・草木染めにおける臭木(くさぎ)。薬用効果や歴史について

臭木くさぎ(Clerodendrum trichotomum)は、日本や中国、台湾に分布しているシソ科の落葉低木で、日当たりのよい場所で良く見られ、生長すると2m〜5mほどになります。

属名(学名の前半の部分)のClerodendrumは、ギリシャ語のKleros(運命)とdendron(木)の合字で「運命の木」という意味です。「運命の木」となったのは、ある種類が呪術に用いられたり、医薬として効果があることに由来するという説があります。

クサギ属(Clerodendrum)は、熱帯や亜熱帯地域に分布しており、欧米では花の美しいものは古くから観賞用や庭木にされています。

木の枝や葉をちぎると独特なにおいがするので、臭木くさぎという和名がつけられています。臭木くさぎの漢名は、臭梧桐シュウゴトウで、葉っぱの形がきりの葉を小さくしたように見えることから由来しています。

Clerodendrum trichotomum6

臭木,I, KENPEI, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

8月〜9月にかけて枝先に白色〜薄い紅色の花が咲き、花が散ったあとに丸く紫みを帯びた濃い青色の果実が熟します。 続きを読む

ハリスツイードの特徴と歴史。ハリスツイードとして認められる条件について

ハリスツイード(HarrisTweed)とは、スコットランドのアウター・ヘブリディーズ諸島で作られている伝統的な毛織物を意味します。

スコットランドの西側に浮かぶアウター・ヘブリディーズ諸島は、古くはロングアイランドと呼ばれ、非常に長い距離に渡って島々が点在しており、その中のルイス島(Lewis)とハリス島( Harris)がハリスツイードの故郷といえます。

北に位置する大きい島がルイス島で、南に位置する小さい島がハリス島であり、地理上では陸続きでつながっている一つの島ですが、通常二つの島と考えられています。

あえて人々が別名で呼んでいたのは、ハリス島は岩山が連なり木々が少ないなど、二つの島の環境が非常に異なっていたためです。
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酸化鉄から作る絵具、花赤と有馬温泉で染める湯染木綿

江戸時代に作り出された絵具えのぐに、「花赤はなあか」というものがありました。

今では有馬の辻絵具店だけでしか、製造されていない花赤はなあかですが、作り方は大変興味深いものです。

江戸時代に作り出された絵具である花赤

花赤はなあかは、酸化鉄を水につけ、毎日その上澄み液を捨てるという作業を繰り返すこと約10年かけてできます。

花赤はなあかについては、下記の記事が良くまとまっています。

参照:人間国宝の愛した「花赤」という絵具

酸化鉄で色を染める

有馬ありまでは、湯染木綿という名前で、温泉の湯を利用して木綿布を染めたものが土産として売られていました。

有馬の湯染木綿

温泉で染めるのは、有馬温泉だけの産物ではなく、赤い湯といわれる赤褐色せっかっしょくに濁った酸化鉄を含む温泉であればどこでも染められるものです。

群馬県の伊香保いかほ温泉などでも、大正10年(1921年)頃まで、温泉で染めた浴衣や手拭いなどが売られていたようです。

湯染木綿の発祥がいつなのかは不明ですが、明治15年(1882年)の『湯山町輸出入物品概表』には、「湯染木綿15反15円」とあり、この頃には有馬(湯山町とは、有馬の旧地名)において湯染木綿が作られていたのがわかります。

湯染木綿が有馬土産として作られていたのは、昭和初期までとされています。

かえでの葉っぱを使用し、たたき染めで模様を表現したりもしていたようです。

【参考文献】『月刊染織α 1983年No.31』

染色における顔料と染料の違いと特徴。顔料を意味する言葉の歴史について

顔料(pigment)と染料(dye)という言葉がありますが、その意味の違いや特徴はどのようなものでしょうか。

染色における顔料と染料の違い

現代における染料と顔料の違いと、言葉を使い分ける基準はどのようになっているのか。

上村六郎氏の『東方染色文化研究』では、染料と顔料について以下のように書いてあります。

染料とは一般に布帛ふはくに染著(染着)する性質を有するものを指し、顔料とは布帛ふはくに染著(染着)しない性質のもとを指している。従って別な云い方をすれば、染料とは色染に使用するものであり、顔料とは(絵)又は彫刻其他そのほかのものの彩色に使用するものである。

上記では、染料は織物などを染めるものであり、顔料は絵や彫刻などに色付けするものと言っています。

上村六郎氏の説明から読み取れることは、染料、顔料という呼び名は、その使い方と性質によって区別できるということがわかります。

染料と顔料の性質の違いとしては、物質を溶かすのに用いる水やアルコールなどの液体(溶剤)に溶ける色を染料、溶けないものを顔料として区別できます。

分子で染めるのが染料での染色で、粒子で染めるのが顔料による染色というイメージをするとわかりやすいです。

顔料と染料の違いを理解することが生活に役立つ

染色をする際は、顔料と染料の特徴を踏まえたうえで、用途によってうまく使い分けることが必要です。

染められたものを消費する側に立ったときでも、それぞれの特徴や違いを理解しておくことが大切なのです。

例えば、顔料をつかって染色された衣類などは、ムラになりやすかったり色落ちしやすいので、扱い方をきちんと認識しておくことで、そもそも色落ちを楽しめたり、色が落ちても変にがっかりしなくて済みます。

顔料と染料の違いというのは、なんとなくわかっているようだけれど、改めてしっかりと理解していると生活に役に立つことがあるのです。

顔料と染料の特徴

顔料と染料は、染め方や染まり方が違うため、それぞれ違った特徴や性質を持ちます。

顔料

顔料はそれ単体では、繊維と結びつくことができないので、(素材の表面にくっつくことができない)樹脂やタンパク質、オイルなどで固着させます。

昔から友禅染では、大豆をすりつぶして水を加えた呉汁ごじるをつかって、色止めをしたりしています。

その他、顔料の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 太陽光やライトの光によって色落ちしにくい(日光堅牢度が高い)
  • こすったりすると色落ちしやすい(摩擦堅牢度が低い)
  • 顔料が細かい粒状になっているため、染めた布が重くなる
  • 色を混ぜるとムラになりやすい

顔料は、無機顔料や有機顔料に区別することができます。

無機顔料は、鉱物顔料とも言われており、日本においては化粧の原点とも言われる赤化粧には、酸化鉄を含む天然の鉱物が使用されていました。

無機顔料は、現代では化学的に合成されたもので、安全性高く、多くの生活日用品に使用されています。

有機顔料は、石油などから合成した顔料です。

染料

染料はそれ単体で、科学的に繊維と結びつくことができます。

染料の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 太陽光やライトの光によって色落ちしやすい(日光堅牢度が低い)
  • 顔料に比べると、こすったりしても色落ちしやすい(摩擦堅牢度が高い)
  • 色を混ぜてもムラになりにくい

顔料を意味する言葉と歴史

顔料という言葉は一般的に定着していますが、実は、何度も変化を繰り返しながら今のようになっていった歴史があります。

日本において、顔料という言葉を意味する古い表現として、「彩色」「彩色物」「彩色料」などが挙げられます。『日本書紀』 では、「彩色しみのもののいろ」という言葉が出てきます。

顔料という言葉のルーツは中国にあるとされますが、中国は支那の古い名称では、丹青たんせい、または青黄といったものがあります。

938年頃、平安時代中期に作られた辞書である倭名類聚抄わみょうるいじゅしょうでは、染料は「染色具」と呼ばれ、顔料のことは「圖繪具ずえぐ」と呼ばれていました。

鶴田榮一氏の「顔料を意味するいろいろの用語とその変遷」には、顔料という言葉を巡る歴史がわかりやすくまとめられています。

下記の図は、「顔料を意味するいろいろの用語とその変遷」からの引用です。

彩色に始まり、丹青、丹、色料、彩色、絵具などと顔料を表す言葉がさまざま存在していたことがわかります。

顔料を意味する用語は、「エノグ」と訓読されていましたが、その一覧が「顔料を意味するいろいろの用語とその変遷」にはあります。

江戸時代には漢字表示の用語として、「顔料」と書かれたものがありましたが、それも「ガンリョウ」ではなく、「エノグ」 と訓読されていたようです。

明治時代になり、近代化された顔料を製造する企業が出てきますが、江戸時代と同じように顔料は「絵具」であり、顔料ガンリョウへの移行は進みませんでした。

その後、明治40年(1907年)に政府公式の文章で初めて今日と同じ顔料ガンリョウという用語が使われるようになりました。

【参考文献】「顔料を意味するいろいろの用語とその変遷

不織布(ふしょくふ)とは。不織布の歴史や特徴、用途について

新型コロナウィルスの世界的大流行によって、一時は万人にとってマスクが日常生活に欠かせないものになりました。

2020年1月、日本においても感染が出始めた頃、瞬く間にマスクが品切れで購入できない事態となったことは記憶にあたらしいです。

そんななか、販売されているマスクのほとんどが不織布ふしょくふ(non‐woven fabric)という素材でできていることを知ったという人も、多くいたのではないでしょうか。

不織布ふしょくふとはどのような特徴があり、どのような用途で活用されているのでしょうか。 続きを読む

染色における堰出し型(せきだしがた)と地白型について

堰出せきだしとは、柄の外部分をのりで伏せて、柄部分をを手挿てざしや刷毛はけで染め上げる京友禅の技法を表す言葉です。

堰出せきだし型は、白抜き型のように模様自体が白く抜ける型ではなく、模様の部分の周りにのりを置くので、地が白くなり、模様部分を染めることになります。

白抜き型であれば、模様部分を彫っていけばいいのですが、堰出せきだし型では模様部分の周りを彫り、模様の形を彫り残します。

地白型(堰出し型) ,型紙

地白型(堰出し型) ,型紙,Metropolitan Museum of Art, CC0, via Wikimedia Commons,Link

型紙としては不安定な型になるので、堰出せきだし型では「つなぎ(吊り)」が必要になってきます。 続きを読む