投稿者「iroai.jp」のアーカイブ

染色における没食子(もっしょくし)

没食子もっしょくし(Gallnuts/Oak apple/Oak gall)は、西アジアや中東に産し、タンニン剤として有名です。

没食子もっしょくしとは、ブナ科のナラ(学名:Quercus)やカシなどの若枝の付け根に寄生したタマバチ(Cynips gallaetinctoriae)によってできる「虫こぶ」のことを表します。

植物に昆虫が産卵、寄生した結果、寄生物の出す分泌物質などで異常な発育を起こした部分を「虫癭ちゅうえい」と言います。 続きを読む

染色・草木染めにおけるモッコク(木斛)

モッコク(学名:Ternstroemia gymnanthera)は、モッコク科モッコク属の常緑樹で、樹高は6m〜10mを越えるほどにも成長します。

病虫害に強く、葉に光沢があり美しく、樹形が整うため、公園の樹木や、庭木として古くから武家屋敷などに植えられてきました。

花の香りがラン科の石斛せっこくに似た木という意味で、江戸時代初期に木斛もっこくと名づけられました。

モッコク(木斛もっこく)の材はきめが細かくで細工物に向いており、堅くて美しい赤褐色せっかっしょくをおびる材を建材やくしなどの木工品の素材として用いられています。

木材が赤いため、「アカギ」という別名もあります。

モッコク(木斛)Ternstroemia gymnanthera kz1

モッコク(木斛)Ternstroemia gymnanthera,Krzysztof Ziarnek, Kenraiz, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

樹皮は、繊維を茶色に染める染料として利用されてきました。

続きを読む

染色・草木染めにおけるモチツツジ(黐躑躅)

モチツツジ(学名:Rhododendron macrosepalum)は、ツツジ科ツツジ属の植物で樹高は1m~2mほどに成長します。

名前に「モチ」と付くだけあり、花の外側にあるがくや葉などから粘着性のある液体を分泌します。

モチは食べる餅ではなく、「鳥モチ(鳥や昆虫を捕まえるのに使うゴム状の粘着性の物質)」のモチに由来しています。

また、モチツツジ以外にも、ネバネバした様子から「ネバツツジ(粘躑躅)」という別名もあります。

続きを読む

染色・草木染めにおけるメギ(目木)。小蘗(しょうばく)を利用した黄染について

メギ(学名:Berberis thunbergii)は、山地の落葉樹林に生える落葉小低木です。

和名の目木めぎ由来としては、枝や根を煎じたものは黄色になり、洗目薬として目の病気に使用されたことから名付けられたとされます。

メギ(目木)の生薬名は小蘗しょうばくといい、薬用のみならず、染色にも用いられてきました。

メギ(目木)の花と葉,Berberis thunbergii (flower s3)

メギ(目木)の花と葉,Berberis thunbergii,Alpsdake, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

続きを読む

染色・草木染めにおける檳榔子(びんろうじ)

檳榔びんろう(学名:Areca catechu)は、東南アジアや東アフリカの一部で見られるヤシ科の植物で、種子は檳榔子びんろうじといいます。

ヤシ科の植物ですが、ココヤシと違って幹は真っ直ぐに伸びるのが特徴で、樹高は10m~20mに達します。

雄花と雌花が同一個体に生ずる雌雄同株しゆうどうしゅであり、1つの花序かじょに、雌花(めばな)と雄花(おばな)の花をそれぞれつけます。 続きを読む

デザインという概念・思想のはじまり。デザインの本質は、モノに意味を与えること

デザインという概念の発生は、社会思想家のジョン・ラスキンや思想家であり芸術運動家であったウィリアム・モリスの思想がその源流として考えられています。

19世紀半ば、イギリスで産業革命がおこります。綿織物の製造における紡績機の開発、製鉄業の成長、蒸気機関の開発による動力源の改革、蒸気船や鉄道が発明されたことによる交通革命等、人の手ではなく、産業機械の発明と発展が大きく経済を動かし始めたのです。

初期の機械生産は、いいかげんで大ざっぱなものづくりであり、品質的には人の手が生み出すものと比べると、非常に劣るものでした。

そんな中、異常な速度で「下手なもの」が量産されていき、伝統的に手仕事が育んできた生活や文化、美意識をも奪っていくような機械生産に、意義を唱える人々も少なくありませんでした。

その代表的な人物が、ジョン・ラスキンとウィリアム・モリスです。 続きを読む

豆汁(ごじる),呉汁(ごじる)

顔料を定着させる方法。豆汁(ごじる)、膠(にかわ)、蜜蝋(みつろう)などの膠着剤(こうちゃくざい)について

顔料は、科学的に染め付くのではなく、物理的に染めつけることで色が定着します。

顔料は、水に溶けない不溶性のため、膠着剤こうちゃくざいと呼ばれる顔料を染める対象物に付着されるための助剤が必要になるのです。
続きを読む