椎は、ブナ科クリ亜科シイ属の樹木の総称で、シイ属は主にアジアに約100種類が分布しており、日本にはこの属が分布している北限となり2種が自生しています。
大きいものは25mにも達する大木となり、5月〜6月ごろに花が咲きます。
果実は完全に殻斗(どんぐりを包み、保護するもの)につつまれており2年目に熟します。
果実はいわゆる「どんぐり」であり、殻を割ると中の種子は白く、生で食べるとやや甘みがあります。
椎の実は、縄文時代にはクリに次いで重要な食料であったといわれているようです。
染色・草木染めにおける椎(しい)
椎の実の皮や樹皮は、タンニン剤として栗や櫟と同じように茶染めや黒染めに使用されます。
関連記事:染色・草木染めにおける櫟(クヌギ)。薬用効果や橡色(つるばみいろ)の歴史について
椎で茶色を染める
茶色の場合は、灰汁か石灰を媒染剤に使用します。
灰汁は、木材や藁の灰に水や熱湯を加えてかき混ぜ、一晩経つと灰が沈殿しますが、その上澄み液がアルカリ性の灰汁と呼ばれる液体になります。
関連記事:染色・草木染めにおける灰汁(あく)の効用と作り方。木灰から生まれる灰汁の成分は何か?
椎で黒色を染める
黒色の場合は、椎から煮出して抽出したタンニンを鉄分で媒染することによって黒色に染められます。
兼房染という染色技法が知られていましたが、樹木(梅や桃、山漆の葉など)の樹皮や根を煎じた汁で染めていました。
媒染に用いる鉄(カネ)は、不要になった刀を用いていたので、武士の間では、兼房染の羽織は敵に切られても手傷を負わないと信じられ、兼房染が流行したようです。
関連記事:兼房染(けんぼうぞめ)とは何か?