投稿者「iroai.jp」のアーカイブ

黄土(おうど)とは?黄土の染色方法や歴史について

黄土おうどによる染色は、植物染料の発達にともなって、次第に衰退していったと考えられますが、日本においても広い地域で黄土を使用した染めが行われていたのではないかと推測されています。

7世紀後半から8世紀後半にかけて編集された、現存する日本最古の歌集である『万葉集まんようしゅう』には、黄土おうどを詠ったとされるものが6首あり、大阪の住吉地域での黄土についての記述があります。 続きを読む

蓼藍(タデアイ)

地藍(じあい)とは?阿波藍に対する言葉である地藍について

地藍じあいとは、その土地で栽培された藍という意味でこの名前があります。

江戸時代になってから木綿の栽培が盛んになり、全国的に仕事着や日常着に着用されるようになったのが、藍染された紺木綿や紺絣こんがすりでした。

その藍の需要増加にうまく対応したのが、現在の徳島県の阿波あわで、藍の原料作りといえば阿波が本場とされました。 続きを読む

染色におけるフィックス剤・堅牢度増進剤(けんろうどぞうしんざい)

市場に出回っている商品の中で、染色されたものにおいては、日光や洗濯、水洗い、汗、摩擦などに対する丈夫さ、すなわち堅牢度けんろうどの良さが非常に重要な要素の一つです。

染料で染色、あるいは顔料で着色された繊維製品を検査する基準や検査方法が、日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standards)によって定められており、実用の面からみて重要とされるものは、①洗濯②摩擦③耐光④汗⑤水⑥ドライクリーニング⑦アイロンに対する堅牢度検査です。

検査の結果は、1級から5級に分けられ、数字が大きいほど堅牢度が高いとされます。 続きを読む

ラック(紫鉱)、染め色

象徴人類学と色彩。ンデンブ人にとって赤色・白色・黒色が象徴的に意味すること

人類学における色彩の象徴性に関する研究は、1960年以降に、象徴人類学の盛り上がりにともなって世界各地の民族を対象に研究が行われるようになりました。

象徴人類学とは、人間はさまざまな現象を人為的に区別し、意味のあるカテゴリーに分けている(象徴づける)ことで世界を把握しているというように、現象を象徴によって読み解こうとする新しい方向性を人類学に示した学問です。

色彩の象徴性についての研究で有名なのが、ヴィクター・ターナーによるザンビア北西部州のンデンブ人の色彩象徴に関するものです。 続きを読む

染色におけるケルメス(Kermes)

ケルメス(Kermes)は、動物染料の一つで、15世紀頃までヨーロッパで赤や緋色に染める染料として珍重され、広く使用されていました。

ケルメスは、ブナ科植物に寄生し、樹液をエサとし、メスが天然のクリムゾン染料の原料となります。 続きを読む

ウール(羊毛)の特徴と素材の特性。ウール(羊毛)はなぜ縮むのか?

ウール(羊毛ようもう)は、家畜として飼育されている羊の毛を言い表します。

国際的な商取引では羊毛に限って「ウール(wool)」と呼んでおり、他の獣毛じゅうもう繊維を「ヘア(hair)」と呼んで区別しています。

品質表示において「毛」と表記する場合は、すべての獣毛じゅうもうに適応できます。

高級品であること示すために、カシミヤ(cashmere)モヘア、アンゴラなどとそれぞれ表記できる場合もあります。

Wilderness Road - Sheep for wool (7047953945)

Sheep for wool,Virginia State Parks staff, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons,Link

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デザインにおける月象文(げっしょうもん)

日本において、月を題材にした模様(文様)は「月象文げっしょうもん」として、古くから活用されてきました。

月の姿が変化していく様子は、季節ごとの情趣じょうしゅ(風情)を表し、「花鳥風月かちょうふうげつ」として好んで詩歌にも詠まれてきました。

工芸品や染織品など、月を模様(文様)に取り入れた優れた作品が数多く作られてきました。 続きを読む

生機(原反)加工の流れ。精錬、毛焼き、糊抜き、漂白等。P下、下晒し生地について

織り機や編み機で加工し、出来上がったばかりの生地のことを、「生機きばた」や「原反」げんたんといいます。

織り上がった生地をそのまま未加工で使用する場合もありますが、油脂ゆしや繊維のカスなどの不純物が混在していることが多いため、基本的には加工してから商品として出荷されます。

倉敷帆布を織るシャトル織機の様子

倉敷帆布を織るシャトル織機の様子,Baistone, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

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蚕(かいこ)の繭(まゆ)。絹糸(シルク糸)の原料

シルク(絹)とは?シルクの性質と特徴、美しい光沢感をもつ理由について

シルクは、綿や羊毛(ウール)と違い、連続した細い繊維でできており、しなやかな感触と優雅な光沢感を持っています。

シルクを産出しなかったヨーロッパでは、シルクはシルクロードを通って遠く中国から運ばれ、同じ重さの黄金と同じ価格で取引されたと言われています。

人類は5000年以上も前から、マユを利用して糸をつくることを知っていたようですが、現代においては貴重で最高の繊維とされているシルクの特徴としては、さまざま挙げられます。 続きを読む