投稿者「iroai.jp」のアーカイブ

『広益国産考』(こうえきこくさんこう)大蔵永常(著)

『広益国産考』(こうえきこくさんこう)における染織に関する記述

江戸時代後期の農学者である大蔵永常おおくらながつね(1768年〜1860年)は、宮崎安貞みやざきやすさだ佐藤信淵さとうのぶひろとともに、江戸時代の三大農学者の一人とも言われています。

大蔵永常おおくらながつねの著書で、全八巻から成る『広益国産考こうえきこくさんこう』には、60種類ほどの商品作物を取り上げられ、栽培や加工方法、作物に適した農具や流通過程などについての記載があります。 続きを読む

葛布(くずふ)

染色・草木染めにおける葛(くず)。薬用効果や歴史について

くずは(学名Pueraria lobata. )、日本全土で見られるマメ科の多年草で、くきはつる状に伸びて長さは10メートル以上にもなります。

くずは、染料植物としての歴史はほとんどありませんが、日本や中国では人々の生活において、様々な分野で活用されてきた有用植物です。

夏から秋にかけて、20cmくらいの花序かじょを出し、赤紫がかった蝶形花ちょうけいかが下方から順に咲いていきます。

葛(くず),Pueraria montana var lobata kudzu Flower20170827 IMG 1664

葛(くず)Pueraria lobata,あおもりくま, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link

くずは、土手や荒地など日当たりの良い斜面によく見られ、繁殖力があります。

長いつるを伸ばして他の草木を覆い隠すので、厄介な雑草として扱われることもありますが、はるか昔の万葉の時代頃からの秋の七草の一つに数えられ、親しまれてきました。 続きを読む

元禄文様(げんろくもんよう)・元禄袖(げんろくそで)について

元禄げんろく時代(1688年〜1704年)は、豊かになった町人が主体となり、華やかな文化様式が生まれました。

華麗な元禄風俗げんろくふうぞくは、西陣織にしじんおり友禅染めを主とする京都・大阪の手工業の成立によって生まれ、上方風俗が最も流行した時代とも言えます。

江戸時代の上方文化に代表される華やかな時代を意味して「元禄げんろく」という言葉が使われ、服飾においても「元禄文様げんろくもんよう」や「元禄袖げんろくそで」などの言葉があります。
続きを読む

黄土(おうど)とは?黄土の染色方法や歴史について

黄土おうどによる染色は、植物染料の発達にともなって、次第に衰退していったと考えられますが、日本においても広い地域で黄土を使用した染めが行われていたのではないかと推測されています。

7世紀後半から8世紀後半にかけて編集された、現存する日本最古の歌集である『万葉集まんようしゅう』には、黄土おうどを詠ったとされるものが6首あり、大阪の住吉地域での黄土についての記述があります。 続きを読む

蓼藍(タデアイ)

地藍(じあい)とは?阿波藍に対する言葉である地藍について

地藍じあいとは、その土地で栽培された藍という意味でこの名前があります。

江戸時代になってから木綿の栽培が盛んになり、全国的に仕事着や日常着に着用されるようになったのが、藍染された紺木綿や紺絣こんがすりでした。

その藍の需要増加にうまく対応したのが、現在の徳島県の阿波あわで、藍の原料作りといえば阿波が本場とされました。 続きを読む

染色におけるフィックス剤・堅牢度増進剤(けんろうどぞうしんざい)

市場に出回っている商品の中で、染色されたものにおいては、日光や洗濯、水洗い、汗、摩擦などに対する丈夫さ、すなわち堅牢度けんろうどの良さが非常に重要な要素の一つです。

染料で染色、あるいは顔料で着色された繊維製品を検査する基準や検査方法が、日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standards)によって定められており、実用の面からみて重要とされるものは、①洗濯②摩擦③耐光④汗⑤水⑥ドライクリーニング⑦アイロンに対する堅牢度検査です。

検査の結果は、1級から5級に分けられ、数字が大きいほど堅牢度が高いとされます。 続きを読む

ラック(紫鉱)、染め色

象徴人類学と色彩。ンデンブ人にとって赤色・白色・黒色が象徴的に意味すること

人類学における色彩の象徴性に関する研究は、1960年以降に、象徴人類学の盛り上がりにともなって世界各地の民族を対象に研究が行われるようになりました。

象徴人類学とは、人間はさまざまな現象を人為的に区別し、意味のあるカテゴリーに分けている(象徴づける)ことで世界を把握しているというように、現象を象徴によって読み解こうとする新しい方向性を人類学に示した学問です。

色彩の象徴性についての研究で有名なのが、ヴィクター・ターナーによるザンビア北西部州のンデンブ人の色彩象徴に関するものです。 続きを読む

染色におけるケルメス(Kermes)

ケルメス(Kermes)は、動物染料の一つで、15世紀頃までヨーロッパで赤や緋色に染める染料として珍重され、広く使用されていました。

ケルメスは、ブナ科植物に寄生し、樹液をエサとし、メスが天然のクリムゾン染料の原料となります。 続きを読む