投稿者「iroai.jp」のアーカイブ

縞織布『江戸・明治藍の手染め』愛知県郷土資料刊行会

縞(しま)の語源と由来。筋文様(縞模様)を表す「嶋」「島」「縞」について

2色以上の糸を使用し、経(たて)、または緯(よこ)、あるいは経緯にすじを表した模様(文様もんよう)を、しま格子こうしと呼んでいます。

縞織物は基本的に、縦縞(竪縞たてじま)、横縞よこじま格子縞こうしじまの3種類のうちのどれかに当てはまります。

使用されている糸の色や素材、糸の太細、緻密ちみつさ、配色、縞の幅の広狭こうきょう、金銀糸の使用、紋織もんおりの併用など、組み合わせによってありとあらゆるの縞織物が存在します。

しまという言葉は、すじ文様を総称する言葉として使われていますが、江戸時代の記述では、「しま」の他にも「しま」や「しま」、「間道かんどう」という字が当てられています。

嶋物しまものという言葉は、江戸時代初期の茶道における茶会記ちゃかいきに頻繁に表れ、嶋物しまものすじ文様の織物に限らず、外来の茶道具(きれ)全般を表す言葉としても使用されていました。

日本の服飾史において、古くから「すじ」と呼ばれてきた文様に、「しま」という名前が与えられていく背景には歴史があります。

室町時代後期から江戸時代前期にかけて、「しま」の名称をめぐる由来について、本記事でたどっていきます。 続きを読む

染色・草木染めにおける紫根(しこん)。紫草(むらさき)の薬用効果や歴史について

紫色を染める材料としては、古代から紫草むらさきが主に使用されてきました。

紫を染める草というので、紫草むらさきと書きますが、染色に用いるのはその根で、「紫根しこん」と言います。

紫草むらさき(学名 Lithospermum erythrorhizon)は、ムラサキ科の多年草で、日本や中国、朝鮮、ロシアなど広く分布しており、山地や草原に自生しています。

Lithospermum erythrorhizon (Boraginaceae) (35666554771)

紫草,Lithospermum erythrorhizon,yakovlev.alexey from Moscow, Russia, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons,Link

樹高は、30〜60cmほどに成長し、6〜7月に白い花が小さく開き、小粒の琺瑯質ほうろうしつの実をつけます。

白い花が群れて咲くことから、「むらさき」の名前があるともいわれています。 続きを読む

茶屋染(ちゃやぞめ)・茶屋辻(ちゃやつじ)とは?藍染で総文様に型染めされた帷子(かたびら)について

茶屋染ちゃやぞめは、江戸時代初期頃から行われていた型染めの一つです。

主に武家の女性が着用した帷子かたびらの染色方法で、藍色一色で型紙を用いて全体に模様が入るように(総模様)染めたものです。 続きを読む

紅花から精製した紅花餅(こうかべい)

紅花の原産地は、中央アジアやエジプト、メソポタミア地方あたりではないかとされていますが、はっきりはしていません。

紅花が日本に渡来したのは、シルクロードを通じて古墳時代に伝来し、古代中国から「呉藍くれない」として輸入されたものと伝えられています。

花は染料としてだけでなく、薬用としても用いられ、種子からは油も絞れるため、幅広い用途に使用されました。 続きを読む

着物(きもの)の語源と意味について

着物は広義には身体に着る衣服の意味で用いられ、狭義には洋服に対する和服全般を表します。

年齢や性別、種類などは無関係で、さらに狭義の場合は、和服の中でも長着のようなものを表す場合があります。

いわゆるワンピースのような形で体に巻き付け帯を締めて着る表着を、羽織や襦袢じゅばんなどと区別していいます。

着物の種類によっては裏地がつけられることも多くあり、江戸時代中期ごろには表地を質素にし、裏地に高価なものを用いることが流行しました。

絵師に頼んで、裏地に絵を描かせて模様をつけるということもあったようです。

着物(きもの)の語源

着物(きもの)の語源は、「着る物が詰まった」とされ、室町時代末期には「着る物」と「着物」が併用されており、のちに「着物」の語が定着したとされています。

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『広益国産考』(こうえきこくさんこう)大蔵永常(著)

『広益国産考』(こうえきこくさんこう)における染織に関する記述

江戸時代後期の農学者である大蔵永常おおくらながつね(1768年〜1860年)は、宮崎安貞みやざきやすさだ佐藤信淵さとうのぶひろとともに、江戸時代の三大農学者の一人とも言われています。

大蔵永常おおくらながつねの著書で、全八巻から成る『広益国産考こうえきこくさんこう』には、60種類ほどの商品作物を取り上げられ、栽培や加工方法、作物に適した農具や流通過程などについての記載があります。 続きを読む

葛布(くずふ)

染色・草木染めにおける葛(くず)。薬用効果や歴史について

くずは(学名Pueraria lobata. )、日本全土で見られるマメ科の多年草で、くきはつる状に伸びて長さは10メートル以上にもなります。

くずは、染料植物としての歴史はほとんどありませんが、日本や中国では人々の生活において、様々な分野で活用されてきた有用植物です。

夏から秋にかけて、20cmくらいの花序かじょを出し、赤紫がかった蝶形花ちょうけいかが下方から順に咲いていきます。

葛(くず),Pueraria montana var lobata kudzu Flower20170827 IMG 1664

葛(くず)Pueraria lobata,あおもりくま, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link

くずは、土手や荒地など日当たりの良い斜面によく見られ、繁殖力があります。

長いつるを伸ばして他の草木を覆い隠すので、厄介な雑草として扱われることもありますが、はるか昔の万葉の時代頃からの秋の七草の一つに数えられ、親しまれてきました。 続きを読む

元禄文様(げんろくもんよう)・元禄袖(げんろくそで)について

元禄げんろく時代(1688年〜1704年)は、豊かになった町人が主体となり、華やかな文化様式が生まれました。

華麗な元禄風俗げんろくふうぞくは、西陣織にしじんおり友禅染めを主とする京都・大阪の手工業の成立によって生まれ、上方風俗が最も流行した時代とも言えます。

江戸時代の上方文化に代表される華やかな時代を意味して「元禄げんろく」という言葉が使われ、服飾においても「元禄文様げんろくもんよう」や「元禄袖げんろくそで」などの言葉があります。
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