デザインにおける隠笠文(かくれがさもん)・隠蓑文(かくれみのもん)

隠笠文かくれがさもんとは、宝尽くし文(たからづくしもん)のひとつで、この笠をかぶるとどこからも見えないという想像上の宝物です。

隠蓑文かくれみのもんも同じく宝尽くし文(たからづくしもん)のひとつで、これを着用すれば身を隠すことができるとされていた想像上のみのです。

みのとは、稲のわらなど、主に植物を編んで作られた伝統的な雨具の一種です。

隠笠文かくれがさもん隠蓑文かくれみのもんは、吉祥きっしょうの意味を持っていたことから染織品のデザインに多く用いられてきた模様(文様)です。

繊維におけるセルロース(cellulose)。セルロースが主成分である繊維に表れる特徴について

繊維におけるセルロース(cellulose)とは、天然の有機化合物のひとつで、植物に細胞(cell)として生成しています。

セルロースは、フランス人化学者であったアンセルム・ペイアン(1795年〜1871年)によって発見され、命名されました。 続きを読む

草木染めで木綿を染める方法。濃染剤(のうせんざい)を使用した方法が、簡単で染まりやすくオススメ

ウールやシルクなどの動物性の繊維であれば、比較的かんたんに染められますが、木綿を草木染めする場合は非常に難しいです。

草木を煮出して染め液を抽出しない藍染であれば、木綿との相性が良いのでよく染まりますが、いわゆる草木染めのなかでは特殊な例となっています。

一般的な煮出して染めるような草木染めは植物性の繊維に染まりづらいので、木綿や麻などの植物性の繊維を染めるためには特殊な下処理が必要です。

木綿を草木染めで染色する場合、例外的に絹よりよく染まることもありますが、基本的には絹に比べて染まりが悪く、染まったとしても淡くしか染まりません。 続きを読む

染色・草木染めにおける、紅露(クール)・そめものいも

そめものいも(学名Dioscorea cirrhosaは、ヤマノイモ科に属する熱帯地域に自生する植物で、長さが10mにもなるつる性の多年草です。

沖縄の八重山上布やえやまじょうふの絣糸を染めるための茶色の染料として「染物芋そめものいも」(クール・紅露こうろ)が知られています。

和名の「そめものいも」は、地中に80㎝ほどにも成長する黒みがかった赤色の塊根かいこんいも)があり、これが赤褐色せっかっしょくの色素を含み、染色に使用することから由来しています。

そめものいもは、マングローブの木(漂木ひるぎ)や車輪梅しゃりんばいなどと共に、魚介類を捕獲するために用いる漁網ぎょもうを丈夫にし、扱いやすくするために使用されたカテコールタンニン系の染料です。

マングローブの樹皮にはタンニンが多く含まれているので、抗菌や防腐の効果も高いとされています。 続きを読む

デザインにおける額文(がくもん)

額文がくもんとは、神社仏閣などに掲げる額を模様化(文様化)したものです。

紋章には、神聖視する意味で額文がくもんが用いられました。

江戸時代中期ごろには、額文がくもん小袖こそでおびに用いることが流行します。

江戸時代中期に作られたとされる「唐織からおり 紅地七宝繋額模様べにじしっぽうつなぎがくもよう」は、地紋じもんの七宝繋ぎ模様をすべて平金糸ひらきんしで織り出し、額文がくもんの中にはさまざまな細かいデザインが巧みに採り入れています。

唐草模様(からくさもよう)伊勢型紙

デザインにおける花卉文(かきもん)

花卉文かきもんとは、草花や樹木を模様化(文様化)したものを表します。

ヨーロッパでは草花や樹木を写生的(自然や事物を実際に見たままに描くこと)に扱うことが少なく、ロゼット(rossette)やパルメット(palmette)、唐草模様などにデザインされましたが、東アジアや日本などでは写実的に扱われることが多くありました。

古くは、中国やインド、ペルシャなどからの影響が大きく、唐花からはな宝相華ほうそうげなどの空想的な花卉文かきもんが愛好されていました。

近世以降は、特に、藤や燕子花かきつばた、紅葉などを写生的に扱い、花卉かきの趣や季節感が表現されてきました。

デザインにおける垣根文(かきねもん)

垣根文かきねもんは、家屋の外周に設けた垣根を模様化(文様化)したものです。

材料や作り方、形や好み、場所などによってさまざまな種類の垣根文かきねもんがあります。

花卉文かきもんや風景文と共に用い、情趣が添えられます。

花卉文かきもんとは、地面から生えた草花を模様化(文様化)にしたもので、牡丹ぼたん石榴ざくろ、菊、椿つばき薔薇ばらなどの植物がよく用いられます。

デザインにおける燕子花(かきつばた)

燕子花かきつばたは、アヤメ科の植物で池や沼、湿地に自生しています。

日本においても親しまれており、7世紀後半から8世紀後半にかけて編集された、現存する日本最古の歌集である『万葉集まんようしゅう』には、燕子花かきつばたが詠われています。

平安時代の歌人である在原業平ありわらのなりひら思わせる男を主人公とした和歌にまつわる短編歌物語集である『伊勢物語』には、五七五七七の最初の文字を並べると「かきつはた」になる下記の一首を詠んでいます。

衣 つつなれにし ましあれば るばるきぬる びをしぞ思ふ

現代語訳 (何度も着て身になじんだ)唐衣のように、(長年なれ親しんだ)妻が(都に)いるので、(その妻を残したまま)はるばる来てしまった旅(のわびしさ)を、しみじみと思うことです

古くから燕子花かきつばたが日本人の美意識や情感に非常にうまくマッチしていたと言え、さまざまなデザインの題材にも用いられてきました。
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