染色・草木染めにおける、そめものいも(クール・紅露)


そめものいも(学名Dioscorea cirrhosaは、ヤマノイモ科に属する熱帯地域に自生する植物で、長さが10mにもなるつる性の多年草です。

沖縄の八重山上布やえやまじょうふの絣糸を染めるための茶色の染料として「染物芋そめものいも」(クール・紅露こうろ)が知られています。

和名の「そめものいも」は、地中に80㎝ほどにも成長する黒みがかった赤色の塊根かいこんいも)があり、これが赤褐色せっかっしょくの色素を含み、染色に使用することから由来しています。

そめものいもは、マングローブの木(漂木ひるぎ)や車輪梅しゃりんばいなどと共に、魚介類を捕獲するために用いる漁網ぎょもうを丈夫にし、扱いやすくするために使用されたカテコールタンニン系の染料です。

マングローブの樹皮にはタンニンが多く含まれているので、抗菌や防腐の効果も高いとされています。

染色・草木染めにおける、そめものいも(クール・紅露)

そめものいもは、沖縄ではクールとも呼ばれます。

久留米絣くるめがすりに使用されている「グール」と呼ばれるユリ科のハマサルトリイバラと混同されることがありますが、「クール」とは別物です。

良いクールを得るためには、斜面にこんもりと土を盛り上げている株で、多数のつるを出しつつも、何本かが枯れているような古株を探します。

土を掘り起こすと、いもがいくつも折り重なるように生えていて、朽ちかけているのから若いものまで、総重量で60kgほどにもなる個体があります。

そめものいもの染色方法

そめものいもの染色方法は、2種類あります。

摺(すり)染め

いもをすりおろして、布袋に入れて汁を絞り、平たい器に移して、天日の元で水分を蒸発させることで、泥状か固形にして染色の原料として保存します。

八重山上布やえやまじょうふの絣を染める際は、保存しておいた原料を泡盛で適度に溶いて染液として、竹ベラで糸に直接り込んでいきます(り込み絣)。

関連記事:沖縄の絣織物の技法。琉球絣の歴史

織り上げたものを天日干しした後、重クロム酸カリウム液で媒染色止めを行い、色を定着させます。

この方法では、小さな絣模様まで正確に染められるという長所がありますが、絣の良さでもある「かすれ」が表現しづらい点がデメリットとしてあります。

煮染め

いもを細かく刻んで、水を加えて煎じて染液をとります。

媒染ばいせんには、灰汁、石灰、重クロム酸カリウムなどを用いて赤紫色に染まります。

鉄媒染すると焦茶こげちゃに染まり、藍を染め重ねると黒色に染まります。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です