和服・着物における帯(おび)の由来や語源について


和服・着物におけるおびは、主に和服の胴部分に巻きつけて、着物がはだけるのを防いだり、下半身に着用している衣服がずり落ちないようにしたりする役割のものをいいます。

かつてはおび武器などを体に固定しておいたり、権威などの象徴として装飾的な性格も持っていました。

帯(おび)の由来

着物などの和装用の帯は、古くはひもというべきものでした。

古事記こじき』(712年)では、「多羅斯(たらし)」とも表記しており、由来としては結んだひもの端を垂らしていたからとされます。

紐の形状に近いくらいに細い帯は、「細帯ほそおび」といい、現在のような幅広の帯が登場するのは、安土桃山時代(1568年〜1598年)頃からです。

帯の起源は、着用している衣服を固定するという機能面以外にも、下半身から悪霊が入るのを防ぐという呪詛じゅそ(まじない)という側面もあったようです。

帯祝い(おびいわい)における岩田帯(いわたおび)

妊娠している妊婦が、安定期に入る妊娠5か月目頃のいぬの日に、「岩田帯いわたおび」と呼ばれる腹帯を巻いて安産を願う風習(帯祝おびいわい)があります。

安産祈願のための「帯祝おびいわい」は、江戸時代に行われるようになった日本独特の文化です。

帯祝いの由来としては『古事記こじき』(712年)の記載における「神功皇后じんぐうこうごうが懐妊された際の帯に関する記述」が起源になったともいわれています。

帯祝いに使用される岩田帯いわたおびは、本来「斎肌帯いはだおび」のことで、お腹を保護し、冷やさないために保温し、胎児の位置を正常に保つ目的がありました。

妊娠5か月目頃のいぬの日に「帯祝い」が行われた理由としては、縁起の良い「5」という数字と、多くの子を安産しお産が軽いとされる犬にあやかるためとも言われます。

帯(おび)の語源

「帯」の語源には諸説あり、以下のような言葉が挙げられます。

  1. おぶ
  2. おぶ
  3. 大振おぶ
  4. 燕尾えひ
  5. 緒結おひ
  6. 大引おひ
  7. 大紐おひ

「体に着物をびさせる(取り付けて保持させる)」の意味があるおぶが帯の語源として説得力があります。

「帯」の音読みでは「たい」ですが、字のかんむり(漢字の部首で上部に置かれるものの総称)は、「紐で物を通した」形であり、字の脚(下側に位置する部分)は「きん」(本来は礼装の際に用いる前掛け)→布」を表します。

したがって帯は、「布で巻き締める」という意味になります。

古代中国では帯を「しん」といい、「しん」は、「物を束ねる布」という意味で、「大きな帯」を指すようになります。

このことから立派な長い帯(大帯)を締めて身を飾った貴族、富裕階級の男性を「紳士しんし」といったのです。


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