京都は、三方を山に囲まれ、町の中に清流が流れる、古くから「山紫水明さんしすいめい」の都といわれた歴史ある町です。

町の中央に堀川が流れ、西には桂川、東に鴨川というように、染色に必要な水に恵まれたことも、友禅ゆうぜん染めが発達した要因の一つといえます。

日本の染色技術の集大成である友禅

京都に友禅染めが完成されたのは、江戸時代初期の元禄げんろく年間（1688年〜1704年）といわれ、扇絵師・宮崎友禅斎みやざきゆうぜんさいの創案した染法とされています。

友禅染めの特徴である、もち米を主原料にした防染糊ぼうせんのりによる染色方法は、宮崎友禅斎みやざきゆうぜんさいが登場する元禄げんろく以前に「茶屋染ちゃやぞめ」というものがありました。

茶屋染ちゃやぞめの染色方法は、麻地に模様の輪郭と地の部分とを防染糊ぼうせんのりで両面防染し、藍一色によって浸染しんぜん（しんせん）します。

茶屋染ちゃやぞめは、夏の麻織物に用いられた染色技法ですが、とても手数のかかる贅沢なものであったため、徳川御三家や上級武家の女性、御殿の女中などしか着用できませんでした。

友禅染めが確固たる地位を得たのは、それまでの模様染を集大成し、大衆化した点にあるといえます。

奈良時代の臈纈ろうけち、室町時代の更紗さらさ、安土桃山時代の辻が花、そして江戸時代初期の茶屋染ちゃやぞめまでの染色技法を取り入れて、総合化しており、染める布も絹から麻、そして綿まで染めています。

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もちろん、手間のかかる高級品もありましたが、身分の分け隔てなく、誰でも着られようになったのが友禅染めの着物だったのです。

京友禅（きょうゆうぜん）の技法（写友禅）

京友禅きょうゆうぜんの技法（写うつし友禅）の流れとしては、まず染色する生地を捺染なっせん板に、糊のりを用いて地張じばりをします。

色糊いろのりは、でんぷん、米ぬか、塩を主原料として煮た糊のりに、染料や防染糊ぼうせんのりを配合します。

型置きは、一色につき一型として、型紙、もしくはシルクスクリーン型を用いて、色糊いろのりを駒こまベラでしごきながら染め付けていきます。

地染めは、生地全面に地色糊をしごき、引き粉を全面にまぶし、蒸して染料を定着させます。

その後、水洗い、湯のし、幅出しなど、手描きの本友禅と同じ工程です。

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友禅染めの種類

友禅染めは、技法によってさまざまな種類と呼び方があります。

手描友禅てがきゆうぜん

手描友禅てがきゆうぜんは、すべての工程で、手加工が行われる友禅染めの総称です。

糸目友禅いとめゆうぜん

糸目友禅いとめゆうぜんは、手描友禅てがきゆうぜんの最も代表的なもので、本友禅、挿伏さしふせゆうぜん、挿し友禅ともいいます。

堰出友禅せきだしゆうぜん

手描友禅てがきゆうぜんのひとつで、染めない地の部分全てを糊伏せする方法のものです。

無線友禅むせんゆうぜん

手描友禅てがきゆうぜんの一種で、糸目糊いとめのりや伏せ糊を一切用いずに行う手描き友禅で、輪郭線がないのが特徴です。

炙描友禅あぶりがきゆうぜん

無線友禅むせんゆうぜんの一つで、顔料に豆汁ごじるを混ぜ、炭火で炙あぶりながら描く方法で、豆描まめがき友禅ともいいます。

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濡描友禅ぬれがきゆうぜん

無線友禅むせんゆうぜんのなかで、生地に豆汁ごじるとミョウバンを引いて、筆で描いていく方法のものです。

型友禅かたゆうぜん

型を用いて染める友禅染め総称で、生地を板に張って染めることから板場友禅ともいいます。

写友禅うつしゆうぜん

写友禅うつしゆうぜんは、型紙、またはシルクスクリーンを用いて、色糊をしごいて染めるもので、一般的な型友禅を指します。

摺友禅すりゆうぜん

摺友禅すりゆうぜんは、摺込友禅すりこみゆうぜんともいい、型に当てて染料を刷毛はけで摺すり込むものです。

一珍友禅いっちんゆうぜん

一珍友禅いっちんゆうぜんは、一珍いっちん（一陣）糊で糸目と伏せを行い、水洗いせずに引き落として仕上げるものです。

七切友禅ななつぎりゆうぜん

七切友禅ななつぎりゆうぜんは、生地を袖そで、衿きん（えり）、身頃など七切りに裁って染めるもので、絵羽物えばもののことをいいます。

疋物友禅ひきものゆうぜん

疋物友禅ひきものゆうぜんは、七切友禅ななつぎりゆうぜんに対して、反物たんものの状態で染めるものを指します。