友禅染めは、もともとおこなわれてきた描絵による手描き友禅と、明治に入って考案された型友禅に大きく分類できます。
手描き友禅にも、糊の置き方の違いなどによってさまざま種類がありますが、糸目糊を置く代表的な本友禅の工程を紹介します。
友禅染めの工程
①青花付け
仮絵羽の状態の生地に、青花で下絵を描きます。
仮絵羽とは、きものを仮に仕立てたもので、きものの形に仮縫いしてあるので、全体の柄の様子がわかります。
描き終わったら、仮絵羽を解いて一枚の布に縫い合わせて戻す端縫いの作業をおこないます。
②糸目糊置き
色を挿すときに染料のにじみを防ぐために、青花で描いた下絵にそって、糸のように細い防染糊を置きます。
糸目糊を置くには、熟練の技術が必要になります。
糊は、糯米の粉に糠や石灰などを混ぜた糯米糊と、生ゴムを薬剤でのばしたゴム糊があります。
糊は、そのままの色だと糊を置くのに色が見えづらいことがあるので、顔料などの色素を混ぜて、色をつけることもよくあります。
ゴム糊は、いわゆる現代に開発されたもので、ゴム糊によって糊置きのむずかしさが簡易化されました。
③地入れ(ぢいれ)
地入れは、防染糊を生地に定着させて、染料のにじみを防ぐためにおこないます。
地入れ液は、大豆のすりつぶした呉汁と、ふのり液を混ぜたもので、張られた生地に、刷毛を使って液を引いていきます。
ふのりは海藻の一種で、天然糊として古くから使われています。
④色挿し(いろさし)
糸目糊をおいて防染した部分の模様に応じて、刷毛や筆をつかって描いていきます。
染料のにじみを防ぐために、生地の下に火鉢や電気コンロを置いて塗った染料を乾かしながら行います。
⑤蒸し
蒸気で蒸すことで、染料を生地に定着させます。
色挿しと地染めの後には、必ず行います。反物同士が互いに触れないように新聞紙などを挟みながら、木枠に張った紐にかけて、100°cの蒸箱で約45分蒸し上げます。
⑥水洗い
蒸し終わった反物を、洗っていきます。余分な染料やシミ、防染糊をたわしなどを使って擦り落としていきます。
ゴム糊の場合は、専門で洗いを行っている業者もありましたが、今ではほとんどが廃業してしまっています。
⑦地染め
模様部分に防染糊で糊置きした後に、刷毛で手早く引き染めをします。
⑧乾燥
水洗いをした後に、乾燥室で人工的な風によって乾かします。
⑨ゆのし
蒸しや手洗いで過程で、反物が伸びたり縮んだりするので、反物の生地巾や長さを整える必要があります。
この作業を、ゆのしと言い、「機械のし」「手のし」があります。
⑩付帯加工
刺繍や金彩が施されて、さらに華やかな色彩になります。
この後地直しを経て、絵羽縫いした後、商品となります。
若干の手順の違いはありますが、大まかにまとめると上記のような工程を経て、絵画のようなきらびやかな色彩模様が着物に表現されていくのです。
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【参考文献】『日本の染織 5 友禅染 (京都書院美術双書)』