なぜ色が見えるのか?人が色を認識する仕組みや、色光や蛍光、加法混色と減法混色について理解する


私たちが色を感じられるのは、私たちの目に色を見分ける仕組みがあるためです。

人間の色彩感覚は、光が眼の網膜もうまくに達して視細胞しさいぼうを刺激して、その刺激が視神経ししんけいから大脳だいのう視覚中枢しかくちゅうすうに伝えられることによって引き起こされます。

つまり、光自体に色はなく、人間の目と脳の働きによって色合いを感じられるのです。

目の網膜もうまくには、色を見分ける細胞と、明るさと暗さだけを見分ける二種類の細胞があります。

色を見分ける細胞には、赤色・緑色・青色を感じる三種類の細胞があります。

赤色・青色・緑色の三原色さんげんしょく(three primary colors)が混ざり合うことで、この世のなかに存在しているほぼ全ての色を作り出すことができます。

三原色,Barycentric RGB

三原色,赤色,青色,緑色が混じり合ってできる色,TilmannR, Public domain, via Wikimedia Commons,Link

なぜ色が見えるのか?

1676年に、アイザック・ニュートン(1642年〜1727年)は、三角形のプリズム(prism)を使って、白い太陽光線をスペクトルに分散させました。

プリズム(prism)を通して出てきたスペクトル(spectrum),Dispersions

プリズム(prism)を通して出てきたスペクトル(spectrum),Jibin 1840404, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link

プリズムとは、光を分散ぶんさん屈折くっせつ、全反射、複屈折ふくくっせつさせるための光学素子こうがくそしであり、ガラスや水晶などの透明な媒質ばいしつでできた多面体のことです。

太陽光のような白色光はくしょくこうをプリズムに通した時に出てくる虹のような色の帯のことを、スペクトル(spectrum)といいます。

スペクトルが人間の目で見えるということは、この特定の波長が、人間の網膜もうまくに刺激を与えて色として感じさせているわけです。

網膜もうまくに伝わる光の波長はちょうが異なれば、異なる色を感じられるのです。

色は光波こうは、つまり特殊な電磁でんじエネルギーから成り立っています。

色光しきこうと呼ばれる色感覚を引き起こす光は、多くの場合、太陽光や火などの光源から発せられた光が「染められたり」「染まっている」物体に当たり、そこで反射してくる「反射光」のこと意味します。

人が色を認識する仕組み

光の波長が異なると、異なる色を感じる

人の目は、400ミリミクロンから700ミリミクロンまでの範囲内の波長を、色光しきこうとして知覚できます。

人間の目で見える領域の光のことを、「可視光線かしこうせん」と呼びます。

ヨハネス・イッテンの『色彩論』には、プリズムによって分散される色とそれぞれの波長と、それに相当する周波数しゅうはすう(毎秒あたりのサイクル)が記載されています。

ヨハネス・イッテン『色彩論』から作成 プリズムによって分散される色と、それぞれの波長と周波数

波長が650〜800mμの領域にある光であれば、「レッド」

波長が590〜640mμの領域にある光であれば、「オレンジ」

波長が550〜580mμの領域にある光であれば、「イエロー」

波長が530〜490mμの領域にある光であれば、「グリーン」

波長が480〜460mμの領域にある光であれば、「ブルー」

波長が440〜450mμの領域にある光であれば、「インディゴー」

波長が390〜430mμの領域にある光であれば、「ヴァイオレット」

ミクロン(u)はマイクロメートル(µm)と同じ長さなので、上記の記載の単位「ミリミクロン(mμ)」はナノメートル(nm)と同じ長さになります。

波長が500〜600ナノメートルと、600〜700ナノメートルの二つの領域の光が同時に視細胞しさいぼうを刺激すると、「黄色」を感じます。

電磁スペクトルの特性図。種類、波長とその例、振動数、黒体放射温度,EM Spectrum Properties edit

人の目で見える色の波長,電磁スペクトルの特性図。種類、波長とその例、振動数、黒体放射温度,See page for author, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons,Link

「加法混色(かほうこんしょく)」と「減法混色(げんぽうこんしょく)」

色には、光そのものの色である光源色こうげんしょくと、光が物体に当たって反射・吸収・透過した際に生じる色である物体色ぶったいしょくがあります。

色のついた光を混ぜ合わせると、色の明度めいど(色の明るさの度合い)が高くなったり、低くなったりします。

光の三原色は混色によって明度めいどを増し、同じ量で混ぜ合わせると白色光はくしょくこう無彩色むさいしょく)になります。

光源色の混色によって明度めいどが増す現象を、「加法混色かほうこんしょくといいます。

一方で、色の混色によって明度めいどが減少する現象を「減法混色げんぽうこんしょくといいます。

ヨハネス・イッテン『色彩論』には、減法混色げんぽうこんしょくについて以下のような記述があります。

レッドとグリーンのカラー・フィルターをアーク灯の前にかざすと、2色は合して、ブラックすなわち暗色になる。

レッドのフィルターは、スペクトルの中のレッド以外の一切の光線を吸収し、グリーンもまたグリーン以外のすべての光線を吸収する。従って色彩は全然残らず、その結果黒になる。このよう吸収から生ずる色は減法色として知られている

物体の色は主にこの種の減法色である。赤い器が赤に見えるのは、光に含まれている他の色を全部吸収し、レッドだけを表面に反射するからである。

”この鉢は赤い”というのは、本当にわれわれがいっているのは、その器の表面の分子がレッドの光線を除いた全光線を吸収しているということになる。器それ自体は色をもっていない;光が色を生ずるのである。

赤と緑の色のついたフィルターを一緒に照明で照らすと、2色は混ざり合って黒色になります。

鮮やかな色彩は蛍光をもつ

色光は「反射光」だけではなく、染められた物体に付着している植物由来の染料が自ら放出する「蛍光けいこう(fluorescence)」も色光しきこうとなり「反射光」に加わります。

蛍光けいこう」とは、光を吸収してエネルギー過剰な不安定状態(励起状態れいきじょうたい)となった蛍光分子けいこうぶんしが、再び安定な状態(基底状態きていじょうたい)に戻るときに、過剰なエネルギーを「光」として放出する現象のことです。

蛍光けいこうマーカーに光を当てると、鮮やかな蛍光けいこう色が現れるという現象を見たことがあると思いますが、生活のなかでわかりやすい例は蛍光です。

天然染料と蛍光

紅花べにばな」の花びらから得られる赤の染料で染められたものは、600〜780ナノメートルの「反射光」のほかに、「青」や「緑」の光を吸収して600ナノメートルの「蛍光けいこう」を放出します。

Carthamus tinctorius 050709b

紅花,Pseudoanas, Public domain, via Wikimedia Commons,Link

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結果として、600ナノメートルの濃い紅色を引き起こす蛍光けいこうが「反射光はんしゃこう」に加わることによって、彩度の高い「鮮やかな赤」を感じられるのです。

あかね日本茜にほんあかね)で染めた色合いである浅緋あさきあけや、蘇芳すおうで染めた色合いである深蘇芳ふかきすおうも、赤い色感覚を引き起こす蛍光を放出しています。

支子くちなし梔子くちなし)で染めた色合いである黄支子きくちなし刈安かりやすで染めた深黄ふかききなどは、緑色の色感覚を刺激する蛍光を放出しており、自らが持つ「黄色」の色彩を鮮やかにしています。

紫草むらさきで染めた色合いである深紫こきむらさきや、藍で染めたものは、青の蛍光を放出して、色合いを鮮やかにしています。

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緑色は、一つの染料植物で染めることはできなかったので、刈安かりやす黄檗きはだと藍を重ねて染めることで色を出していました。

黄檗きはだには、緑の色感覚を生じさせる強い蛍光があることで、藍と混ぜると、鮮やかな緑が生じます。

蛍光けいこう現象は、化学分析である「三次元表示蛍光スペクトルによる非破壊分析法」によって確認されたものです。

【参考文献】

  1. ヨハネス・イッテン著『色彩論
  2. 色彩から歴史を読む

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