投稿者「iroai.jp」のアーカイブ

紫根で染められた日本古代の色彩である紫色。深紫・深紫・中紫・紫・黒紫・深滅紫・中滅紫について

日本古代の色彩は、薬草と考えられる草木で、草木の中に存在する木霊こだまに祈りつつ染付けがされていました。

飛鳥時代(592年〜710年)、奈良時代(710年〜794年)平安時代(794年〜1185年)の色彩の代表的なものに紫色があります。

紫根染めされた色の総称として「紫」が多く使われていましたが、呼び名は単に「紫」とひとくくりではありませんでした。

深紫(こきいろ)・黒紫(ふかむらさき・くろむらさき)・浅紫(うすいろ・あさきむらさき)中紫(なかのむらさき)・紫・深滅紫(ふかきめつし・ふかけしむらさき)・中滅紫(なかのめつし・なかのけしむらさき)・浅滅紫(あさきけし・あさきけしむらさき)など、さまざまな名前で表現されたのです。

それぞれの紫色の色彩について、取り上げます。 続きを読む

化学繊維の作り方。代表的な3種類の紡糸方法、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸。

化学繊維を製造するためには、まず最初に原料から鎖状の高分子を溶剤に溶解するか、加熱して水あめのようなドロドロの状態にします。

鎖状の高分子は、原料のセルロースを反応させ改質したり、石油や天然ガスなどの繊維と無縁の原料から合成したりして作ります。

そしてドロドロの高分子を、ノズルといわれる口金(くちがね)の穴から押し出して固めて繊維にする「紡糸」の工程が必要になります。

化学繊維の糸をつくるための紡糸方法は、大きく分けて①湿式紡糸、②乾式紡糸、③溶融紡糸の3種類あります。

他にも、液晶紡糸法、ゲル紡糸法、エマルジョン紡糸法などさまざまな化学繊維の紡糸方法がありますが、今回は上記の基本的な3種類について紹介します。 続きを読む

石炭や石油、天然ガスからつくる繊維について。合成繊維の特徴。

ほとんどすべての繊維は、ポリマーと呼ばれる高分子物質で構成されています。

合成繊維では、繊維とは一見すると無関係な石炭や石油、天然ガスから化学的処理によって繊維をつくります。

合成繊維は、合成高分子の繊維であり、繊維を合成するのではありません。石炭と水と空気からナイロンがつくられ、この発明から続々と合成繊維が発明されていきました。

ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリ塩化ビニル、ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等、合成繊維の例はたくさん挙げられます。

世界三大合成繊維はナイロン、ポリエステル、アクリルの3種類で、合成繊維のほとんどのシェアを占めています。 続きを読む

羊毛(ウール)・獣毛の特徴的な性質である湿潤熱(しつじゅんねつ)の発生

羊毛や獣毛の特徴的な性質として、湿潤熱しつじゅんねつの発生が挙げられます。

湿潤熱とは、羊毛の繊維が水分を吸収する際に(湿潤)によって、放出する熱のことです。

湿潤熱を実感として感じたことがあるという人は、ほとんどいないと思いますが、実話として、水浸しになったウールを保管している倉庫が中にはいれないほど熱気に包まれたり、雨に打たれた毛織り物が凍っても濡れ雑巾のようにはならなかったために、雪山で人が救われたということがあるようです。 続きを読む

羊毛・ウールの繊維直径、繊維長、質番、巻縮数、梳毛糸(そもうし)と紡毛糸(ぼうもうし)の違いについて。羊毛は体の部位によって品質に違いがある

羊毛は、毛を採取するその部位によって品質や性質が変わってきます。

胴体の側面で、肩のあたりがもっとも良質とされるウールがとれるのです。

公益社団法人畜産技術協会の記事「目的にあった羊毛の扱い」に非常にわかりやすい図と説明がありますので、ここに引用します。 続きを読む

化粧品に使用される色材の種類。有機合成色素、無機顔料、天然色素、真珠光沢顔料、高分子粉体とは?

化粧品に使用される色材は、大きく下記の5種類に分類できます。

  1. 有機合成色素
  2. 無機顔料
  3. 天然色素
  4. 真珠光沢顔料
  5. 高分子粉体

化粧品は、人の肌に直接使われるものなので、高度な安全性が求められますが、そこに使われる色材についても、厚生労働省令によって法的に規制されています。

1.有機合成色素

日本では、化粧品に使用できる有機合成色素の種類は限定されており、用途や使用する身体の部位によっても、さらに限定されています。

有機合成色素は、①染料、②レーキ、③有機顔料の3種類大別することができます。

①染料

染料は、水に溶ける水溶性染料と、油分やアルコールなどに溶ける油溶性染料があり、どちらも溶けた状態で発色しています。

特徴としては、溶けた状態で発色するので、透明で鮮やかな着色ができる一方、熱、酸、アルカリ、光などの厳しい環境下では分子が破壊されて退色します。

基礎化粧品の化粧水や乳液などのクリームを中心に、多くの化粧品に使用されています。

②レーキ

レーキは、水溶性の染料を化学的な処理によって水に溶けない粉末の状態にしたもので、色合いの鮮やかさが特徴的です。

ただ、アルカリや光、熱などに対する安定性はあまりよくなく、退色や変色の原因となることがあるので、使用できる化粧品は限られています。

③有機顔料

有機顔料は、水、油、アルコールなどに溶けない色を持った粉末で、青から緑色系の顔料であるフタロシアニン系や、青色のインジゴ系、赤色のアゾ系などがあります。

口紅やマニキュア、アイシャドー、チークなどの多くの化粧品の着色に不可欠な色材で、レーキよりも着色力や化学的な環境下での安定性に優れているため、化粧品に限らず印刷やプラスチックの着色など、私たちの生活のなかで多くのものの彩色に使用されています。

2.無機顔料

無機顔料は、鉱物顔料とも言われており、日本においては化粧の原点とも言われる赤化粧には、酸化鉄を含む天然の鉱物も使用していたようです。

天然のものは、肌に対して有害な不純物を持つものがあるので、現在では品質が安定している合成された無機顔料が化粧品に使われています。

無機顔料の特徴としては、有機色材には、鮮やかさでは劣りますが、水や油等、各種の溶媒に溶けないという優れた性質をもっていて、安全性も高く、化粧品以外の多くの生活日用品に使用されています。

化粧品に使用されている無機顔料は、①着色顔料②白色顔料③体質顔料の3つに大別することができます。

①着色顔料

着色顔料は、多くの化粧品の色を決める主要な色材であり、組み合わせと白色顔料や体質顔料とのバランスがより良い色づくりの決め手となります。

赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、雲母チタンなどが挙げられます。

②白色顔料

白色顔料は、白さの調整という化粧品の色調設計における中心をなす色材です。

二酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられます。

③体質顔料

体質顔料は、多くが白色ですが、色の濃度を調節したり、肌に対する感触を決める大切な色材です。

マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化バリウムなどが挙げられます。

3.天然色素

天然色素は、動物や植物、微生物の働きなどから得られ、古くからや食用、薬用、染色、化粧品などに利用されてきました。

多くの天然色素は有機合成色素に比べると、熱・光・酸・アルカリなどに対する安定性に劣り、天然であるがゆえに品質や供給面での不安定性があるので、現在の化粧品においては、京紅などごく一部のものに使用されています。

代表的な天然色素は、①カロチノイド系、②フラボノイド系、③アントラキノン系の三種類に大別できます。

①カロチノイド系

カロチノイド系は、ニンジン・トマト・エビ・カニなどに含まれている橙色だいだいいろ〜黄色の色素で、バターの着色に使われているβカロチンが有名です。

化粧品では一部の乳液やクリームの着色に使われています。

②フラボノイド系

フラボノイド系は、花・シソ・カブ・ぶどうの皮などに含まれる色素で、紅花から抽出される赤色系の色素であるカルサミンが有名です。

現在でも、一部の口紅やチークに配合されているようです。

③アントラキノン系

アントラキノン系は、西洋アカネ・紫根・ウニなどに含まれる色素です。

サボテンに寄生するオスのエンジ虫を乾燥させてから得られる抽出物であるコチニールは、鮮やかな赤色として口紅の一部に使用されたりします。

4.真珠光沢顔料(パール顔料)

1965年、アメリカの化学メーカーであるデュポン社によって「二酸化チタン被覆雲母」が開発されて、真珠が持つ光沢感が顔料として、人工的に安定供給されるようになりました。

光沢感やメタリック感といった付加価値を表現するのに優れており、口紅やアイシャドーなど多くの化粧品に配合されています。

これらは真珠光沢顔料と呼ばれますが、パール材とも言われるように「光沢感がある白」が基本的な色調になっています。

5.高分子粉体

高分子粉体は、白色に近い色調をもっていますが、色合いには大きく影響は与えないけれど、球のように丸い形をした粒子の性質を生かして、なめらかな肌触りを実現するために主に使われています。

洗浄やマッサージ効果を高めるためのスクラブ剤として、洗顔料やボディークリームに使用されたりもしています。

素材としては、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ナイロンなどが使われており、技術の発達によってさまざまな高分子粉体が開発されています。

参考文献:『色彩から歴史を読む

発酵とは何か?

発酵とは何か?

一般的には微生物の持っている機能を広く物質生産に応用して、人間の有益なものに利用することを発酵と呼んでいます。

英語で発酵は「fermentation」ですが、ラテン語の「湧く」という意味の「fervere」から生まれた言葉です。 続きを読む

花森安治『灯をともす言葉』。暮らし、生き方、美しさ、創ること、書くことについて

生活雑誌『暮しの手帖』の創刊者である花森安治はなもりやすじ

彼は、「暮しの手帖」の取材、執筆からデザイン、表紙にいたるまで自ら手がけていました。1997年に心筋梗塞でこの世を去るまで、さまざまな才能を発揮しづづけた、稀有な編集者です。

2016年、NHKの朝の連続テレビ小説、『とと姉ちゃん』では、暮しの手帖社の創業者である大橋鎭子おおはししずことの雑誌出版の物語がモチーフにとされました。

灯をともす言葉』という書籍には、より良い生活や暮らしについて考えつづけた彼が、残してきた言葉の数々が載っています。

個人的に好きな言葉がたくさんありましたので、そのなかの一部を紹介したいと思います。 続きを読む

真の美はただ「不完全」を心の中に完成する人によってのみ見いだされる。東洋精神を西欧に伝えた名著『茶の本』

岡倉天心おかくらてんしん(1863年〜1913年)が、日本や東洋の文化を欧米人に伝えるために英語で書いた本が1906年に出版された『The Book of tea(茶の本)』です。

日本人の美意識について書かれた本書の導入部分は、日本や東洋の文化に対する欧米人の認識が間違っていたと岡倉氏は指摘しています。

タイトルは『茶の本』ですが、単に茶に関することだけではなく、茶道、禅、道教などの思想を通して、芸術について論じられています。 続きを読む

デザインとは、何か?デザインの本質は、モノに意味を与えること

デザインとは、何か?

ウィキペディア(Wikipedia)には、デザインとは「審美性を根源にもつ計画的行為の全般を指すものである。」とありますが、上記の質問に対する答えは、100人に聞けば100通りの答えが返ってくると思います。

世界的なベストセラーになった『エクセレント・カンパニー 』や数々の書籍を書いてきた経営コンサルタントのトム・ピーターズが2005年に出版した『トム・ピーターズのマニフェスト(1) デザイン魂。』には、彼が出会ってきた著名な人々の考える「デザインとは」についての記述があります。

デザインを考える上では、先人たちの言葉は非常に参考になり、イメージをふくらませる手助けとなります。 続きを読む