岩手県盛岡市に古くから伝わる型染めは、「南部古代型染」と呼ばれ、現在は、蛭子屋の小野氏に、その伝統が受け継がれています。
蛭子屋の歴史は古く、甲州(山梨県)の豪族であった南部義光に、染師として、蛭子屋善助が雇い入れられたことに始まります。
それ以後、南部氏が、甲州から奥州の三戸、さらに盛岡へ居城を移したのに際して、蛭子屋も共に従い、寛永5年(1628年)、蛭子屋三右エ門が南部藩の御用染師として登用されたのが初代で、現在も続く「蛭子屋小野染彩所」が南部古代型染の伝統を受け継いでいます。
南部古代型染(なんぶこだいかたぞめ)の特徴
当初は、南部藩士の鎧下や裃、小袖などをはじめ、武家の衣服を染めていたとされます。
江戸時代には、各藩が独自の文様を染めて、「留柄」や「止型」と称し、その染型を所有し、染師を雇い入れるのが通例でした。
南部古代型染の特徴としては、まず文様にあります。
素朴で大らかな柄が多く、千羽千鳥や菊唐草、牡丹唐草、向かい鶴菱、南部竹割(南部家の紋章)などに代表されます。
染料としては、南部藍が主に使用され、藍色を基本とした模様の対比が特徴的です。
南部古代型染の技法
南部古代型染に使用される生地は、絹の紬や木綿などが用いられ、しっかりと精錬、湯通ししたものが型染めに使用されます。
捺染板に生地を張り、型紙を当てて防染糊を置きます。
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防染糊は、やわらかすぎて流れてしまわず、型紙の線を粗くするほど硬くしすぎずと、使用する型紙や気候なども要素を考慮に入れて、各人の好みに調節します。
染色は、藍染の場合は、藍がめで浸し染めをし、他の植物染料は、刷毛によって引き染めされます。