染色・草木染めにおいて、イメージ通りの色合いに仕上げるためには、染色に使用する水(どのような成分が含まれているか)について、注意しておく必要があります。
染色・草木染めに適した水において、先人たちの文献から、参考になりそうなものを引用していきます。
目次
染色・草木染めに適した水
前田雨城 (著)『日本古代の色彩と染』
普通の染であれば、水道水をアルミニウムの釜で一度わかしてから使用するとよい。
カルシウムイオンを含んでいる水では、美しい色の出ることが多く、アルミニウムのイオンを含んでいる水までは同様に使用できる。
京都の桂川水系はマンガン分を含んでいるので、桂川付近の井戸水もよくない。『日本古代の色彩と染』
予定されている色彩によっては晒の場所を選ぶこと。灰汁媒染ならば、アルミニウムやカリウム、カルシウムのイオンの存在する水流を、鉄媒染(泥媒染も)ならば、鉄イオン(鉄塩ではない)のある水流を選ぶと、後の染色によい結果が得られる。『日本古代の色彩と染』
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岡村吉右衛門 (著)『世界の染物』
使用する水が硬水の場合、染料が溶けきらず、小さな粒子のままであり、軟水に入れると流れだして汚れる場合も多い。鉄分を含んだ水で染めると色が燻むこともよく経験する。『世界の染物』
天然染料の水洗い
天然染料で染めたものは、同一の媒染剤で発色している場合は問題ありませんが、部分的に媒染剤が異なっている場合は、充分に注意を払って水洗いする必要があります。
ミョウバンや錫などで染めた鮮明色は、鉄やクロムなどで併用した媒染剤の影響を受けて、色の冴えが失われる可能性があります。
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水元(みずもと)
染色した布に付着している余分な染料を水で洗い流す作業のことを、「水元」と言います。
もともとは、小紋染めや友禅染めしたものを水洗いして、紋糊や模様糊を落とすことを水元と言いましたが、その他、染色全般の水洗いにも使用されるようになりました。
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