黒色に染める黒染めは、草木染めの中でも最も大変な仕事の一つです。
古代の黒や墨、黒橡などの色合いは、ナラ(楢)やカシ(樫)、クヌギ(檪)、ハンノキ(榛)などの樹皮や果実、または五倍子などを用いて染めています。
染色・草木染めにおける黒染め
室町時代に成立した日本の古典文学作品である『太平記』には、檳榔子が渡来していることがわかり、後に「檳榔子黒」という色名ができています。
室町時代末期には、京都で「兼法黒」と称して、楊梅の樹皮による黒染めが行われていました。
この「檳榔子黒」と「兼法黒」も、江戸時代に入ると藍の下染め(藍下)を併用した黒染めが行われたりしました。
藍下を併用した黒色の染色がいつ頃から生まれたのかははっきりしていませんが、江戸時代の染色に関する文献には、藍下の黒染めが数多く記されています。
古代の染織品の遺品の中には、黒染めされたものがほとんどなく、江戸時代のものでも劣化が激しい点があります。
理由としては、鉄媒染によって劣化しやすかったり、黒は光を吸収しやすいことから繊維へのダメージが大きいなどが挙げられます。