ものづくり(染織)における中世の同業組合である「座」

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中世において、商工業者などが集まり、「」と呼ばれる同業組合が結成されていました。

「座」というのは、公家や社寺の集会に設けられた特定の座席を占める人々の集団を表したことに始まります。

ものづくりにおける中世の同業組合である「座」

平安時代末期には、京都や奈良の社寺において、照明に用いる燈油とうゆなどの油を製造、販売する商人たちによる「油座あぶらざ」や金属を鍛錬して製品を製造する鍛治かじや大工の集まった座がありました。

鎌倉時代から室町時代にかけて、経済が発展していくにしたがって、特に畿内きない(大和、山城、摂津、河内、和泉の5国で現在の奈良県、京都府中南部、大阪府、兵庫県南東部を合わせた地域)を中心に座が発達していきました。

座に属することのメリット

座に属することにおけるメリットとしては、人々は公家や社寺を本所として奉納や奉仕を行う代わりに、仕入れや販売権の独占、関銭せきせん(関所を通過する人馬や船、荷物などに対して徴収した通行税)や市場税の免除など、さまざまな特権を得ました。

結成された座の例として、京都では下記のような座が結成されていました。

  • 四府の駕輿丁座かよちょうざ ・・・四府(左右の近衛府と左右の兵衛府)に属した駕輿丁かよちょう(貴人の駕籠かご輿こしを担ぐことを業とする人々)が組織した商業の座
  • 北野神社の麹座こうじざ・・・北野天満宮は、麹屋の同業者組合を結成し、麹の製造や販売の独占権を持っていた
  • 祇園社(八坂神社)の綿座わたざ・・・祇園社が本所となり、綿の独占的な販売権を持っていた
  • 祇園社(八坂神社)の材木座ざいもくざ・・・南北朝時代頃より祇園社を本所とする2つの材木座が存在し、材木の独占的な販売権を持っていた
  • 大山崎油座おおやまざきあぶらざ・・・鎌倉時代に石清水八幡宮に奉仕した神人によって形成され、室町時代には大山崎離宮八幡宮を本所とした油の座で、荏胡麻えごまから採ったエゴマ油の仕入れや製造、独占的な販売権を持っていた
  • 紙座かみざ・・・ 鎌倉時代〜室町時代において、特定の商人が紙の独占的な販売権を持っていた
  • 猿楽座さるがくざ・・・特定の社寺の神事や法会に猿楽を奉仕し、興行の独占権を与えられた猿楽師たちが結成していた
  • 田楽座でんがくざ・・・特定の社寺の神事や法会に田楽を奉仕し、興行の独占権を与えられた田楽法師でんがくほうしたちが結成していた

染織関係における座

染織関係においても、さまざまな座が全国で結成されました。

京都においては、応仁の乱後に朝廷の織部司の職人たちが大舎人町(西軍本陣跡の大宮あたり)に移り住み、綾織物で有名な「大舎人座おおとねりざ」と呼ばれる民営組織を形成します。

東軍本陣跡の白雲村あたりでは、練貫ねりぬき羽二重はぶたえ、筋格子やしじらなどを扱った「練貫座ねりぬきざ」が形成され、「大舎人座おおとねりざ」と互いに技術を模倣するなどして、対立していました。

日本各地には、麻織物を生産した布座や和布座があり、特に現在の越後(現在の新潟県)府中や近江の坂本、京都の天王寺における青苧あおそざ(青苧を扱う商人たちで結成された座)がよく知られていました。

青苧あおそとは、イラクサ科の多年草木である苧麻からむし(学名 Boehmeria nivea var. nipononivea)は、苧引おびきという皮剥ぎを行なって、繊維を細かく裂き糸をつないでいく作業である苧積おうみの直前の状態まで半加工されたという状態のものです。

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染色における座

染色においては、京都に「青花座」や「寝藍座ねあいざ」、長板口において、1517年には藍染の染色に必要な木灰を独占的に扱う「紺灰座こんばいざ」があり、16世紀初頭には和泉国の日根郡にも紺屋に売る灰を生産する紺灰座がありました。

室町時代の永亭えいきょう3年(1431年)には、京都九条の寝藍座ねあいざが藍葉を無断で東寺境内で乾燥させるので、これを断ったという記録があるようです。

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座の廃止

上記のような座の結成によって、同一業種が互いに協定を結び、保護のもとに独占的に営業することができたことも影響し、需要の少なかった当時の商工業が発達していきました。

しかし、室町時代(1336年~1573年)末期に産業が進歩していくにつれて、座による特権がかえって自由な流通の妨げとなったため、近江国(現在の滋賀県)を支配した六角定頼ろっかくさだよりが初めて行い、織田信長による経済政策としても有名な「楽市楽座」が実施され、座が廃止されました。

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